旅限無(りょげむ)

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欲しいけど要らないノーベル賞 其の壱

2008-10-15 16:29:27 | チベットもの
■嬉しさも感動も半分ぐらいだったノーベル賞の連続受賞を祝う記事と騒ぎでありました。ねんきん制度は崩壊で医療保険制度も継ぎ接ぎだらけ、デフレ経済は出口が見えないのに原油や原材料が投機の対象になって暴騰。国外では爆破テロが頻発するし、国内では「誰でもよい」殺人がまるで競争のように続くのですから、神の領域に踏み込むような高尚な素粒子論や生命体の神秘に感動する心の余裕は持てませんなあ。

■ダイナマイトという手軽な破壊道具を発明したノーベルは、大規模な土木工事用のダイナマイトで少し稼ぎ、欧州を中心に武力衝突の様相をがらりと変えた爆弾や砲弾で莫大な金額を稼いだ人ですから、人類の発展に尽くした業績に対して賞を与えるのは名誉と贖罪を求めての道楽だったとも言われています。子供の頃からの数学嫌いだったノーベルは数学者だけにはビタ一文やらない!と遺言したとかで、賞金額が雀の涙しか付かないフィールズ賞を数学者が作って身内で褒め合っております。

■ノーベルが発明したダイナマイトは建物や肉体をばらばらにしてしまう物でしたが、この世の中には恐ろしい毒物を合成してしまう化学者もいますし、まさかオゾン層を破壊して地上を紫外線と温暖化で焼くことになろうとは知らずにフロンを合成した科学者もおります。毎年、1万人の日本人を殺してしまう便利な自動車を発明した人もいるように、人類の進歩と発展のためだった発明や発見が、後々、人類を傷つけ殺害する道具に応用される皮肉な歴史は、他ならなぬノーベル賞の創設者が体現しているというわけですなあ。

■人類は原始的な農業生産を開始した時から、気候変動と伝染病と害虫に泣かされ続けました。消毒薬と殺虫剤が発明されてから収穫は安定し、化学肥料が工夫されてからは収量が増え、除草剤が開発されて農作業は劇的に楽になったそうです。少なくとも飢餓が原因となって殺しあう戦争は減りましたが、強力な薬剤の副産物として毒ガス兵器が作られ、医学が発展する裏側で細菌兵器が作られるという悲しい現実もありました。ですから、発明や発見というものは、手放しで喜んでばかりも居られないのであります。

■食糧問題を解決するために保存技術も重要で、乾燥と発酵の技術に缶詰が加わり、電気が操れるようになったら冷凍技術が大発展したわけです。さてさて、保存技術は地球の裏側から食糧を調達することを可能にしますから、地理的な距離も季節も無視した奇妙な食文化があちこちに生まれる時代となりまして、珍味も楽しめるし驚くほど安い食糧を食べ過ぎることも可能になりました。怪しげなダイエット商売が流行する国には、必ず危険な食品が出回っているとか……。

■毒入りイチコロ餃子を製造した国から、またまた危険な冷凍食品が流れ込んで来たそうですなあ。第一報によりますと東京都八王子市で販売されていた冷凍インゲンから、基準の3万4500倍という既に食品ではなく立派な「兵器」として売買しても良さそうな濃度の有機リン系殺虫剤「ジクロルボス」が検出されたとか……。不運にも毒入り袋を引き当ててしまった被害者の方は、袋を開封した瞬間に強い異臭を感じ、恐る恐る極少量を口に含んで吐き出したとのお話ですから、混入していたのが無味無臭の「兵器」でなくて幸いでしたなあ。「メタミドホス」という舌を噛みそうな薬品名を覚えた日本人は、またまた「ジクロルボス」を覚えました。でも、毒入りイチコロ餃子にも同じ殺虫剤が僅かながら入っていたそうですから、ちょっとした匙加減で食品と兵器が分かれるというわけですなあ。

■物騒な兵器に応用される危険のある発明や発見に対する賞とは別に、ノーベル平和賞という戦争や大量殺戮を防ぐ仕事をした人に与えられる賞があります。もしも、便利な農薬や殺虫剤を人間に対して完全に無毒化する技術を開発した人がいれば、それも平和賞の対象になるかも?チャイナ出身者の中にも立派にノーベル平和賞を授与された人がおりましたなあ。ダライ・ラマ14世です。普通なら自国民の受賞は大いに喜ばれ賞讃されるものなのですが、何故か北京政府は激怒!ノーベル賞に対しても選考委員会に対しても悪口雑言の限りを尽くして非難したのでした。平和が嫌いなわけでもないようなのですが……。

史上最悪の大統領 其の六

2008-10-15 03:48:32 | 外交・情勢(アメリカ)
■次はチャック・ダウンズ氏の意見です。

テロ支援国家指定解除はきわめて無謀な措置であり、その根拠とされた検証関連の枠組みも含めて論理にあまりに反している。国務省主導の最近のブッシュ政権はとにかく外交面、とくに北朝鮮核問題に関して何かを成し遂げたという「成果」を誇りたいあまり、譲歩や妥協を重ね、北朝鮮にいかに最小限でも、何かを受け入れさせることに腐心してきた。今回の合意でもブッシュ政権は北朝鮮の核兵器開発計画の全体像を無視している。

■自由の国アメリカでは、北朝鮮の将軍様を徹底的にからかった人形劇の映画さえ作られたことがありましたなあ。まあ、それ以上にブッシュ大統領を笑い者にする手作りアニメがネット上にたくさん現われもしたのですから、両首脳が一致協力して実現させる交渉事が悪い冗談になるのも当然なのかも知れません。イラクの泥沼とバブル崩壊の深い傷跡だけを残して、何もしないで愚かな大統領として大人しく任期を終えてくれれば良かったのですが、大統領が変わるとごっそり入れ替わる政府のスタッフにとって再就職を有利にする「業績」が必要なのだそうで、ヒル代表などは何の功績も残さないと路頭に迷うのは確実だと言われていたようですから、日本の天下りよりもタチが悪い保身目的の外交交渉が進められたという事なのでしょう。


どこにどのような核物質があり、核ミサイルが配備されているのか、という諸点を把握しているとは思えない。……北朝鮮はいまも韓国にスパイや刺客を送りこみ、脱北者の暗殺をはからせている。これだけでもテロ支援国家の要件は十二分だ。しかも金正日総書記の消息も明確ではない。こんな時期に米国政府が貴重な同盟国・日本の拉致事件の解決努力を痛めつける形で、「北朝鮮はテロ国家ではない」という手続きをとることはあまりに不適切だといえる。今回の検証枠組みは、基本的には米側が北朝鮮の言辞に依存することが前提となっている。北朝鮮の言葉がいかに現実の行動とはかけ離れているか、これまでの実際の行動や考察により、あまりに明白だろう。
10月13日 産経新聞

■日本政府・首相の言葉よりも北朝鮮の脅しの方が米国に対する影響力が強いのなら、戦後の日本を支えて来た外交と憲法の基盤が揺らぐことになります。憲法前文にあるように日本国民は(進駐軍の圧力の有無はともかく)「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」のですから、「公正と信義」に信頼が置けない国に対しては別の原理を用意しなければならなかったわけですが、その時期が来たのかも知れませんなあ。また、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」のですから、平和を破壊して「専制と隷従」を基本構造として「圧迫と偏狭」だけで国民を支配して苦しめているような国に対して「名誉ある地位を占める」ための実効性ある方法を考えねばなりません。

■日本国憲法第18条には「刑罰として課される場合を除き、奴隷のように扱われたり、苦しい労働を強制される事はない 」と書かれているのに、北朝鮮から脱出した人や無事に帰国した拉致被害者の皆さんからの証言によれば、拉致被害者は「奴隷のように扱われ」て「苦しい労働を強制される」人も多いのは明らかなのですから、「憲法を守れ!」と熱心に活動している人達にとって、拉致犯罪の解決は非常に重要なはずなのですが……。拉致問題を憲法問題として考えるような動きは見られないのは残念です。

史上最悪の大統領 其の伍

2008-10-15 03:47:23 | 外交・情勢(アメリカ)
■明らかな失敗と、不可抗力による不運とは明確に区別しなければなりません。それは外交政策に関しても同じでしょう。産経新聞が北朝鮮問題に深く関わった米国人に対する重要なインタヴューを行ったそうです。

米国のブッシュ政権が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除したことに対し、米国政府でかつて北朝鮮問題を担当してきた専門家2人が11日、産経新聞とのインタビューで、いずれもこの解除措置やその根拠とされる米朝間の検証をめぐる合意が不適切だとして反対する見解を明らかにした。

■インタヴューに答えたのは、2001年から第一期ブッシュ政権で国務省東アジア太平洋局顧問として北朝鮮の核問題などを担当した「核兵器保有認知に等しい」デービッド・アッシャー氏と、父ブッシュ政権と子ブッシュ政権の国防総省、国務省で北朝鮮核開発を含む朝鮮半島問題を担当チャック・ダウンズ氏です。最初はアッシャー氏の発言。


今回のテロ支援国家指定解除……の合意がご都合主義であり効果がない。北朝鮮の核兵器開発に対し米国や日本が求めるのは、核物質の兵器化や核弾頭ミサイルの配備、核兵器や関連技術の拡散の阻止のはずだが、今回の合意はそのいずれも阻止できず、北朝鮮を事実上の核兵器保有国として認知してしまうことに等しい。兵器化や核ミサイル配備に対する予防や阻止の措置も「検証の枠組み」に含まれていないのだ。

■最近、韓国からの報道として北朝鮮が核兵器の小型化にほぼ成功したとの話がありましたが、日本列島のほぼ全域を射程内に収めている中距離ミサイルにいよいよ核弾頭が載るかも知れません。その時、日本にはどんな交渉の手段と材料が有るのか?考えるのも恐ろしい話です。小泉首相の時代には異様なほど友好ムードが高かったブッシュ政権が、最後に残した置き土産が北朝鮮に対する国際社会への招待状になるとは、小泉首相がプレスリーの物真似をしていた時には誰も想像していませんでした。


北朝鮮は現在も間違いなく主要な「テロ支援国家」だといえる。シリアへの核兵器開発の技術や施設の拡散だけでなく、イランの「イスラム革命防衛隊」への軍事支援……。その北朝鮮の指定を解除することは日本にとって二重の危険を生むだろう。第1は米朝間の効果のない「核検証枠組み」により、北朝鮮が日本に照準を合わせて核弾頭装着のミサイルの配備を着実に進めることであり、第2は北朝鮮が日本人拉致問題の解決に努める動機を失うことだ。……

■一時は福田ホイホイ首相が支持率アップのために、平壌を電撃訪問する!などという週刊誌の記事も出ましたが、「あなたとは違うんです」が信条の気位だけは高い福田さんが小泉さんの二番煎じでしかないパフォーマンスをやるはずもありません。しかし、これ以降の日本の総理大臣には新鮮味のないパフォーマンスでさえも試みる機会が無くなってしまいましたぞ。遠回りではあっても憲法改正と日米安保の見直しを粛々と進めて行けば、何らかの打開策も出て来るかも知れませんが……。

それとこれとは話が別? 其の壱

2008-10-15 01:43:40 | マスメディア
■やっと原油価格の高騰が一段落しそうな気配なのは良い知らせですが、食糧価格の高止まりは続きそうなのは悪い話です。今回の金融危機で世界中の需要が減って工業原料が値下がりするとの予測もありますが、熱に浮かされたように発展し始めた新興国の生活水準が急転直下で貧困国家に逆戻りするとも思えません。必要なエネルギーと食糧と生活用品は、何が何でも必要なのですから更に安い人件費と土地代を求めて生産業者は新しい生産拠点を作って不景気でも売れる製品を必死で作るのではないでしょうか?

■原油価格にしても産油国は減産に転じて価格を維持しようとし始めているようですから、漁師さん達が船を出せない!という酷い状態が解消されるには、やはり国の対策が必要かも知れませんなあ。マスコミの中には価格に転嫁できない市場システムが悪いという論調で報道している所が多いようです。他の業種でも原料費の高騰を価格に上乗せ出来ず、歯を食いしばって更なるコスト削減に努めている方が多いので、流通経路を簡素化し販売店は価格を上げるべきだという主張もあるようです。「失われた10年」一説には15年とも言いますが、奇妙な不況が続く日本では特殊なブランド品以外、安い物しか売れなくなってしまいました。

■まるで正価など無いような安売り競争が続いているようですが、その厳しい競争の中で濡れ手に粟のボロ儲けを企む悪い奴が現れると、口に入れるのも命懸けとなるような危険な食料品が出回ったりしますから、安ければ良いというのも考え物です。


製紙各社が新聞用紙の追加値上げを一斉に打ち出している。今春に28年ぶりとなる値上げが実施されたばかりだが、高騰する原料古紙や燃料価格の転嫁を理由に、契約年度途中での異例の再要請に踏み切った。ただ、読者と広告離れに悩む新聞業界にコストアップの受け入れ余地は少なく、交渉は難航が予想される。

■日本中で「勿体無い」精神が広がり、リサイクル運動が盛んになっている一方で、ペットボトルや新聞紙の束が海外に流出して日本国内でも再利用は困難になっているという話があります。自治体と古紙業者が争奪戦を繰り広げている場所も有るとか……。特に紙についてはIT時代は「ペーパーレス」になるのだと喧伝されたものですが、パソコンや多機能コピー機をせっせと導入した企業ほど、紙の消費量が格段に増えた!などという変な話もありましたなあ。そもそも本当にペーパーレスになったら紙の新聞と雑誌や書籍はどんどん姿を消すはずなのですが……。


「新聞用紙事業はどこも赤字の状況。追加値上げを何としてもお願いしたい」丸住製紙(愛媛県四国中央市)の営業担当者は、11月から約17%の値上げを新聞社に打診……。原料の約8割を占める新聞古紙価格は中国向けの輸出増加により、過去2年で2倍弱に高騰し、10月に入っても高止まりしたまま。燃料には年度契約の石炭を使うため、原油価格下落の恩恵もない。新聞用紙は生産量の4割を占めるだけに、値上げの成否が業績を大きく左右する。

■生産現場のコストは正当に上乗せされねばならないという論調で記事を書いている新聞社が、製紙業者の苦境にどう答えるのか?リサイクル運動の盛り上がりを考えれば、古紙価格が高騰する原因として新聞販売量の減少で古紙の供給量が減っていることが考えられます。悪循環です。


大王製紙、中越パルプ工業も同様の値上げを打ち出したほか、王子製紙は10月から17%、日本製紙は来年1月からの13%の値上げを要請し始めた。日本製紙は昨秋、「新聞用紙だけを特別扱いできない」(幹部)と、今年1月1日から約7%の値上げを新聞各社に要請した。だが交渉はもつれ、4月に約5%の値上げで妥結した。他社も、ほぼ同様の交渉結果となった。

■新聞社も商売ですから原料費を安く抑えたいのは当然です。しかし、中には何か勘違いしているような高い給与や各種の無駄で贅沢な経費が湯水の如く使われている新聞社があるとも聞きますなあ。


……国内産業界全体の売上高経常利益率は6・3%だったが、製紙業界は2・7%……。日本製紙連合会の芳賀義雄会長(日本製紙社長)は、「原材料価格の転嫁は引き続き必要」という。製紙各社は今夏、コピー用紙などに使われる主力の印刷情報用紙で15%の追加値上げを実施したが、新聞用紙でも値上げを実現したい考えだ。一方、日本新聞協会によると、18年度の国内新聞業界の総売上高は前年比4%減の2兆3325億円。収入の半分を占める販売は低迷し、3割を占める広告はさらに悪化している。新聞大手幹部は「用紙の追加値上げは利益を吹き飛ばし、とても飲めない。読者に対する発行責任が貫けなくなる」と、用紙値上げの影響を懸念している。
2008年10月6日 産経ニュース

■「読者に対する発行責任」という言葉は美しくも頼もしい響きがありますが、時々、強引な勧誘や押し売りで事件が起こるのも事実です。新聞を売っているのかオマケを売っているのか分からないような強引なセールスをやって世界一の発行部数を達成した会社もあったそうな……。テレビもラジオも新聞社の子会社か系列企業ですから、こうした製紙業界の苦境が電波に乗ることはほとんど無いのでしょうなあ。「発行責任」には公正で正確な報道も含まれているはずなのですが……。

ねんきん特別便 其の弐

2008-10-15 00:59:49 | 政治
■改竄されて無断で減額された年金から天引きされては生活が成り立たない!と悲痛な声が聞こえるのですから、いつまでも高齢者が大人しいと思っては行けませんぞ。本当は早く解散総選挙を実施して、与野党ともに社保庁への悪口雑言を競うパフォーマンスでガス抜きしておくべきではないでしょうか?舛添大臣を筆頭に厚労相経験者や歴代元総理は天に唾することになりますから、応援演説には参加できませんが……。

約144万件に該当するのは、社会保険庁のコンピューター記録がオンライン化された86年以降で、(1)標準報酬月額を引き下げた日か翌日に、加入者の脱退処理が行われた15万6000件(2)標準報酬月額が5等級(5万円)以上引き下げられた75万件(3)標準報酬月額が6カ月以上もさかのぼって引き下げられた53万3000件のいずれかの記録の持ち主。

■本当に「86年以降」だけなのか?脱退処理されなかった被害者は居ないのか?5等級より引き下げ幅が少ない処理はなかったのか?遡って引き下げられたのが6ヶ月未満の場合は?該当する犯罪が行われた期間が20年間!指示したり責任者だった者は悠々自適の高額年金生活をしているのでしょうなあ。それこそ「ねんきん特別者」でしょう。


……受給者には、来年後半から標準報酬月額を記載した通知に、現役の加入者には来年4月から標準報酬月額を載せて送る「ねんきん定期便」に、それぞれ注意書きを同封する。144万人中にどれだけ受給者が含まれているかは「不明」(社保庁)という。
10月14日 毎日新聞

■こういう場合の「不明」というのは実に無気味ですなあ。不正処理が行われた期間にはバブル崩壊と「失われた10年」が丸ごと含まれていますから、倒産したり吸収合併されて既に実体の無い会社は数え切れません。今度こそ20年前の給与明細を保存していなければアウト!になる可能性が高そうです。何かと言うと「過去の問題を掘り返すより、受給者のために善後処理を優先する」などという便利な逃げ口上が使われますが、正しいデータが完全に復元される望みが絶たれた後は、責任追及と原因解明が政治の最優先課題になるのではないでしょうか?政府と与党は一体なのだそうですから、結果責任でやはり長期政権を担った政党は野に下るか解体でしょうなあ。
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ねんきん特別便 其の壱

2008-10-15 00:59:23 | 政治
■『ねんきん特別便』という膨大な数の封書が日本中の大半の家に届いているはずです。年賀状さえも売れなくて困っている郵便局は大喜びしているのかも知れませんが、受け取った人の中には慶んでいる人はほとんど居ないと思われます。もう顔を見るのも嫌だ!と言う人が激増中の口だけ大臣の舛添要一さんの毛筆を使った署名が印刷されているのですが、名前を見るのも嫌だ!という人も多いのではないでしょうか?当初よりも親切に改善されたと言われる中身もおかしな物ですなあ。
 
■「この度の年金記録をめぐる問題について、心よりお詫び申し上げます。一刻も早く皆様の年金記録を正しいものとするよう、最善を尽くしてまいります。」謝罪らしい文言はたったこれだけです。「年金記録をめぐる問題」というのは、一体、どの問題のことなのでしょうなあ?ちんたらパソコンに入力したデータが出鱈目だったことなのか?入力内容をまったく確認せずに唯一の基本データとなる紙台帳を廃棄したことなのか?いろいろと飛ばして「最後の1人まで」と安倍元首相が約束した件なのか?「問題」が多過ぎて判断できません。

■数ある年金問題の中で「記録をめぐる問題」と書かれていますし、「正しいものとする」のが目的だと正直に書いているのですから、この国には正しい基礎データは存在しておらず、復元再構成するには加入者の記憶だけが唯一の頼りだということです。記録に欠陥が有るか?と、人によっては半世紀以上も前の記憶を必死に呼び戻さねばならないのですが、その点に関しては「お詫び」の文言はありません。

■そもそも、「記録問題」が発生した原因、主犯格の責任者の名前が「モレている」のは不誠実です。現職の厚労相だけの名前で済まされるような「お詫び」では不足です。何が何でも返答して送り返せ!と返信用封筒を同封して送って寄こしたわりには、不明な点や疑問があったら「ねんきん特別便専用ダイヤル」に電話をすれば「市内通話の料金」で相談できるのだそうです。涙が出るほど嬉しい!と思う国民は1人も居ないでしょうなあ。一体、この電話番号は何万回線が共有しているのでしょう?相談を受けるために何万人の要員が配置されているのでしょう?

■何度掛けても話中で、結局は前を通るのも腹が立つ「社会保険事務所」に出向かねばならない事になっていて、ご親切に「年金相談センター」でも相談に乗って頂けるとのことです。これから寒くなるというのに……。腹を立てて寒風に当たると風邪を引きやすいとか……。押入れの奥やら机の引き出しの中やら、あるいは物置や納戸の隅から古い日記や手紙類を探し出さねば無駄足になるのは分かっています。最初は何十年前でも「給与明細」が無ければダメだ!と言っていましたなあ。「年代当て連想クイズ」のマニュアルも作られたとか……。

■「ねんきん特別便」の一番の読みどころは3頁の右下の囲みでしょう。曰く「今回のお知らせでは、厚生年金などの標準報酬月額はお示しできていませんので……専用ダイヤルなどにお問い合わせください」。この特別便の文案が決まった時点で「標準報酬月額」の改竄という重大な犯罪行為は無い!という話になっていたはずですなあ。それが野党の追及と元職員の告発で追い詰められた社会保険庁は、「1件」の改竄を発見!したのでしたが、それが数日で60数万件に増え、更にそれも倍になったのでした。従って、この特別便を発想した時には「ねんきん特別便専用ダイヤル」で受ける問い合わせに対して、どんな受け答えをする心算だったのかが分かるというわけです。


厚生年金保険料の算定基準となる標準報酬月額(給与水準)の改ざん問題で、改ざんが疑われる年金記録延べ約144万件について、舛添要一厚生労働相は14日、記録の持ち主全員を対象に、注意を促す通知を来年度から出すと明らかにした。同日の参議院予算委員会で、直嶋正行議員(民主)の質問に答えた。改ざんが疑われる場合は、「社会保険事務所に連絡を取ってほしい」(厚生労働省)としている。また、……記録の改ざんが疑われ、既に年金を受給する約2万人が対象の戸別訪問を16日から始めると述べた。社会保険庁職員が自宅を訪れて記録を調査、修正する。

■自治労という昔の国鉄みたいな組織に牛耳られているサボリの専門家が、資料の調査・窓口業務・電話応対に加えて今度は「戸別訪問」もするわけですなあ。奇跡的に残存している基本台帳とのデータ照合作業と同様に、この戸別訪問も「エンドレス」になりそうですなあ。それに闇キン業者の取立てみたいに、本人に会えるまで何度でも訪問するような執念は期待できませんから、「留守でした」で処理される被害者も出て来そうです。他に担当部署が無いから仕方がないのですが、既に誰も信頼していない社会保険事務所にしか頼るものが無い!今度こそ悲惨な事件が起こりそうな気がします。