超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

絶対絶命 全曲レビューその10「DUGOUT」

2011-04-12 23:52:05 | 音楽(全曲レビュー)





RADWIMPS「絶体絶命」毎日レビューその10「DUGOUT」です。そろそろ終盤。


このアルバムでよく聴く曲は「狭心症」に継いで「G行為」だったりするんですけど
いつもそこからの転換に驚くんですよね。
なんせゴシック・ファンクテイストの楽曲の後に超スピードのギターロックですからね。
いきなり爆音がガーッと流れるっていう。やや心臓に悪い気もするけど(笑)。
でもこれはこれで面白い構成だと思う。
緩急っていうかね。




10.DUGOUT

タイトルの意味は「防空壕」らしいです。
となると母親のお腹にいた時期をそれに例えてる訳ですね。
確かに生きるのって、生きてくのって戦いですもんね。腹の間にいる時だけは避けられてる訳だ。


【母の腹を裂いてまで 出てきたこの娑婆 この世界に
 母の痛みに見合うだけの 意味を 意義を 遺せる気もしなくて】

自分で望んで生きたい、って出てくる子なんていなくて
大抵が望まざる生なんだと思いますが
それでも、過酷な人生が誰にでも待っている事を知りつつも、命を張って産んでくれた母親。
そうやって命を紡いで、繋げてくれた母親。

だがしかし、産まれて来た子といえば
前回の「G行為」みたいに自己満足とクソみたいな妄想だけ見てるような馬鹿者で
その痛みに意味はあったのか?
その痛みによって生まれて来た子は果たして痛みと同等の価値があったといえるのか?って事なんです。
親の事が嫌いであろうとなかろうと
命を張って産んでくれたって事はどうごまかしようもない事実な訳で
端的にそこまでする意味のある子だったの?と。

居るだけでいい、なんてことはただのごまかしで
何も出来ない、役割も継げない子供に対する価値なんてたかが知れてて
こんな出来損ないを産む為にそこまでしたかと思うと泣けてきて仕方がない。


【毎日何かを食べてまで しがみついてるこの世界に
 殺めた命に見合うだけの 価値が 意味が
 あるとは到底思えるはずもなくて】

生きるためには他の生物の命が必要不可欠な訳ですが
そういう自分は必要不可欠な存在なんですか?
むしろ不必要な存在なんじゃない?
その価値ないんじゃない?
妙な争いごとやゴタゴタを繰り返すだけの人生に意味なんてないんじゃない?
なんて思い切り迷う時もあるんじゃない?
でもそれがあってもいんじゃない?
じゃないが多くない?ってのは冗談として、まあやっぱり自分の存在が揺らぐ事なんて日常茶飯事なんですよ。
 自分一人だけがどこか別の場所に取り残されたような気分になる時も多々。
比較的都会的な街を歩いてると自分がどれだけ人と違うか分かってしまう。
でもそれを誇りにする気分には到底なれなくて。
そこに意味も価値も見いだせなくて
むしろ劣等感に繋がって。

実際、今自分はどこにいるんだろう?



そんな過去は昔の防空壕から出てきた今となっては
同じ存在だったはずのみんなとは随分違う道を歩いて来てしまった。
そこに誇りを持てれば良かったんだけれど
むしろ抱えるのは無価値っていう概念ばかりで
そこからいつまでも抜け出せなくて。

ただ、そこで一つ思うのは確かに無価値かもしれないし無意味な側面もあったかもしれない
けどそこっていうのは自分だけが歩いてきた道であることも確かで
その自分だけの道の上では常に自分がトップランナーなんです。
一緒に歩く相手も
後ろから追ってきてくれる相手もいないけど
この歌詞で歌われてる内容を考えると、その道はあなたにしか歩けない道、って事でもある。
だから後戻りなんてもっと無意味な事で
この先のこれからもその道を歩いていく事は意味も意義も価値もないかもしれないけど
それは決して「無駄」なことなんかじゃない。
なぜならその道は・・・
その人にしか歩けない道だから。だからもう何も考えずに進めばいい。前倣えもしなくていい。
誰かと同じポーズだって取る必要なんかない。
だって、その道を歩いてる時点であなたはオリジナルなんだから。
その上で何度でもしがみつけばいい。
あがけばいい。
それもまた道になって行く、はず。


無意味でも無価値でもその道はあなたしか歩いてないんだから、決して無駄とは言い切れない、と。