旅限無(りょげむ)

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教育基本法改正の年 其の参

2006-12-29 11:18:30 | 教育


1995年、日教組が文部省と協調路線に転換。
2000年、「教育改革国民会議」が『基本法』見直しを提言。
2003年、「中央教育審議会」が『基本法』見直しを答申。
2004年、「教育基本法改正に関する協議会」立ち上げ。
2006年4月、『基本法改正案』を閣議決定。民主党が対案を提出。

■中曽根政権は、国鉄を解体することで関連していた強大な労働組合を消滅させましたが、教育行政分野は逆のコースを採ったようです。共産党と社会党左派が血で血を洗うイデオロギー闘争の舞台となった日教組を、ソ連崩壊を好機として骨抜きにして実質的に解体してから、『学習指導要領』という代用品を捨てて『基本法』という本丸の改訂に進んだというわけですなあ。


教職員が加入する組合の組織率が31年連続で低下し、10月1日現在で46.2%(前年比1.3ポイント)になったことが18日、文科省が公表した調査でわかった。……最大の日本教職員組合は組織率が前年比0.7ポイント減の28.8%。加入人数は29万6345人で、初めて30万人を割った。

■これは12月19日の朝日新聞に掲載された小さな小さな記事です。30万人を割った!とニュースになるのですから、日教組という組織の大きさが分かりますなあ。戦後の日本で大きな力を持った労働組合が、あちこちで根腐れを起して先細りのようです。そこには不透明な「組合費」の使途やら、政党との取引、企業との癒着など、恐ろしげな話が渦巻いているようですが、マスコミは余り取り上げないようです。教員組合の場合も、授業や学校での仕事を放り出して「政治活動」に熱中する組合員の存在を疑問視する教員が増えているとも言われているようです。ただでさえ馬鹿馬鹿しい書類書きと、困った親達への対応で、授業をやっている暇もない?ほどの人手不足に苦しんでいる現場を他の教員に押し付けて、正義の味方のような顔をして政治活動に奔走していれば、それは人気が無くなるのは当たり前の話でしょうなあ。


06年度の公立学校の教員採用試験の受験者数は16万1443人で、7年ぶりに減少したことが18日、文部科学省のまとめでわかった。前年度からの減少率は1.8%で、なかでも高校は7.7%と最大だった。文科省は「高校教員のなり手が多い一般大学の学生が、雇用状況の改善で民間企業に流れたためではないか」とみている。

■これも12月16日の朝日新聞の小さな記事です。仮に、文科省が言う通りに政府が発表している景気回復が本物で、それに反応して教員志望者が減ったにしても、優秀な人材が逃げ出している可能性は否定できますまい!就職先としての学校も一般企業と同じように大量の退職者が出る「2007年問題」を抱えているのですから、ここでの志望者減少は深刻なのではないでしょうか?そして、何よりも文科省に振り回される学校現場に嫌気が差して、大学で教職用の単位を掻き集めた生徒達が土壇場で受験しなくなっているとしたら、職場としての魅力を失った学校が見捨てられ始めたという事を示しているのかも知れませんぞ!こんな時に『教育基本法』が改正させたというわけであります。


 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。

■これが「前文」の冒頭です。これを、改正前の『基本法』と比較します。


 われわれは、さきに、日本国憲法を画定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力に俟つべきものである。

■改正された「前文」には、「憲法」への言及は有りません!現行の憲法を前提にしてはいないぞ!という意味ですが、素直にそれは書かれていませんなあ。姑息です。そして、肝腎の「教育」が出て来るのはずっと後の方になっています。

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