(1)北京冬季五輪が始まった。政治とスポーツは別と言われたものが、いつからか五輪精神は政治に支配されるようになった。今回も中国の人権問題に対抗する米国をはじめ日本など西側諸国が開会式に政府代表を送り込まない外交ボイコットに出ている。
(2)ウクライナ問題はロシアがウクライナ国境沿いに10万人超の軍部隊を集結させており、米国はロシアのウクライナ進攻に備えて東欧に米軍を増派して対立が深まっている。ロシアはシリアに軍事支援をしてシリア政府の後ろ盾になって他国に影響力を拡大しているが、米国などNATOに対してはロシアの脅威になるとして自国利益のNATO不拡大を約束させようとしており、これに米国はNATO参加は国の自由選択だとして受け入れない。
(3)ロシアから天然ガス40%供給依存しているEUはウクライナ紛争により制裁供給不足に陥ることが考えられて、米、EUは日本などに天然ガス生産国との輸入契約の一部をEUに振り向ける可能性について打診(報道)しているといわれる。
ウクライナ問題が日本にも関係して何やらかっての湾岸戦争のような様相になってきて、国際秩序、基準、規範が崩壊して世界各国、陣営がそれぞれに都合のいい論理を主張して、世界は自国利益、主義を盾にして不毛の対立が続くゴチャゴチャかき回しのスクランブル・カオス(scramble chaos)時代だ。
(4)米国バイデン大統領は昨年末に民主主義サミットをオンラインで開催して、中露に対抗する110か国、地域余りの参加で民主主義、自由主義国の結束を示した。今日的世界はかっては大勢であった民主主義国家が少数になり権威主義、専制国家が多数を占める政治構造になっており、台頭が著しい中露の国益拡大主義が米国、EUなどとの対立、確執を生んでいる。
日本もその渦の中に巻き込まれて日米豪印同盟(クアッド)として開かれたインド、太平洋の安定という中国海洋進出に対抗する枠組みに参加している。春先には日本でクアッド会議が開催される予定で、バイデン大統領の初めての来日も報じられている。
(5)それまでにウクライナ情勢がどう動いているのかによっては、バイデン大統領の来日によるクアッド会議も米露対立の余波が大きくのしかかって日本も国際紛争の当事者として矢面に立たされる懸念はある。
ロシアのクリミア半島強制編入、中国の香港統治、台湾威圧、米軍の一方的なアフガン撤退と続いて国際秩序、規範の崩壊を加速させた。
(6)新年早々に米仏英中露は核戦争を起こさない共同声明を出したが、それはその後のウクライナ危機をみると核戦争以外の戦争は別ということなのか、これでは国際秩序、規範とは無縁のものだ。
北京冬季五輪が始まったが、ロシアは国家的関与によるドーピング違反でIOCから国としての五輪参加が認められずに個人資格としての参加になっている。プーチン大統領からは反省の気持ちがみられずにその後の米露対立のウクライナ軍事衝突懸念の行動で大国の論理、主義、利益に流される、なすすべのない国際社会の無力感(sense of powerless)ばかりが浮き彫りになる。
(7)米仏独の関係主要国のやっていることといえばプーチン大統領に最終決定をさせない時間稼ぎの首脳会談を重ねるだけで、他国の主権を力で変更、征服する国家的犯罪行為に対する国際社会の敢然とした国際秩序、規範の対抗策(counterplot)がまるでみえない無力感だ。