(1)米議会の調査委員会が年次報告で、台湾有事について「中国の指導者らは台湾侵攻に必要な初期能力を保有、もしくは近いうちに持つと評価している」と分析した。台湾問題は米国、日本などが「一つの中国」論を維持しながら、同じ自由主義陣営の台湾と軍事、経済、文化交流を続けて台湾海峡の平和と安定を求めており、中国も容易には台湾侵攻は目指さないと考えていたが、最近の動向は必ずしもそうではないと思われるフシがある。
(2)ひとつは中国共産党創立100年を迎えて、中国は1国2制度の香港に対して国家安全法制定により強制関与、介入をして民主化勢力の一掃をして完全統治を強行した。米国、日本など国際社会は英国との香港返還時の50年は1国2制度を維持するという約束をホゴにする香港強制統治に対して批判を強めているが勢いは止まらない。
(3)ふたつは台湾には中国軍機がひんぱんに台湾防空圏内への侵入がみられて、緊張感を増している。台湾問題については米国、日本などが「一つの中国」を容認しており、中国も「国内問題」として他国の干渉を排除する姿勢を示しており、かってよりは中国の台湾侵攻問題は現実味を持ってきた。
香港問題同様に国際社会の批判はあっても「一つの中国」、国内問題として統一に向けて軍事行動に出る可能性は高まっている。
(4)米国、日本など同盟国は開かれたインド、大西洋構想、米英豪安保同盟で中国をけん制する対策に出でているが、台湾有事で米国、日本が台湾海峡の平和と安定のために「行動」するのかはわからない。
米国は台湾に人的、装備的軍事支援をしており、台湾海峡への米軍戦艦航行で中国をけん制して、日本にとっても台湾有事、台湾海峡の平和と安定は直接日本の安全保障にかかわる重大事項、事態であるだけに、台湾有事でどう「行動」するのか重大な局面に立たされることになるだろう。
(5)日本国憲法の主旨、規定により自衛隊を戦闘地域に派遣することはできずに、しかし台湾有事で仮に中国と米国同盟国が戦闘ということになれば、第3次大戦の危険、危惧は大きくなる。
米軍基地を抱える日本としては台湾有事での戦闘とは無縁でいられずに、米中戦争に巻き込まれる危険は現実のものであり、避けられない。
(6)日本としては米中関係よりはこれまでの日中関係の歴史的、有効性、経済関係重視の両国関係から、何としても台湾有事、米中戦争に向かわせない外交努力が必要不可欠だ。先日、オンラインでの米中首脳会談が開催されて米国の非常時に向かわない「ガードレール」論が提案されたが合意というわけでもなくて、台湾問題ではこれまでどおり両国の主張に隔たり、平行線もみられて緊張緩和というわけにはいかなかった。
(7)しかし、上述したように事態は台湾有事に向かって緊張、深刻さを増しており、「一つの中国」実現に沿って台湾海峡を巡る危険度、緊張は高まっているのは間違いない。日本としては台湾有事回避のためにどうするのか、行動するのか、米国とも連携して「やれること」、「やれないこと」、「すべきこと」に取り組まなければならない。
(8)台湾有事、台湾海峡の平和と安定は世界の大きな火種(kindling coal of the world)であり、世界の火種は日本のすぐそこにある。