超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

絶対絶命 全曲レビューその7「グラウンドゼロ」

2011-04-09 23:58:29 | 音楽(全曲レビュー)






RADWIMPS「絶体絶命」全曲レビュー、その7です。折り返し地点ですね。「グラウンドゼロ」。




7.グラウンドゼロ


【どれだけ後ろ向きに歩いてみても未来に向かってしまうんだ】

もう先に進みたくない。
これ以上無作為に生きるのに疲れた。
何もかもどうでもいい。
もう何もかも・・・。

何かもどうでもいい?
本当に何もかもどうでもいいですか?
何もかもどうでもいいって思うのは本当は何もかもどうでもよくないってことなんです。
本当は諦めたくなんてないんです。
いわば本心とは逆の言葉なんです。
そんな歌だと思うんです。


前向きな人間が希望を持って前に進んでいくのは良い。
後ろ向きな人間が希望を持って前に進むのは辛い。
だけど、どう足掻いても時計と逆に生きるなんて到底無理なことで
うざったいくらい青い空と
貰いたくもない誰かからの期待と
立ち止まらせてくれない現実が一辺に襲ってくる。やってきてしまう。

そう考えると、この世の中ってやつはとっても残酷な仕組みで出来ているもんでして
大勢の人が居たとして確かに進む道は違うかもしれないけど
その実行き先はよりよい未来・明るい明日・希望の道、
つまりはほぼ一緒くたな訳で
そこに行けない人間にとってはそれが苦痛な訳で。先に進む事も、それを選ばない事も出来ない
と見せかけてその実時計はどんどんと進んでいってしまう。
こんな選べない自分を乗せて・・・。


【生まれた時 そう誰かに 僕が受け取ったものだから】

ただ、そう考える
そんなことをくよくよと考えるっていうのは
逆に言えば本当はもっと強く生きたい、希望を持って歩きたいから、という事だとも思う。
未来とか希望とか厄介な事柄はあれど
本当はそれを望んでいるのは明白で。
それは遠い昔に誰かから譲り受けた大切なものであることも確か。

もっと言えば、今自分が拒否しようとしている未来も希望も他の誰かにとっては
何をやっても手に入れられない可能性もある訳で
それを捨てよう、と思うってことは
そういう人達にとっては至極残酷なことなのかもしれません。

結局歌の中では一応ハッピーエンドという体で締め括られていますけど
正解なんて本当はないと思ってて
でも自分にだってそんな未来や希望を生める力はあって。
自らの分身という形で。
その大切さを歌う歌、でもあると思います。要は一つの歌に二つの意味がある、っていう。個人的な解釈ですけど。




楽曲自体はとてもストレートですけど、歌詞の中ではすっごく悩んでて。でもそれが「らしい」かな、と。




ロスト アンド ファウンド全曲レビューその2 「青よりも蒼く」

2011-04-09 22:03:13 | LOST IN TIME 全曲レビュー






最近海北大輔の歌を聴いてると泣けてきて仕方がない。
今週も参ります「ロスト アンド ファウンド」全曲レビューその2「青よりも蒼く」です。




2.青よりも蒼く

突き抜けるくらい爽やかで、みずみずしくて、エネルギッシュなバンドサウンド。
それに乗せて思いっきり歌われる威勢のいいボーカル。
に反して歌詞の内容は内省的で。
逆に言えば内省的だからこそ、こういう思いをぶつけたくなるんだよ、と。
そしてそれは非常に正しいし、シンパシーを感じます。


【誰かが泣けば 誰かが笑う】

他人の不幸は密の味。
貼り付けにされる無様なひと。
心では思ってもいないことを平気で言ったり。

そんなもんに散々振り回されていて、振り回されてしまって
気が付けばいつ、どんな時でも他人の顔色を伺うようになってしまった。
人の目を気にする事ばかりで。
人の目ありきで行動して。
でもそれって本当の自分なのか?
そこに本当の自分なんてものはあるの?
誰にどう言われようが、一番大切なのは自分の意志なのに・・・。

それを曲げてまで生きてることに意味はあるんだろうか。
それを「普通」だって認めてしまったら
自分の証明って一体何なのさ?


大人になるのは簡単ですけど、真の意味で大人になるのは非常に困難です。
昔、本当に自分が青かった時に思っていた真逆を行くのなんてザラなんです。
ただ、その現実から目を背けるのも違うと思うんです。

【助走もないまま誰よりも高く 跳べると信じてたあの頃に】

確かに思うようにはいかなかったし
何度も何度も失敗を繰り返してしまったけれど
やっぱり無心に未来を信じてみたい気持ちは失われてなくて
だったらそれをもう一回呼び覚ましにいこう、と。

呼び覚ますのは容易ではないですよ。
だってもう何度も「現実」ってやつを見てしまったんですから。
だけど、このまま腐って終わるのもまた勘弁なんです。
それもまた正直な気持ちで。
絶望と希望は紙一重なんです。どっちも必要。なんだと思う。なんだかんだいって。

いくら現実に叩きのめされても、何度も立ち上がって。




繊細な部分を描いたと思ったら、途端に加速するアンサンブルもまた気持ちよく、男らしさも溢れている。
青空に向かって走る少年のイメージが浮かんできます。素敵な曲です。



絶体絶命 全曲レビューその6「狭心症」

2011-04-09 02:51:57 | 音楽(全曲レビュー)






RADWIMPS「絶体絶命」毎日レビュー、その6は「狭心症」です。このアルバムで一番好きな曲です。

・・・なんだか書くのにすっごく時間が掛かったので日を跨いでしまった事をお詫びします(汗)。





6.狭心症


いきなりなんですが、この曲に関しては売れて欲しくなかったというか
ヒットチャートのド真ん中ではなく隅っこの方でカウンター的に鳴っていて欲しかった気持ちが強くて。
それこそ色々な事象に対してのアンチ精神が鳴ってる曲だと思いますから。

人間のうめき声をそのまま曲にしてしまったような・・・
それなりに音楽を聴いてきたつもりでしたけど
これだけ個人の情念が入ってる楽曲は正直聴いた事がなかった。
初めて聴いた時もインパクト十分でしたけど、聴き込むと聴き込んだだけその情念が肥大していく。
いたたまれない気持ちになるくらいに。
そしてそれは元から自分の中にあったもので。元からっていうか今も。


心の強い人間、強い自分を持ってる人間。何事にも動じないタフな人間。
の間間で生きなければいきない心の弱い人間。
どこのどいつが人間は平等だ~と嘯こうとそんな言葉なんて到底信じられません。
Syrup16gの五十嵐隆も言っていたように人の心にはあらかじめ決められたキャパシティがあって
それが極端に少ない人間は確実に存在する。
そんなの甘えだ、っていうならば何故年間この世にはあんなに多くの数の自殺者が出ているのか。
正直な話、私はそういう人たちを責めることは出来ません。
多かれ少なかれ自分自身そういう気持ちを持ったことがあるのは否定できません。
「死にたい」って思わずに生きていくこと自体が無理です。

見たくもないものを強制的に見せられ
個人の悲しみや辛さを品定めされて
そんな世界でどうして生きなければならない、って話です。
街を歩くだけでも、電子の世界に移行しても見たくないものや聞きたくないものであふれていて
逃げ場が完全にふさがれ
それを発散させる場所もない。

だったもうこの感情ラインを切ってくれよ、だとか
この目で見えるものをシャットアウトしてくれよ、だとか
そういう気分に陥る事もある。
そういう気分に陥った歌です。


何をどう考えてもいけないのが自分であるならば
この目も、耳も、誰かの声も、誰かの妬みも、恨みも、罵詈雑言も
インプットする必要のない悲しみも
その押し付けも
何もかもいらないから早くこの世界から解放させて。生き延びさせて。
僕の心を捻じ曲げないで。
どうでもいい悪意も聞かせないで。
余計な情報を植えつけないで。
正論ばかりを言わないで。
正論を押し付けないで。
正論以外の正しさもあると知って。
なんてことをほざいてる自分が悪いとも分かってて。
だったら、そのどちらにも行けないのならば早くこの世界から
この世界から
解放させて/解放させて/逃がして/解放させて/解放させて
解放させて/切り落として/解放させて/解放させて/解放させて
解放させて/解放させて/解放させて/解放させて/捨てさせて
助けて/助けて/助けて/助けて/助けて/助けて
解放させて/解放させて/逃がして/解放させて/塞いでやって/解放させて
解放させて/引き千切って/捨てさせて/解放させて/解放させて/解放させて

解放させて、と。


だったら無感になれば楽なのかと。
悲しみも苦しみも、痛みも恨みも全部捨てて無感になりたい。なってしまいたい。
でもそんなの無理でしょう。
無理だけど・・・。
そういう気持ちを吐き出してもいいよね?と。
たまには思いっきり嘆いてもいいよね?と。
そんな、聴き手によっちゃある種の救いの歌として機能する、個人的な判断では名曲だと思ってます。
というか日本のロックの名曲って思ってるくらい。


【僕は僕を幸せにする機能でいっぱい】

じゃあそれに対する対処法はなんなのさ?と問われれば
きっとこういう事なんでしょうね。
何かに対して傷付いたから、怯えたからこそ自分だけは自分自身を精一杯幸せにしてやりたい。
それはもちろん楽をさせる、って事では全然ないですよ。
そうじゃなくて
自分自身に対するいたわりを常に持っておくこと。
どんだけ見たくないもの、聞きたくないものが溢れてようと
こうやって愚痴を垂らすだけで自身で終わりを選べる訳じゃないのなら
それを忘れないこと以外にやるべき事はない。

加えて、もし自分自身の子を生み出すのであれば、自分と同じ思いはさせないように
全力で守ってあげられるように。
自分自身を守るかのように。




非常に辛く、悲しい歌ですが、その実優しさもめいっぱい鳴ってる気がして。だからより大好きな曲です。
自分にとっては相当に必要な曲なんです。