7,8年ほど前、私のパンと焼き菓子の会に参加した方から、はじめて化学物質過敏症の実体験の話をお聞きしました。
彼女は、合成洗剤や柔軟剤を多量に使っていて、ある日突然、体調不良となり、まともに生活のできない状態になったといいます。でも、何が原因なのかまったくわからず、あれこれ調べてみてようやく病の原因が合成洗剤や柔軟剤にあることを知ったのだそうです。
発症するまで、彼女は洗剤や柔軟剤そのほか合成香料の入った商品につけられた匂いが物足りず、どんどんきつい匂いのするものを探すようになり、行きついたのはすべてアメリカ製品だったといいます。
原因を突き止めた彼女は、洗剤や柔軟剤のみならず、消臭剤そのほか類似の商品をすべて廃棄し、洗剤はシャボン玉石鹸の製品に替えました。「変えた途端、家族みんなに味覚がもどったのです」つまり、知らないうちに味覚も鈍感になっていたらしいのです。
その会は、自然食品店の店内で開かれたものでしたが、件の参加者は、自分が化学物質過敏症とわかってからずっとその店の顧客となり、食生活にも気を配るようになりました。そして家族全員が健康になったとのこと。
私自身は、ずいぶん前に石鹸洗剤に切り替え、柔軟剤は面倒ということもあって一度も使ったことがなく、消臭剤もたぶんほぼ買ったことがありません。でもはっきりと体に害が生じるからとは思っておらず、環境への負荷を気にしていただけなのですが、この話を聞いて、これはかなりたいへんなことがおきているぞ、と危惧を持ちました。
この本「マイクロカプセル香害」は、200ページほどの変形の新書判なのですが、半分は香害被害者からとったアンケート結果を紹介しています。その内容は上述の、私が出会った人以上のひどさで、唖然とするばかり。
「ある瞬間から、すべての合成洗剤が使えなくなりました。現在も数十メートル先の公園からの柔軟剤臭で、家の中でさえ苦しい。まっすぐ歩行できず、呂律が回らなくなり、計算や文章や言葉の解読できなくなり、感情的になり家族に当たり散らしたこともありました」
「発症後は、全く別の体になったというか、普通の暮らしができない。香料で倒れます。筋肉硬直です。・・・全身に症状が50種類以上出ました。大量の鼻血が出たときは、ものすごく不安でした」
「夫や実家や義理の両親からの理解が得られず、夫婦喧嘩(過敏な私にうんざりした夫から離婚届を突き付けられた)が増えています」
「医者からは原因不明の「腸閉塞」の診断。ただし、胃腸の検査では何ら問題なしと。・・・症状は、喉のかすれ、痛み、めまい、鼻水、頭痛、胃腸の不調が月日を重ねるごとにひどくなっています」
「病気を公表してからママ友だったと思ってた人たちはだんだんと離れていきました。・・・(子供は)一緒に遊んでくれるお友達もほぼいないので、子どもはいつも「死にたい、もっと早く生まれていたらこんな病気にはならなかった」と漏らしています」
小学生の子供から老人まで、発症の年齢はまちまち。それぞれ多種類の症状を抱えて不自由を囲っています。そして皆一様に周囲の理解が得られないことでさらなる苦痛を強いられています。
ここ数年前からとみに増えてきた柔軟剤のテレビCM 。きれいな若い女性が海辺で立っているとそこに花びらがひらひらと散り、若いハンサムな男性が引き寄せられる、という映像もあったのではなかったかな。あの匂い、かなり強烈だと私は思うのですが、「いい匂い」と思うように、もう鼻が慣らされているのだろうと思います。
柔軟剤も合成洗剤も消臭剤もみんな石油製品。香りを長持ちさせるためにマイクロカプセルなるものに香りの成分を閉じ込め、空中に飛散するようしかけてあるのだそう。そのカプセルの壁に使われている化学物質に、イソシアネートという「ごく希薄な吸入でもアレルギー性喘息や中枢神経系・心臓血管系の症状を引き起こす毒性化合物」があります。
このイソシアネート、80年代に農薬の効果を持続させるために開発されたマイクロカプセルの中からこの毒物が生じたことがあったらしく、被害を訴える人がいたそうなのですが、確定的な証拠がないことを理由に、そのままに。ただし今は、もしかしたら危険性を知った消費者の声に製造会社が敏感に反応して、ほかの物質に替えている可能性もあるかもしれないとのことです。でもだからといって、危険性がなくなったわけではありません。
農薬といい、こうした化学合成剤といい、日本は先進国の中ではかなり規制が緩いこともかかれています。
嗅覚というのは、五感の中でもっとも原始的な感覚だと言われています。味覚や聴覚、視覚が現代人はかなり衰えていますが、そこにもってきて、さらに嗅覚までだめになったら、身を守ることができなくなってしまう。土をいじることから遠ざかっているので、触覚も駄目になっていそう。
私の友人たちのなかにも、仕事先で支給された制服の匂いに耐えられなくて仕事を続けられなくなった人や、整髪料などの香料の匂いに耐えられなくて頭痛に悩んだといった経験を持つ人がけっこういます。この本は表紙に、「緊急出版」とあります。さらに「明日、あたらしいマスクが必要になる だれか、助けろ あの子をいますぐ」とも書かれています。
過敏症になった人には、毒ガス用のマスクでも付けないと、つらくて生きていられないほどの事態となっている現実を、多くの人に知ってほしいものです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/83/09db79f1e30f61a2118818aa186eb34f.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/4c/de86b7539f4eadb337f26c23fc7e82f8.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/66/baddaf8c61338d5fa7edc918d14d059e.jpg)
しばらく前に読んだ本ですが、ささっと教養を身に着けるにちょうどいい本だとおもいます。
日本で男女同権となったのは先の大戦後。他の先進国でも女子に参政権が与えられたのは思いのほか後年のことで、世界中の民族が宗教の違いはあれ、おおむね男尊女卑の社会だったというのが、大方の認識だと思います。
でも、単純に同一視していいのかなとずっと思っていました。山の国、日本では、山の神は女神。こちらに来て一度だけ参加したことのある「山の講」というお祭の際に、集落の山の神の住むという山中に供え物を持っていくのは男性と決まっています。女性が行くと神が嫉妬するから、と言われています。
最近はいわないだろうけれど、しばらくまえまでは、夫が妻のことを「うちの山の神」と半ばふざけていっていました。夫が恐妻家のふりをしても馬鹿にされないのが日本という社会。そもそも、皇祖神とされるアマテラスオオミカミは女神です。
もやもやしていたのが、このガイドブック的教養本を読んでちょっと頭の中が整理されました。
「天照大神を皇祖神に戴くこの国は、「女神の佑わう国」でもあった。女神や巫女たちの大いなる活躍は前章で書かれているとおりだが、その女神たちが零落し、この国が「ほとけの佑わう国」へと変わっていったのは、いうまでもなく仏教の浸透による」
「女性の地位の著しい後退にくわえて、平安時代からさかんになってくる穢れの思想が、さらに女たちを救いのない境遇へと追いやった」
「成仏することも自立的に生きることも許されず、「三界に家なし」といわれて世界そのものから疎外された女性の境遇は、そのまま女神の境遇へとスライドされていき、かつて日本各地の海や山に満ちていた名もない女神たちから、多くの聖性を奪っていった」
女神たちは零落して物の怪へ。もともとは神と同意であった「鬼」ということばは、「醜い邪悪な妖怪の呼称」へと変わり、「女性と近しい妖怪」とされるようになったといいます。山姥とか鬼婆とかは、女神が「魔の世界に住み替えていった」姿のようです。
しかし、女性が神に近いところにいる、という認識は完全には滅びることなく、神の言葉を伝える巫女やユタ、ノロ、イタコとなって、つい最近まで庶民の根強い信仰にささえられて、大きな役割を果たしていました。
イスラム教の経典で女性がどう扱われているかは知りませんが、旧約聖書では、イブはアダムの肋骨から神が作った存在。部品なのです。仏教では、女性には「五障」があるため修業の妨げとなるとされ、寺では禁制とされました。ただし、日本の場合は、神道が仏教と習合して生き延びたため、その分、女性はか弱くて男性に庇護されるしかない存在という考えは、西洋ほど強くはならなかったのではないかと想像します。それが幸いだったかどうかはさておき、歴史的経緯はある程度知っておかないと、どこかでまちがえてしまうのではないかと危惧することが多いので、ちょっとだけ紹介しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/df/898834dc00f06e3cba51bd128974b071.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/58/8d17678fe56d5703f193cedda6a12463.jpg)