超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

サクラサクラ 1巻/もりしげ

2013-02-09 08:19:49 | 漫画(新作)











もりしげ「サクラサクラ」1巻読了。












もうすっごくストレートな少年誌のラブコメが読みたくて
王道ド真ん中を往ける漫画を求めてた時に手に取ったのがこの作品でした
それもコメディ特化とかサービス特化ではなく真っ当な感触のが読みたかったんですけど
(切なさもニヤニヤもサービスもカバー出来るような)、その点でも個人的には大満足の一冊でした
やっぱアレですね、いくつになっても「少年誌のラブコメ」が大好きなんだな自分・・・と
改めて再確認出来るような素晴らしい作品でした。
文句なしの出来栄えです。

まず、基本的にヒロインが可愛いというのがあって
それもただ可愛いんじゃなくて最初の内は疑心暗鬼な部分から始まるんですね
それが主人公の男の子の無防備な表情や行動の数々でどんどん開けていくという方向性が大好きですね
設定自体が割とダークっちゃあダークなんですけど(少子化が発展した世界で大人に監視されながら生活)、
その分春の無垢で優しいアクションによってハートフルなメリハリが生まれるのが素晴らしい
一応お約束として美少女との鮮烈な出会いや交流があるのはあるんですが
「サクラサクラ」の場合は、
逆に視点を変えればガールミーツボーイのお話としても読める懐の広さがとても好感が持てると思います
要するに汚い大人社会の裏を見て育った女の子がどんどん擦れをなくしていく物語でもあるから。
主人公の存在感や他のラブコメ作品と違って最大限に聖人として描かれてる辺り
王道なのは王道とは言え
最近ちょっとなかったタイプの漫画にも思えて中々面白いです
桜子が春に対して打ち解けたり照れた表情を見せるようになるのもそれまでのバックボーンが描かれてるから
それまでが辛気臭い歩みだったからこそ純真さに惹かれるという流れに説得力があるんですよね。
だからこそ、何の引っ掛かりもなく二人の距離感に夢中になれる節は間違いなくあって
事前に予想していたよりもずっと誠実な作りに個人的には感動しました
昔はもっと不自然だった気もするのですが
やはり10年以上のベテランという事で洗練もされて来たのでしょうか
本当にただ単にラブコメ成分を補給したくて買った漫画だったのでここまで完成度が高かったのが嬉しかったなあ。


桜子は、高飛車なようでも本当は素直な良い子なんですよね
幼少時から汚い大人や上の世代の人間の怠惰の犠牲になってた経験があるからスレちゃった訳で
そんな彼女が春の素直に今を楽しむ気持ちや他意のない好意によって
段々と素直さを獲得していく過程
もう一度真っ白く純真に戻っていく過程というのは
正に最近の自分にとってとても切実なテーマだったので自分の想像以上に作品から豊かさを得れた気がします
特に桜子が春に頑張って「ごめんなさい」と「ありがとう」を伝えようとする話は大のお気に入りです
あれだけでもこの1巻を買う価値があると思ってるくらいに(笑
このご時世に、
「ごめんなさい」と「ありがとう」を言うって行為の為に一話費やす漫画があるって事実が嬉しい。
当たり前だけど、当たり前って感じちゃいけない嬉しさだったり豊かさ・・・を
伝えようとしてる漫画なんじゃないのかな、とも思ったり
最後の春の僕らの世代が~の発言も含めて実は志の高い作品になってるとも思う
前述のように王道のラブコメディとしてもほぼ完璧に楽しめる漫画ではあると確信してますが
その裏に隠されたテーマ性やメッセージ性もきちんと自分なりに考えて咀嚼するともっと楽しいかも、と思う
隔離されたような異常な状況が普遍的になってる設定の漫画でありながら
そこから真っ当に向かって一歩ずつ進んでいく春と桜子、そして桜花の姿がとても眩しく誇らしい。
それでいてやっぱり超絶的に可愛くもあるし(笑 割と過不足はない印象
ヒロインとのやりとりから、へヴィな設定、不穏な目配せが掻き立てるこれからに向けてのドキドキや
桜花のクーデレかと思いきや実はめっちゃ素直な性格の意外性だったり
素直にニヤニヤ出来るシーンの数々、純朴さ
好感の持てる主人公に
どんどん可愛さをUPさせていく桜子の変遷だったり、名物教師に適度なサービスシーン
そして作中からほのかに伝わるテーマ性とメッセージ性・・・お気に入りの部分が沢山浮かぶ漫画でしたね。
出だしは好調だと思いますが、肝心なのはむしろこれからなので是非頑張って欲しいです
ここまで王道をしっかりと面白く描けるラブコメ作家の存在は貴重ですね
それも年月を重ねる度良くなっている印象なので
この作品も是非代表作の一つになるくらいに売れて欲しいなと
とても筋の通った一作だと個人的には思っています。少年誌のラブコメ好きなら迷わず推したい漫画です。

桜子はめっちゃお気に入りで個人的に理想のヒロインの一人だなあ、という印象なんですが
対抗馬である桜花もまた無口キャラにしてデレデレキャラでもある面白い仕様
その上着痩せするタイプとヒロインの造詣には抜かりがないですね(笑
ちびっこ先生も桜子との対比が面白かったり
定番と言えば定番ですがちゃんとテーマに沿ったキャラ造詣になってるのが個人的には好感が持てるし
そこまで記号っぽくもないある種の素朴さが感じられる描き方も気に入っています
そしてちょっと童心に帰れる様な懐かしい学校のシーンも見所
コメディ的にもきっちり笑えたり、
ちびっこ先生に関しては色々と滑稽で良い具合にムードメイカーになってて役割的にも良い感じ
個人的には着物を着てくるシーンなんて相当意地張っててツボでしたね・・・(笑
場面場面を切り取っても楽しく浸れる部分が多い作品だと思います。








あとやっぱサービスシーンも質が高くていいな、と(笑
まあ一応出るものは出てるんですが、シチュエーションが良かったり
羞恥心の盛り立て方が上手かったりどれも期待以上に目の保養になったかな、と
キャラクターが魅力的に感じる作品は本当にそういうシーンが有り難く感じるものなんですね。
2巻もめっちゃ楽しみ!




ネコあね。 6巻(最終巻)/奈良一平

2013-02-09 01:53:09 | 漫画(新作)











奈良一平「ネコあね。」6巻読了。










やっぱりこの漫画はハッピーエンドが似合うやね・・・と思いましたね
全てにおいて大人びて達観の境地に至っていた銀ノ介も最後の最後でようやく
「ただの子供」に戻れた気がするし、今まで自分の力だけで何とかしようとしてたからこそ
ああいう無防備な願いのシーンも際立つ訳で・・・。それがこの物語の目的だったのかな、とすら思いました
そんな無理して背伸びして年相応から離れなくても
もっと思ったように感じたように、時には他人に頼りながら生きれば良い
銀ノ介は成長型の主人公ではありませんが、でも結果的にはこれも成長のお話だったのかな、とは感じました
最後には恋愛方面にも決着(?)を付けて非常にまとまった良い最終回になったかと
美談を描くタイプの漫画としてはこれ以上ないくらいの仕上がりでした
野暮な言葉はいらないくらい
「思い遣り」そのまんまの作品で
その空気感や方向性を最後まで見失わずに描き切ってくれた事がファンとして嬉しかった。
自分の気持ちを押し殺してきた銀ノ介の最初で最後の無防備なわがままを叶えてくれた親の最後の仕事
そして例えネコであっても家族として扱い、最後まで忘れなかった人間に対しての感謝の気持ちと・・・。
様々な要因が絡み合って生まれた最初で最後の・・・
いや、二度目の「奇跡」。
バッドエンドにして悲しみを煽る方法もあったとは思うけど
敢えてそこを選ばずここまで頑張って来た銀ノ介の想いに応えた決着に関しては
個人的には何も言わず何も挟まず肯定してあげたい。約束を守ってくれた杏子もまた素直に褒め称えたい。
お互いがお互いを強く想ったからこそのこの「奇跡」、実にこの作品らしかったと思います。
それ以上の言葉はもう要らないし、紡ぐ気もありません。
確かに言えるのはこの漫画が名作であると言うその一点だけですね。
終着点も含めずっとずっと胸に残るような優しくて温かい物語に仕上がったと思う
その手さばきと、愛情を丹念に描いてくれた奈良一平さんに心からの拍手と感謝を捧げます。
また、次回作も心から期待しております。ありがとうございました。


全体を通して・・・物凄く趣のある漫画だったと思います
その分1巻初期のテイストが今考えれば浮いてるっちゃあ浮いてるんですけどね(笑
でもあれはあれで目の保養に良かったので。この方の絵は本当に可愛いのでああいうシーンはね、
何気にサービスとしては最大限に機能していたって思ってます
けど、掴みはあくまで掴みで
より深みを増した後半のお話のが印象に残ってるのは間違いないですね。

銀ノ介がクーラーを買いに行く話と大学進学を決める話
それから彼の昔の話が特に好きだったんですけど、それ全部主人公が軸に来ているお話しなんですよね
子供らしいわがままを全然言わない、それが故に寂しさを感じるおばあちゃんの気持ちだったり
そんなおばあちゃんが自分の為に頑張って働く姿を見て考え込む銀ノ介だったり
それをたしなめて正に姉らしい活躍をする杏子だったり
こう・・・
全員の気持ちが分かるささやかなすれ違いというか
不器用なくらい良い人過ぎるキャラクターたちの想いの変遷を眺めるのが最高に心地良い漫画でした。
設定こそファンタジーですけど、心情描写はリアル以上にリアルだったと個人的に思う
他人を傷つけた時に自分が自分でなくなってしまうような気持ちだったり
とにかく繊細で、かつ奥深い作品でした
それを初連載でここまでしっかり描けたのは個人的には凄いというしかありません
源造さんの息子さんのお話なんて物悲しくも優しい雰囲気の再現が本当に見事でしたもんね
そういうこの漫画でしか味わえない絶妙な空気感がどの巻にも存在していて
それを味わえる事が本当に恍惚的でしたね。
「いたわり」や「思い遣り」、「温もり」や「優しさ」、そういう言葉が嘘偽りなく似合う漫画
それが「ネコあね。」という作品でした。そういう感情や瞬間を重ねて来たからこそ
最後の最後でご褒美を与えてくれたような・・・そんな感覚でしたね。
そしてそれは何よりも嬉しく、尊い事柄でもあって。
正直、このまんま半永久的に読み続けたい作品でもありますけど(笑 テーマは描き切った、という事で。
銀ノ介も少年らしさを取り戻したし、杏子もまた姉らしく弟を救う事が出来た。
そんな「成長」の物語を初期から完結まで追えて幸せでした。
特に5巻の内容で号泣したあの出来事は死ぬまで忘れないでしょう(笑
銀ちゃんが杏子を忘れなかったように、私もこの作品を忘れずいつまでも読み続けようと思う。
そんな風に思えるくらい自分の中では大きく、豊かさを与えてくれた漫画でした。
いつか終わるその時まで、
彼彼女らの幸せな日々が続きますように。








心から名作傑作と大声で断言出来る作品。
手描きの良さも十二分に味わえるアナログ感も素晴らしく好みでした。
こういうアットホームで手作り感たっぷりの画面作りが出来る若手作家さんは貴重なので
その意味でも今後の活躍や好待遇を祈っています。