(1)経済安全保障推進法が成立した。かっては安全保障(the security)といえば外国の軍事的脅威から国、国民を守るものであったが、今では何でも「安全保障」がついて安全感、安心感を与えて、守られているような気持になるが、知らないうちに国家統制が進んで企業、国民の自由、自主、自立が束縛されていく規制社会で過ごしにくい社会になる。
(2)本来自由、自主、自立で創造的付加価値の大きい経済活動が国家の介入をもたらしたのは安倍元政権の時代からが顕著だ。長引くデフレ脱却を目指して物価上昇2%達成目標を掲げて、政経労会議を設置して政府が企業に賃上げを要請して政治が企業に直接介入した。
それはそれで企業が将来担保として内部留保を蓄えて賃上げに向かわない世界的に日本企業の賃金体系が低い企業体質に対して4年連続の賃上げ効果に結びついたが、そもそもアベノミクスは大企業優遇政策の業績好調が中小企業、地方、国民生活に回るというトリクルダウン方式を目指しており、中小企業、地方には恩恵が少なく円安による輸入物価高騰が国民生活を圧迫して賃上げ効果を減少させてきた。
(3)安倍元政権は特定秘密保護法、共謀罪成立で国家統制を強め、安倍元首相の独自の憲法解釈による集団的自衛権の行使容認で自衛隊を同盟国米国などと海外紛争地への派遣も決めた。企業、国民生活の自由、自主、自立への規制を強めて、国家、社会統制を強めた。
(4)米トランプ前大統領の米中貿易、経済戦争は相互の関税強化とともに知的財産権の保護も進めて、コロナ社会の到来で経済停滞、物資、供給不足が深刻化して今回の経済安保法の制定につながった。
重要物資のサプライチェーン強化、基幹インフラの安全確保などを柱として、半導体、医薬品などを「特定重要物資」に指定して企業の調達計画を政府が認定(報道)するという規制強化だ。
(5)何が「特定重要物資」かはその都度政府が任意で政省令で決められる法律で、政府の意図で経済、企業活動への介入を強める法制化だ。コロナ社会で問題、課題となった物資、供給不足、経済停滞への対策は必要だが、何やら流れは中国のような専制国家の国家統制強化を思わせるもので、民主主義、資本主義の後退もいわれている中で自由、自主、自立の企業活動、市場競争力、資本主義が損なわれる事態も危惧される。
(6)夏の参院選での各党公約は「安保バブル」(bubble of the security)ともいわれて、国民、有権者としても慎重な見極めが求められる。