(1)大方の見方ではプーチン大統領は9日の対独戦勝記念日式典でウクライナ軍事作戦の勝利宣言をするといわれていたが、注力するウクライナ東部の完全制圧にもいたらずに軍事侵攻は続いている。
プーチン大統領の戦勝記念式典での演説では、「露が西側諸国に安全保障のための条約を結ぶことを提案したがNATOは話を聞こうとせずに(ウクライナに)最新兵器を提供し危険は日増しに高まり、ネオナチとの衝突は避けられず攻撃はやむを得なかった」(演説報道要約)として、露のウクライナ軍事侵攻を正当化してひたすらウクライナで戦う露軍と親露派勢力ドンバスの賞讃にあてた。
(2)10分程度の演説といわれ、この種の演説としては普通なのか短いのかわからないが、共産主義国では何時間と続く演説はよく聞く話で内容からみても幾分あっさりしたプーチン大統領の演説だった印象が深い。
軍事作戦が進行中であり、勝利宣言はなく、露軍が優勢に戦っている表現もなく、かといって国民に協力を求める「戦争」状態の表明もなく、したがって核の使用言及もなかったやはりあっさりとした演説内容といえる。
(3)米欧日などによる経済、金融制裁の強化は露経済、国民生活にダメージを与えており、国民向けに華々しい呼びかけや演説はできない状況でプーチン大統領も思惑外れの追い詰められている印象はみえるものだった。
ただそうしたこととその間にもウクライナでの露軍の攻撃が無差別的に行われ、ウクライナの国民、インフラに多大な被害を及ぼしている報道はあり、今後プーチン大統領が戦勝記念日に10分程度の比較短い演説に終わり成果を示せない中で早くもウクライナ戦争の長期戦が予想されて、ウクライナでの露軍がさらに成果を求めて無差別攻撃を拡大する恐れや考えたくもないがプーチン大統領が戦術核兵器の使用に踏み切るのか、一方で米欧からウクライナへの軍事支援、最新兵器の追加供与も伝えられてウクライナ軍が反転攻勢に出るとの見方もあり、まったく予断のできない戦況はウクライナが戦場であることからウクライナ国民への被害拡大がさらに危惧される。
(4)戦勝記念日にプーチン大統領が勝利宣言をできずに10分程度のあっさりした演説で終わったことがパラドックス(paradox)として露に停戦に応じることが期待できないことでもあり、プーチン大統領としては引くに引けない一方的な不条理なウクライナ軍事侵攻という最悪のシナリオになる可能性が強い。
(5)ウクライナに米欧の最新兵器が行き渡る6月の反転攻勢がひとつの分岐点ともみられて、しかしそれはウクライナ戦争の過激化がさらに高まることも意味してそれはプーチン大統領に戦術核兵器の使用に踏み込ませる危険も与えることでもあり、露に対する経済、金融制裁強化を進めるG7の出方、戦略にも影響を及ぼすことになる。
(6)プーチン大統領とバイデン大統領の調停会談が実現するのかが注目、焦点だ。