旅限無(りょげむ)

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史上最悪の大統領 其の壱拾参

2008-10-30 15:42:43 | 外交・情勢(アメリカ)
文書は対米外交勝利の原因はミサイル発射(2006年7月)と核実験(同年10月)と明記。ミサイル発射、核実験ともに米国の金融制裁への対応(報復)だったとしている。さらに“核とミサイル戦術”により「ブッシュ政権は朝鮮と核対決か直接対話かの二者択一を迫られ、結局みずから直接対話を提起せざるをえなかった」と成果を強調。今後の見通しを、「(朝鮮戦争の)終戦宣言の契機となるだろう」と述べ、困窮する経済への影響について、「法的措置(テロ支援国家指定解除と敵国通商法の適用終了)で今後は米国をはじめ世界のすべての国が貿易と合弁、金融取引を行うようになり、世界銀行やアジア開発銀行などの国際金融機関からの融資も受ける道が開かれることになる」とバラ色の夢を語っている。

■確かに北朝鮮は地下資源に恵まれていると言われていますし、社会インフラの整備事業ともなれば、本格的に始まったら数十年間も続くでしょう。国際金融機関から融資を受けて、地下資源を開発して輸出し、外国企業を誘致しながら国内事業を立ち上げて産業を育成して行ければ、韓国が世界を驚かせた「漢江の奇跡」を髣髴とさせることになるのでしょうが……。外交交渉の切り札が原爆モドキと弾道ミサイルで、国内はスターリン方式の監視密告制度が今でも機能している一方で、国民の健康と教育に大いなる不安があるような状態で、バラ色の夢が実現するのでしょうか?

■「核の拡散」を防ぐという一点で譲歩した米国は、決して世界の賞讃を受けることは無さそうですし、ブッシュ大統領やライス国務長官がノーベル平和賞の候補になる気配もありません。一時はレアメタルを求めて欧米から美味しい投資話も舞い込んでいたそうですが、サブプライム問題から始まった金融危機で世界中の消費が落ち、生産が減り、何よりも資金がリスクを嫌うようになってしまいましたから、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の蛮勇を奮って北朝鮮に乗り込む企業はぱったり姿を消すのではないでしょうか?

■「金持ち喧嘩せず」という下世話な諺がありますから、少しはバラ色の皮算用が実現して、「先軍政治」を転換して国民生活を第一に考える国になってくれれば、カネしか交渉材料の無い日本としても、たとえ川砂利などの利権目当てであろうとも、政治家が動いて拉致問題の解決に近づけるかも?でも、軍部を押さえ込んだら手が着けられない混乱が起きる可能性の方が高そうですなあ。


対日政策に関しては、6月時点の米朝接近で「日本は孤立した」し、拉致問題の再調査に関する日朝協議を「米朝関係の急速な進展により6カ国協議で完全に孤立し強硬策をこれ以上続けられなくなった日本政府は、わが国に制裁解除の意志を示しながら対話を求めてきた」などと対米交渉の成功の成果と位置づけた。

■言いたい放題ですが、ほとんどが当たっている事なのが悔しい……。土壇場で拉致問題の解決が無ければ6カ国協議で何が決まろうが、日本政府は参加できない!という原則を守り通している限りは、たとえ米国が腰砕けになっても、日本には打つ手が残されていることになります。少なくとも制裁解除に関して「不快感」を示した事は記憶されるでしょうから、踏ん張りどころでしょうなあ。


文書発送後、米国はいったん解除を棚上げにしたが、10月11日(米国時間)に解除を発表、北朝鮮は核施設再稼働に向けた揺さぶり戦術で、任期終了間近のブッシュ政権から「解除」をもぎ取る「勝利」を収めたことになる。
10月15日 産経新聞

■米国と韓国との間では、あれこれとコード番号が付いた仮想プロジェクトが話し合われ、中には実行に移されている物もあるようです。金融危機の後始末を日本に押し付けようとする悪巧みが話し合われているという噂もあり、韓国経済が危機的状況になっている時でもあります。盗っ人に追い銭みたいな手打ちの経済援助を日本に求められるような風が吹き出す前に、ちゃんと「その時」に備えておくべきでしょうなあ。

■既に本国ではオリバー・ストーンの監督で伝記映画?まで封切られ、ニュース・レポーター役で出演した本職もキャスターという女性が自宅で暴漢に襲われたり、CGを駆使した暗殺映画が先行して公開されてしまうというブッシュ大統領です。もしも自伝が出たなら、「不適切な関係」に期待して大いに売れたクリントン大統領の厚いだけの自伝より、ずっと歴史的な意義のある裏話を期待して手に取ることになるでしょう。最初からゴースト・ライターの作品だと分かり切っていても、任期中に何を考えていたのかは知りたいですなあ。何かは考えていたはずですから……。
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史上最悪の大統領 其の壱拾弐

2008-10-30 15:42:20 | 外交・情勢(アメリカ)
■テロ支援国家指定の解除に関する報道がぱったり無くなって半月、北朝鮮関連の報道は将軍様の健康状態に集中しております。日本では我が事のように、連日、オバマ候補が有利!と変な期待を臭わせるような報道が続いているようですが、韓国筋からは大統領選挙の日程に合わせて物騒な攪乱戦術が使われる可能性が指摘されています。破れかぶれになって軍部が暴発するのではないか?と心配している専門家は、常に核兵器が使われることを恐れているようです。何処に向かってミサイルが発射されるにせよ、日本のイージス艦や地対空ミサイルがちゃんと対応できるのか?テロ支援国家の指定解除と同様に、日本が何も知らない所で米国がまたトンデモない決断をしてしまうかも知れません。

■平和憲法の精神で北朝鮮の暴発が止まり、崩壊する独裁国家から逃げ出す大量の難民を救済できれば良いのですが、金融パニックの先が見えない時期に日本が手も足も出せない軍事パニックが近所で起こるのは実に困ったことです。


ブッシュ米政権による北朝鮮へのテロ支援国家指定解除を、北朝鮮が「金正日将軍さまに米国政治史上最も好戦的で反動的な大統領ブッシュがひざを屈した降伏宣言」と位置付け、日朝関係については「米朝が急接近したから日本は孤立、対話を求めた」などとみていることが、日本の朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)幹部向けに送った文書で分かった。

■餓死者が200万人!と聞いたから、人道的支援で食糧を送ってやれば、「偉大なる将軍様に対する贈り物」だと言い張ってお礼の一つも言わずに居丈高に受け取る国ですから、理由はどうあれ米国政府が妥協したとなれば、国内向けの宣伝には絶好の材料であります。でも、こんな虚報に大喜びする人は軍部以外には居なかったのではないでしょうか?


この文書は6月時点で、ブッシュ大統領が指定解除の方針を記者会見で発表した後、北朝鮮から総連幹部に送られた活動指針「新しい転換的局面を迎えた朝鮮半島情勢について 主体97(2008)年7月」(A4全25ページ)。専門家によると「朝鮮労働党・中央委員会宣伝部が書き、定期的に総連幹部に送っている外交指針」という。……全編が「指定解除」に関する分析と今後の見通しで、北朝鮮の対米外交の考え方が解説されている。

■夏の段階で指定解除は既定路線になっていたようですなあ。知らなかったのは日本政府だけ?ブッシュ大統領の発言は、何度か変わって真意が読めなかったのですが、裏側では着々と交渉が進められていたのでしょう。


「あの《悪の枢軸》の烙印を押した大統領が、朝早く起きてホワイトハウスで朝鮮への重要経済制裁解除を宣言した意味は大きい」「米国の敵対政策転換の戦略目標に、軍事的抑制力(核開発)を片時も怠らずに強化してきた偉大な金将軍の超強硬策の原則と、対話には対話で応じるとの外交術の成果」などと述べ、「敬愛する金正日将軍さまの偉大な先軍領導で(朝鮮戦争以来)60年の米国による敵対政策をついに転換させた」と勝利の賛歌だ。この時点で北朝鮮は米政府が8月11日(議会通告期間)後の解除発効を確信していたことがうかがえる。また文書は金総書記の決裁を受けているとみられ、健康危機説の直前の“指令書”となった。

■核兵器さえ有れば米国は何処までも妥協する、そんな恐ろしいメッセージが世界中の物騒な連中に伝わって広まって行くのが最も困るのですが、国民を餓死させ偽札や麻薬で外貨を稼いで推し進めた核兵器の開発を、このように自画自賛されては米国政府も立場がありませんなあ。まあ、日本政府には最初から面子も立場も無いようなものですが……。

史上最悪の大統領 其の壱拾壱

2008-10-30 13:53:22 | 外交・情勢(アメリカ)
■隣国の北朝鮮では孝行息子がフランスで見つけた脳外科医を父親の元に送り込んだとの報道。フランス語を含めて数ヶ国語を操ると言われているITと密輸と密航のプロのお手並みは大したもののようであります。極貧の小国でも特権支配階級や将軍様であれば、今の日本でも珍しくなった「往診」を頼めます。それも欧州からの出張ですからご苦労様な話です。断片的に流れ出す噂によると脳内出血で半身に麻痺が残っている可能性が高いようですが、わざわざフランスから外科医を呼ばねばならないという事は、北朝鮮には脳外科医は存在しないことの証明なのでしょう。建国以来、食糧不足が解消したこともない国ですから、先端医療など期待出来ないのは分かっているのですが、将軍様でなければ脳外科手術も受けられない国というのは、何とも恐ろしい。

■世界は金融危機と世界恐慌の不安と心配が先行して、北朝鮮の原爆モドキやミサイルの心配などしている暇も余裕もありません。あの国は無視されるのが大嫌いな体質を持っているので、そろそろ注目を引くために三平の娘みたいに騒動を起こすかも知れませんぞ。話は10月11日に戻ります。


中川昭一財務・金融相は11日、先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)終了後、ホワイトハウスでライス米国務長官と会い、米政府による北朝鮮のテロ支援国指定解除の動きについて「拉致被害者にとっては非常にショッキングなことで、われわれとしては認めることはできない」との考えを伝えた。……これに対し長官は「(解除は)あくまで形式的な問題。全く意味のないことだ」などと説明した上で、指定解除する際には「日本に対して大統領からメッセージを出させる」と語ったという。 
10月11日 時事通信

■自国が震源地の金融危機に関する会議を開いている時に、同盟国に相談もせずに勝手にテロ支援国家の指定を解除すると何かのツイデみたいに通告する神経が分かりません。この件はあっと言う間に忘れ去られた模様で、日本のマスコミも被害者家族の皆さんが発した悲痛な落胆の声を伝えただけで、その後はまったく米国の裏切りに関する報道が無くなってしまいました。世界中の金融機関と預金者・投資家に対する裏切りの方が遥かに大問題だからなのでしょうが、新しい大統領が登場しても、北朝鮮に対するテロ国家指定が再び復活するとも思えません。

■拉致事件の被害国として、日本の動きは世界の常識から見れば到って緩慢で、さほど怒っているようにも見えないでしょう。莫大な予算を食っている自衛隊が目立った動きをするわけでもなく、日米韓の合同軍事演習が日本海の東よりで大々的に実施されることもなく、何が何でも拉致された国民を取り戻す!という気概は見受けられません。憲法や関連する法律が足枷になるのなら、国会はさっさと改正の動きを見せるべきでしたが、そうした動きは今になっても見られませんなあ。

■北朝鮮を相手に穏便な話し合いで何かを解決しようなどと日本政府が考えているのなら、間も無く起こる北朝鮮での大きな変化に対しても茫然自失、米国任せの恥ずかしい姿を晒してしまいそうです。被害者家族の横田さん一家をホワイトハウスに招き入れた時のブッシュ大統領は、当時の小泉プレスリー首相よりはずっと親身になって懸念を表明して元気付けていた印象がありましたが、所詮は他国の問題ですから米軍が救出に動くことなど最初から期待できませんでした。

■テロ支援国家の指定が解除されたら、北朝鮮が突如として飼い猫みたいに大人しくなると思ったら大間違い。


北朝鮮が黄海の北方限界線(NLL)近くの海上で繰り返し「危機指数」を高めており、韓国軍当局は北朝鮮軍の動向を注視している。……12日、「北朝鮮が先月中旬と下旬に白リョン島上方の海上で、警備艇の実射撃訓練と仮想対地攻撃訓練を実施したものと承知している」……。訓練には西海艦隊司令部所属の8戦隊の警備艇数隻が動員されたと伝えられる。……北朝鮮は今月7日に黄海上空で空対艦ミサイル2発を実験発射し、9日には海軍司令部報道官の談話として、韓国の艦艇が北朝鮮領海を侵犯したことで「海上衝突が起き得る危機一髪の事態がつくられた」と主張した。北朝鮮警備艇のNLL侵犯回数も今年はすでに7回を数える。……

■指定解除が決定された直接の原因は原爆モドキの実験を再開する動きが見られたことだと言われていますが、全面衝突に発展する陸上の38度線は避けながら、海上での小競り合いを演じて米国を揺さぶり続けていたのです。韓国の新大統領が大きく支持率を下げているのも北朝鮮にとっては追い風でしょうし、日本が目を覚まさないでいてくれるのも大助かりに違いありません。


韓国軍関係者は、北朝鮮海軍司令部が談話で、9月27日に延坪島と大青島近くで戦闘艦船が砲弾を打つ挑発行為があったと主張したことについて、当時、海上で韓国海軍艦艇の射撃訓練はなかったとした。その上で「黄海で起こっている一連の行為を注視している」と述べた。
10月12日 YONHAP NEWS

■「正当防衛」の狂言を演出するのは謀略の基本でしょうから、米国が指定解除に動かなければ、もっと危ない狂言を準備していると思わせて、イラクでの大失敗で身動きが取れない任期切れ間近のブッシュ政権を追い詰めて行ったもののようです。指定解除に到る経緯には、なかなか複雑な情報の錯綜があったとか……。