「ポロ(polo)」とは、ホッケーとよく似たスポーツですが、ホッケーと違うところは、選手は馬に乗って競技を行う点にあります。起源は古く、紀元前のペルシャで軍事訓練として行なわれ、19世紀になって英国で現在のルールが制定されたのだそうです。
ポロの馬をオートバイにした「モーターサイクル・ポロ」は20世紀に入ってからやはり英国で考案され、現在は「モトボール (Motoball)」と呼ばれてフランスを中心とする欧州で人気があるらしいです。
セガは1968年、このモーターサイクル・ポロをテーマとする「モトポロ (MOTOPOLO)」を発売しました。
「MOTOPOLO」のフライヤーの表裏。「セガの誇る技術陣が遂に開発!!」と謳っている通り、そのメカは当時としては相当の工夫があったと思われる。
実際のモーターサイクル・ポロでは、ボールは足で蹴りますが、モトポロでは足の代わりに横向きのU字型の針金がバイクの左右両脇に取り付けられています。
モトポロのバイク。両脇に横向きのU字型の針金が取り付けられている。
バイクの操作は、プレイフィールドの下に隠れているX-Yプロッターのような機構で行っています。この機構はセガが後の1970年代初頭に発売した「アタック」や「ルナレスキュー」(関連記事:(予定変更)70年代のセガのエレメカゲーム「ATTACK」とそのシリーズ 及び 大阪レゲエ紀行:エレメカ研究所(大阪・北区中崎町)その2)でも応用されていますが、「MOTOPOLO」のメカ動作はそれらよりもずっと速いです。
ただ、この機構だと同一のプレイフィールドに2つのバイクを置くことができません。そこで「モトポロ」ではバイクを動かす機構を自陣と敵陣にそれぞれ1台ずつ置き、2台のバイクは決して交わらないようになっています。いうなれば、「モトポロ」は「エアホッケー」を機械の操作で行っているようなゲームです。余談ですが、ウィキペディア英語版の「Air hockey」には、「1968年、セガはエアホッケーに似た「モトポロ」と言うエレメカゲーム機をリリースした」との記述があります。
(参考画像)エアホッケー(ブランズウィック、1971)のフライヤー。このゲームについてもいつか言及したい。
ところで、「モトポロ」は米国にも輸出されているはずなのですが、パクりパクられが常のコインマシン業界にあってそのコピーを見たことが無いのは、ワタシが単に寡聞だからなのでしょうか。なお、「モトポロ」は「'69遊戯機械名鑑」にも掲載されていますが、同書には似たゲーム内容でもっと単純な仕組みの「ホッケーゲーム」や「アイスホッケー」が掲載されており、こちらに食われたということはなかったでしょうか。
「'69遊戯機械名鑑」に「MOTOPOLO」とともに掲載されている「ホッケーゲーム」と「アイスホッケー」。これらのルーツも米国にありそう。
この「モトポロ」は、2023年6月現在、「デックス東京ビーチ」内の「台場一丁目商店街」にある「一丁目プレイランド」にプレイヤブルな状態で設置されています。二人プレイ専用で、一人ではゲームとして楽しむことができないのが難点ですが、他にもピンボール機や80年代以前のビデオゲーム機もありますし、また一丁目商店街自体が昭和の雰囲気を再現することを意識した施設なので、レトロゲームファンには楽しめるスポットだと思います。
「一丁目プレイランド」の「MOTOPOLO」。状態はかなり良さそうに見える。