水曜日に曽我部恵一BANDのライブに行ってました。
私自身、あんまり季節感というものを意識する事は滅多になく
完全に受身と言えば受身なんですけど、この日のライブを観て聴いて、冬の香りを感じたというか
今が真冬のド真ん中である事をハッと気付かせてもらったというか・・・・・
気付くも何も普通に生活していてたら気付かざるを得ないでしょ、って思われるかもしれませんが
それはただ単純に作業でしかない、そうではなくて
この季節の情感だったり、この季節ならではの風情に関して自覚的にさせてもらった、そういう影響があって
また一つ小さな「豊かさ」をもらったような・・・そういう感覚になれたライブでした。
生のエネルギーの放出、といった印象ではなく
もっと身体の芯が温まる感じの音像がいつもとは違っていて新鮮でした
前回のワンマンは集大成的なライブでしたが、今回は新機軸をじっくりと見せるような、そんなライブでしたね。
この日のライブで久々に演奏された「ほし」や「ワルツ」を聴いて、
ただ作業的に「寒いなあ」と何も考えずに過ごしてきたこの冬に対して
「案外その分小さな幸せも感じる事が出来て素敵なのかもなあ」とポジティブな印象を持てた
そういう風景や背景を真摯に誠実に描く事でそれがメッセージに変化して聴き手の心に確かに火を灯す
その有り方や方法論によってささやかな感動が胸に残ってとても満たされた気分になる。
そんな有意義なライブだったと思います。
案外これくらいスパッと終わった方が余韻があって良いのかも、とか。
ハコを出てすぐ新代田駅があるんですがその前の信号を待ってる時の不思議な充足感が全てだったと思います。
いつもはご機嫌に始まるソカバンのライブも
この日はややひんやりとした「トーキョー・コーリング」から始まり
若干シリアスな空気感に浸りつつも、その中を真っ直ぐに渡り歩く優しい歌声に満たされる
かと思ったら情熱的に、そしてテクニカルに弾ける「ルビィ」や絶唱が胸を打つ「世界のニュース~」等
早くも情熱的な演奏でもって完全に魅了される
その後はライブによって更にタフに叩き上げられた「ロックンロール」の熱演で一気に感性を焦がされました。
今のソカバンは以前と違って「衝動剥き出し!」という時期を終えて
ちょっと俯瞰的な要素が入って来たというか
テクニカルで地に足の付いた演奏を目指している印象があって
それが衝動的な過去曲と混ざり合っているっていうのは緩急があって非常に面白いです。
割とコンセプチュアルな初期と比べてよりバンドらしい変遷を描くようになってきたという印象で
もう「らしさ」に拘らなくても勝負出来る段階に入って来たんでしょうね。
それが証拠にこの日はどの曲を演奏していても均等に気持ち良くて、感情の沸点を目指すソカバンらしかった。
相変わらずの絶品メロディが最高に気持ち良い「ほし」から
憧れの映画監督レオス・カラックスに会えたエピソードをじっくりと語る曽我部さん
質問の機会があって、観客に対する意識を聞くと意識は全くしていない、と即答されたという話が面白かった
ブログでも書かれてますが、MCに拠ると質問を全部言い終わる前に「NO」と発言されたらしい
今度機会があったら是非観てみよう。春に新作が公開らしいです。
前置きもなしにサッと演奏された「テレフォン・ラブ」はいつも以上に素朴な味わい
その後の「ワルツ」ははっきり言って半永久的に聴いていたくなるくらいに中毒的な気持ち良さがありました
こういうループ的な音像って意外とソカバンのパワフルな演奏で聴くと似合っていて面白いし、
ずっと踊っていられるような求心力があるなあ、と
前述の「ルビィ」と同様にテクニックで魅せる部分も多々あって
ソカバンの本質がコンセプトから音楽に変わっていく瞬間を垣間見れたような素晴らしい演奏だったと思います。
その後の「サーカス」も大人になって色々と考えてしまう夜の哀愁が漂っていて絶品でした。
この曲は本当に大好きな曲なので新譜のレコ発でまだ残ってるのが嬉しかった。
リリースツアー以来に演奏する、と言って「夢見るように眠りたい」を披露
タイトルを口にした時に特に反応がなかったことから「まあこれくらい印象の薄い曲なんだけど 笑」って
自虐ネタをかましてたのが面白かったです。まあ曽我部さんのファンは良くも悪くも正直ですから。
でもその分新譜の曲で盛り上がってたのもまた本音だったと思うので
その点ではオーディエンス的にも最高だったな、と
勿論「夢見るように眠りたい」もこの時期には似合うほっこりするような曲でした
多分1stは殆どイケイケな曲で占められてたので必然的に印象が薄くなってしまったんでしょうね。
確かに良い曲でした。このセトリに加えるには絶好だとも。
衝動的な部分を出しつつ、このライブに合うように勢いは抑えられていた印象の「キラキラ!」
その分演奏に重みがあってそれはそれでまたOK!といった印象でした
弾き語りで歌った「雪」は、
本当にシーンと場が静まり返る中、か細い声で淡々と歌われていて息を呑むくらい清廉とした雰囲気
歌声そのものがシンシンと降って来る雪を表現してたのかな・・・と今になって思います
これもまたもう一度聴きたいくらいに素晴らしかった演奏。
オシャレでじっくりと聴かせるタイプの「LOVE STREAMS」と「どうしたの?」の2曲を立て続けに
この辺は場末のバーでムードたっぷりに聴いてる感覚になれて独特の味わいがありました
それでいていきちんとメロディに芯があるのがまた心地良かったですね
「そして最後にはいつもの夜が来て」の熱演から、
それを冷ますように再び歌われた「トーキョー・コーリング」のささやかな暖かさ
新譜の世界観を既存曲のチョイス含めて見事に再現し切った作りこまれたタイプのワンマンだったと思います
その分、いつものワンマンよりもショウ感が強く、幻想的な雰囲気にたっぷり浸らせてもらったなと
気が付けば物凄い充足感を身に纏う事が出来た、とても誠実な一夜でした。
ありがとうございました。
1.トーキョー・コーリング
2.ルビィ
3.世界のニュース~light of the world
4.ロックンロール
5.ほし
6.テレフォン・ラブ
7.ワルツ
8.サーカス
9.夢見るように眠りたい
10.オレと彼女が晴れた日の午後に笑うささやかだけど絶対的な理由
11.キラキラ!
12.雪
13.LOVE STREAMS
14.どうしたの?
15.そして最後にはいつもの夜が来て
16.トーキョー・コーリング
encore
17.STARs
encore2
18.mellow mind
アンコールの時に「賛否両論じゃないとつまんない」「馴れ合いが嫌い」と言ったニュアンスの言葉を語り
前作と今作でバランスが取れるように考えて作ったという発言、
更にはリリース数が多いから適当にやってるんじゃないか?と思うかもしんないけど
あくまで「いいのが出来たから出してるだけ」といった理念に関しても話してくれました
その時の話し方が結構陽気な感じで変にシリアスにならなかったのがとても良かったです(笑
でも「別にチョイチョイつまんでもらってもいい」とも語っていたり。
実はアンコールは元々一曲だけで済ませる予定だったらしいんですが
予定外の拍手が入った為に急遽一曲披露、その後は「トーキョー・コーリング」の音源を流しながら
冬空を想起させるフロア作りの中でお客さんを帰すという最後まで粋な流れでした
初期とは結構変わってきましたけど、
意外とコンセプトを貫くと言う点では変わらずに来ている部分もあるのかも。
新譜の楽曲がライブでどう響くのかが気がかりなワンマンでしたが、心配せずとも驚異の受け入れられ率で安心した。
音楽への真摯な想いは相変わらず伝わり過ぎるくらいに伝わって来てソカバンらしさもきちっと存在する
その上で新しい音像の気持ち良さもきちっと体感させてくれた出色のワンマンライブでした。
行った甲斐があったと本心から断言出来る類のライブでした。
曽我部恵一の才能は間違いないですね。至高。