坂本次郎・ミウラタダヒロ「恋染紅葉」4巻読了。
改めて最終巻を読んでみると、これはこれできれいにまとまっていていいなあ、という印象で
それぞれのキャラクターにちゃんと役割があるのが良いなあと思いましたね
大体恋愛対象となるヒロインは3人居ましたけど
ただ盛り上がりの為増やした訳ではなく
小鳥の存在で初めて紗奈が翔太をまともに意識したという事実があり
由比がいたからこそクライマックスがあれ程印象深く、二人の覚悟を決めさせるきっかけにもなっていた事実
その辺の構成の素晴らしさ・・・無駄のなさっていうのを再確認出来た最終巻でした
確かに半年ちょいで終わってしまったのは残念な気もしますけど
けど短期でこれだけドラマチックに終わらせる事が出来たのならそれはそれで幸せという感じもする。
特に恋愛漫画は引き伸ばすと大体無駄なエピソードの連発になるのが常套ではあるので
その点でも作者の意図通りに段階を踏んできれいに着地したこの感覚は
作品にとってはベストな形だったんじゃないかと
描き下ろしのエピソードを含めビックリするほど不満がなかったので
その意味でも短期の傑作としてずっと読み続けられるクオリティの作品にはなったかな、と
最後の最後までめっちゃ面白く、ニヤニヤ出来た作品でした。
本誌で読んだ時にはジーンと来ただけで、涙腺は決壊しなかった由比ちゃんの告白ですけど
単行本で一気に読んだ時に自然に涙がポロポロと零れてきて
この漫画で初めて泣きました
それが個人的には嬉しかったんですけど
やっぱり一番グッと来たのは由比ちゃんの涙に対して翔太もまた涙を流してくれたあのシーン
由比ちゃんが性格上表立って泣く事が出来ないから、その代わりに彼女の涙を受け取って流してくれた
ただ背中を押されただけではなく、そこに付随する悲しみも共有してくれた事が何よりも嬉しい
そこが他のラブコメとは一線を画すこの作品ならではの生真面目さなのかなと思う
個人的にああいうシーンって相当珍しいって思いましたからね。
友人の前で泣くのはベタですけど、
それが主人公にも伝わって涙を共有してくれるっていうのは中々ないと感じます
主人公が誰かを幸せに出来なかった事に対して自覚的になるシーン。
そこを敢えて拾ってくれた、
ちゃんとフッた/フラれたという事柄が及ぼす影響を真摯に描いてくれたからこそ良作傑作の雰囲気を纏えた
小鳥の水面下で紗奈ちゃんに翔太を本格的に意識させる流れを作った働きの効果も含めて
キャラクターやそれが及ぼす関係性に対して非常に誠実な作品だったと思う
この巻では幾度の経験によって翔太がきちんと頼れる男、
女の子をリード出来る主人公にもなり得ていたし、紗奈ちゃんも初期よりずっと素の体温で接する事が出来てた
そういう成長面も含めて実はこれ以上ないくらいキャラを大切にしてた漫画だったんじゃないかな、と
由比ちゃんの存在も小鳥の存在にもちゃんと意味を持たせてくれてたのがよく分かる4巻でした
だから割とオートマティックに心情に任せてグッと来て恋愛の結実を楽しめる
非常に美しいフォルムの最終巻になってるとも思います。
王道なのは王道ですけど、
でもこの漫画には必要以上に主人公に能動的な努力や尽力を促す真面目さが目立っていました
そういう欲目が無い代わりにあくまで誠実さを貫き通す作風が好きであれば気に入る事の出来る漫画だと思う
短期で終わった恋愛漫画の中では間違いなく良いポジションに付ける傑作でしょう。
読後感は半端じゃないくらい良かったです。
改めて、素敵な物語をどうもありがとうございました。
評判の高かった小鳥編ラストに由比ちゃんの涙の告白とクライマックス、そして大量の描き下ろし
実によりどりみどりで読み応えたっぷりに感じられた最終巻でした。
ここからは描き下ろしのエピソードに付いて触れます。
まずは、連載当初のみ存在していた翔太の友人二人(イケメンとメガネ女子)が再登場
紗奈ちゃんと翔太の問題も大丈夫な年齢になるまで出会い禁止にすることで一件は落着、
もちろん大丈夫な年齢になったら付き合う事も出来る、と
割と納得の着地点だったかなと
紗奈ちゃんと吊り合う為に良い男を目指す翔太も、
翔太の存在を待ち焦がれつつ必死に我慢をする紗奈ちゃんも両方至高でした(笑
気が付けばお似合いの二人になったよね・・・という印象もありつつ
ラストシーンもまた1話に重ねてきた感じで
正直本誌の最終回とは比べ物にならないくらい最終回らしい着地点でスッキリ出来ましたね
本誌版は本誌版で紗奈ちゃんの最高級の決め顔や翔太の献身的な思いが伝わって来て好みではあるんですが。
後はそうですね、小鳥ちゃんが非常に良い味を出していたと思います
彼女の翔太に対する想いも描かれてラブコメ的にはかなりの旨味が出てますし
あの時紗奈や由比がストラップを探してくれた事に対する恩返しの描写もグッと来ました
小鳥は最初は作中でも読者的にも憎まれ役を請け負っていただけに
こうやって素直に成長した部分を見せられると
それだけで随分感慨深いものですね。彼女を主人公にしたスピンオフなんかも読んでみたいなあ(笑
7ドロップスのその後に関しても触れられてますし、最終的には良い扱いになったんじゃないかと
最初が最初だっただけにその純真な表情の数々にやたら感動してしまいました。
もう一つ、さり気に最後まで翔太をサポートしてくれていた友人二人
メガネの義考と海音のその後に関してもワンシーンで少し
これもまたねえ・・・
この二人でちょっと読み切り書きましょうよ!ってくらい意外性とニヤニヤがあって素敵でした(笑)。
ああなるほど、だから翔太に彼女が出来る事を促してたのね?って思うとめっちゃ良い感じですねえ。
いつかこの二人が成就する場面を想像したらちょっと幸せな気分にもなれたりして。
翔太の妹も効果的な役割を持って再登場していたし
最後の最後までキャラを丁寧に扱っていた作品と言う印象は崩れませんでしたね。
絵柄や最初期のサービスシーンで敬遠するのが勿体無いと思うほど純なラブストーリーだったと思います。
商業的にはパッとしなかったのかもしれませんが、作品的には至極真っ当でファンとして嬉しい。
オマケとして設定画も付いてるのでその意味でも是非といったところでしょうかね
ちょっと感想が長くなりましたが語る価値はあるだけの漫画だったかと。
短期の良作としてこの先も読まれていって欲しいですね。
お疲れ様でした!
翔太は紗奈ちゃんに気に入られる為に初期から能動的に頑張っていたし
由比ちゃんに好かれたのも彼の正義心がきっかけで
小鳥に好かれた理由は言うまでもなく
個人的な解釈ではありますが棚ボタが殆どないように思えたその手さばきに関しても好きだって言いたいですね。
振り返ってみると「何となく」で好かれた事が一度もないっていうのは実に良かったと思います
悪意に対して善意で返すやり方も少年漫画の主人公らしくて素敵でしたね・・・(笑
そんな沢山の思い出が詰まったお気に入りの作品になった事に感謝を。