(1)GW中は休みを利用して首脳外交が活発になる。今年は露によるウクライナ軍事侵攻もあり、岸田首相、林外相が手分けをするように露とのつながりの深いアジア諸国、中央アジアの国々を歴訪している。
アジアでは岸田首相がベトナムを訪問してベトナム首相と会談をして、両首相はウクライナでの「即時停戦と人道支援の重要性」を確認して「大量破壊兵器による威かくや民間人への攻撃に反対する」(報道)ことで一致した。
(2)しかしベトナムは武器供与で露とのつながりが深く、これまでも国連での対露非難決議などで棄権、反対を続けている。続いて訪問したタイも同様だ。外交は建前と本音が交錯、飛び交い直接出かけて首脳同士が会い、話し合い、会談を重ねることが重要で、いざという時に理解、協力につながることも強い。
(3)しかし、安倍元首相とプーチン大統領のように20数回も相互に行き来して日露平和条約にもとづく北方4島返還協議を重ねながら、最後は露から北方4島は戦後法的に正式に露領土になったことを認めるよう迫られるという本音が出て見込み違いに終わることもある。
(4)岸田首相は先だってやはり露との武器供与でつながりの深いインドを訪問して、露への経済、金融制裁への協力を求めたが実現しなかった。インドは中国の海洋進出に対抗する日米豪印クアッドでは協力しながら、クアッドで唯一国連の露制裁決議には棄権して立場を異にしており本音と建前の国際政治関係、組み合わせのむずかしさが読み取れる。
(5)ベトナムも国連の対露非難決議ではことごとく棄権、反対しながら、岸田首相のベトナム訪問での首脳会談では即時停戦、人道支援の重要性、大量破壊兵器による威かく、民間人への攻撃に反対することで一致したといわれるが、国連露制裁決議では棄権、反対しながらベトナム独自でどう対応しようというのか、首脳会談での儀礼的な「表明」(courtesy speech)だけではわからない。
(6)岸田首相が日本からベトナムに出かけて行ってまでの首脳会談でも、できることとできないことは率直に話し合うべきだ。そうしたことが日本とベトナムの相互の立場の理解といつの日かの相互理解、協力につながることになるものだ。
政治には個別案件(本音)と一般論(建前)が異なることは往々にしてあるが、理念、政策、方針として近づけていく努力が大事でそのための首脳同士の相互訪問であり、それが政治外交であり、相互信頼関係の構築だ。
(7)露が軍事演習として18万人もの露軍をウクライナ国境沿いに集結して、露にはウクライナ軍事侵攻の計画はない(ラブロフ外相談)と言った直後に露軍のウクライナ軍事侵攻が開始されるという「ウソ」発言をしていては、露の国際的信用、信頼(そもそもそういうものが露にあったのかは疑問だが)を失うものだ。
(8)岸田首相、林外相手分けの首脳外交では、そういう露政治への危険、不満、不信について意見、考えを述べて訪問国との理解を深める努力をしなければならない。首脳間の相互訪問はするだけでも意味はあるけれど、儀礼的、形式的な意見交換だけでは意味がなくどうしたら解決できるのかの道筋について展望を示さなければならない。