オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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ゲーセンと法律の話(1):まずは風適法の解説から

2020年01月26日 18時22分57秒 | その他・一般
一般にはあまり知られていないようですが、「ゲームセンター」は「風俗営業」です。「風俗営業」と聞くと、「えっちなのはいけないと思います!」的な方向の想像が働く人も多いと思いますが、それは正しい理解とは言えません。まずは、「風俗営業」と関連する法律の簡単な説明から始めます。

「風俗営業」とは、「風俗営業適正化」という法律(本当はもっと長ったらしい名称)の第二条に定義される業種のことで、挙げられている順に「風俗第1号営業」から「風俗第5号営業」までの5種類があります。

◆5種類の風俗営業(条文に挙げられている順に、一般的な言葉に翻訳しています)
(1)接待を伴う飲食店(例:キャバクラ、ホストクラブなど)
(2)店内の照明を暗くしている飲食店(例:店内を暗くしたバー、喫茶店など)
(3)区画席に分けられた飲食店(例:5平米以下の個室となっている飲食店)
(4)遊技業その1(例:パチンコ、パチスロ、雀荘など。年少者の遊技不可)
(5)遊技業その2(例:ゲームセンター、カジノバーなど。年少者の遊技可)

これらの中には、「えっちなのはいけないと思います!」に該当するケースが発生する可能性を含む業種もないこともないようにも思えますが、しかしそれとて多くの人が想像する「フーゾクエーギョー」とはずいぶん距離があります。実はそのような業種は、「風俗営業適正化法」の中で「風俗営業」とは別に定められている、「性風俗関連特殊営業」というジャンルに属します。従って、こちらに属する業種を「フーゾクエーギョー」と言ってしまうのは、厳密に言えば誤りなのです。

ついでに言うと、「風俗営業適正化法」を「風営法」と呼んでも必ずしも間違いとは言えませんが、「風適法(ふうてきほう)とするのが望ましい」と述べる法学者もいます。というのも、「風営法」は、「風俗営業は取り締まるべき業種」という思想に基づく「風俗営業取締法(本当はもっと長ったらしい名称)」だったころからの略称ですが、1984年の法改正により、新法は「風俗営業は文化として適正な繁栄がなされるべきである」という思想に変わり、法律名も「風俗営業適正化法」となったという経緯があるからです。そういうわけで、拙ブログでは原則として「風適法」の略称を用い、「風営法」の略称は、旧法もしくは旧法の時代を指す場合に限定して使用するものとします。

さて、話を本題に戻して、風営法(旧法)のころは、ゲームセンターは風俗営業ではありませんでした。それが、前述のとおり1984年に法改正が行われて風適法(新法)となった際に、ゲームセンターは新たな風俗営業とされました。


新法可決を報じるゲームマシン紙(1984年8月9日号外)。この画像よりずっと読み易い、無料公開されているアーカイブにリンクしてあるので、ぜひご参照されたし。

ゲームセンターが風俗営業とされた最大の理由は、1981年より始まったビデオゲーム機による賭博事犯の爆発的な増加が大きな社会問題となったことにあります(関連記事:ワタクシ的「ビデオポーカー」の変遷(4) 80年代の日本におけるビデオポーカーの暗黒時代)。

また、当時のゲーセンは終夜営業が当たり前だったので、年少者の深夜徘徊もかねがね問題視されていた中、家出した二人の女子中学生が深夜の盛り場で何者かに連れ去られ殺傷されるという事件(ウィキペディア「新宿歌舞伎町ディスコナンパ殺傷事件」参照)の被害者の足取りに深夜のゲームセンターが含まれていたことも改正の後押しとなっていたと記憶しています。

賭博犯罪や少年非行の取り締まりを行い、また風俗営業を監督管理する警察にとって、これらは看過しがたい事態でした。そこで、賭博に利用され得るゲーム機を扱うゲームセンターを警察の監督下に置くことを眼目として、風営法は風適法に改正されました。この法案を国会に提出したのは、立法府である国会ではなく、当時の中曽根内閣です。これは閣法とか内閣立法と呼ばれ、内閣法の第五条にその権利が明記されているんだそうです。

この風営法改正案が提出された時、アーケードゲーム業界は、直接の影響を受けるオペレーターだけでなく、ゲーム機メーカーも含んで、蜂の巣をつついたような大騒ぎとなりました。当然ながら業界を挙げての抵抗も試みられましたが、法案は可決され、これによってゲームセンターの営業には所轄の警察署の許可を要するようになるとともに、深夜の営業ができなくなりました。そうそう、言い忘れてましたが、「風俗営業」は、その第1号営業から第5号営業まで、どんな業種であろうと深夜営業はできないのです。

(次回「風俗第5号営業(ゲーセン)の要件と制約」につづく)