旅限無(りょげむ)

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飛ぶか?テポドン 其の壱

2009-03-27 09:55:08 | 外交・情勢(アジア)
■いよいよ北朝鮮が「人工衛星」を本気で打ち上げることになりそうです。迎撃ミサイルが当るか、当らないか?などという的外れな素人談義に話題を移している政府もマスコミも、日本という国では外交も軍事も重大な政治的な問題にする能力も資格も無いことを、改めて世界中に宣伝しているようであります。北朝鮮の将軍様におかれては、さぞやご満悦のことでありましょうなあ。一切の「報復手段」を持たない日本としては、現行の憲法に従って、米国の信義やら国際社会の理解やらに期待を懸けるしか政府の選択肢は無いようです。
 
■ウソばかり言っている北朝鮮に対する信頼は地に落ちて久しいわけでありますが、万が一にも本当に通信衛星の打ち上げだったら、ちょっと前に衛星の打ち上げに成功したイランとの違いを明らかにしなければならなくなるでしょうから、国連決議のグレーゾーンに付け込んで来る軍事と外交と犯罪で生き延びている国に対して、軍事も外交も実質的に放棄しているような国が対抗できるのか?米国のオバマ新政権の本音が徐々に見え始めた時ですから、よくよく腹を括っておかないとエライことになるかも?


……北朝鮮は「人工衛星打ち上げ」として国際法上の手続きを着実に進めており、ミサイルだったことを証明するのは至難の業となるからだ。そこが北朝鮮の狙いなだけに、政府は新たな理論武装を迫られている。政府が北朝鮮を批判する論拠は、平成18年6月にテポドン2号など弾道ミサイル7発の発射実験を行ったことにある。これを受け国連安保理は「弾道ミサイル開発に関するすべての活動を停止」を求める非難決議1695号を採択。同年10月には核実験を行ったため、さらに制裁決議1718号を採択し、「大量破壊兵器と弾道ミサイル計画の完全なる放棄」を求めた。……麻生太郎首相は「1718号の違反は明らかであり発射を見過ごすつもりはない」と表明、ミサイルが軌道をそれたら迎撃し、国連安保理に提起する考えを表明している。

■核関連技術ももミサイル技術も、平和目的なのか軍事目的なのかを明確に区分けするのは非常に難しいようです。それを承知の上で、国連安保理は大量破壊兵器に含まれる明らかに軍事目的の「弾道ミサイル」を北朝鮮が開発するのを止めて欲しい。と懇願しているのでしょう。純粋に平和目的でロケット開発をしている日本という国は、世界でも珍しい変わり者で、「唯一の被爆国」だから軍事的な核開発をしないという、これまた世にも珍しい理論を作り上げている国でもあります。もしも、三個目も日本で炸裂したとしても、やっぱり「唯一の被爆国」であり続けるわけですが……。

■少なくとも、何度か米国の標的にされた北朝鮮は、核実験らしい何かを地下トンネル内で実施したお蔭で、史上三発目の核攻撃を受ける可能性はほぼ零になっております。


……発射準備を米偵察衛星で確認されたことを受け、北朝鮮は2月24日、実験用通信衛星「光明星2号」をロケット「銀河2号」で打ち上げるとの談話を発表した。3月上旬に宇宙空間の利用原則を定めた宇宙条約と宇宙物体登録条約に加盟。12日には国際海事機関(IMO)と国際民間航空機関(ICAO)に対し、4月4~8日の打ち上げを通報、危険区域を設定した。日本の国土交通省にも3月21日、同様の通報を行った。……江畑謙介拓殖大客員教授は「北朝鮮は建前上は国際条約にすべて従っており、もし『平和的な宇宙活動だ』と主張すれば国際法違反とはいえない。『ミサイルとロケットは同じ構造であり、発射は地域の安定を損なう』との政府の理論だけで安保理で非難決議が通せるのか」と指摘する。

■一説には、人工衛星の打ち上げに不可欠な衛星を制御するために使用される電波の周波数を国際機関に届け出なければ、打ち上げに支障が出るはずなのに、北朝鮮はこれをせず電波による制御をしないで衛星を軌道に乗せようとしているのだそうですなあ。前回のテポドン騒ぎの時にも、発射した後になって「あれは人工衛星の打ち上げだった」と発表し、誰にも受信できない主体思想を讃える革命歌を軌道上から流し続けている!と発表したものでした。あの歌声は今も流れているのでしょうか?


……「領空」は慣例で地上約100キロ以下とされており、今回のミサイルは高度約1000キロに達するため、日本の東北地方の上空を通過しても「領空侵犯」とは言えないという。北朝鮮は平成10年8月のテポドン1号発射でも「衛星打ち上げ」を主張した。この際は危険区域の事前通報もしなかったが、政府が「弾道ミサイル発射の可能性が高い」と報告をまとめるのに2カ月を要し、安保理への提起は見送られた。

■たった一発のミサイルに、日本政府は絵に描いたように「翻弄」されたのでした。完全なる泥縄方式で、胆を冷やした日本政府は大急ぎで米国のミサイル迎撃技術の共同開発を始めると同時に、独自に北朝鮮を宇宙から監視する人工衛星の打ち上げを行ったのでした。その結果、海上自衛隊のイージス艦「あたご」はハワイ沖で立派に迎撃実験に成功し、凱旋帰国の祝福を受けるために東京湾に向かい漁船と衝突してしまいました。一方の監視衛星は、ロケットの打ち上げに失敗して貴重な目を持ち損なったのでした。まさか、どちらの事故(失態)も北朝鮮の工作員が仕掛けた謀略とも思えませんが……。


……イスラエルさえも衛星打ち上げの際はミサイル攻撃と誤認されぬように軌道投入に適さない西方向の地中海側に打ち上げている。しかも北朝鮮は「衛星が迎撃されれば日米韓へ正義の報復打撃戦を開始する」と表明している。これが「宇宙の平和利用」といえるのか。もし国連安保理が北朝鮮の主張を受け入れたならば、北朝鮮のミサイルがますます世界中に拡散する結果を招きかねない。
2009年3月26日 産経新聞

■一方的に「止めろ!止めろ!」と騒ぐより、逆に大いに応援してやる替りに、「西に向けて打ってね」と条件を付けるのは如何でしょう?国際世論の中でも、「人工衛星なら許しておやりよ」と言ってくれているのがチャイナとロシアという西の隣人たちなのですから、大いにお言葉に甘えて思い切り西に向けてぶっ放して頂ければ、仲間内で問題を処理して貰えるかも知れません。チャイナは人工衛星を狙い撃ち出来る技術を持っているのですから、気に入らない物が打ち上げられたら撃ち落してしまうことも可能でしょう。

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2 コメント

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神風が吹くといいのに。 (fanson)
2009-03-27 18:34:37
旅限無さま、こんにちは!
あらかじめチャイナ方面に飛ばされると、
今度はチャイナがその期に乗じて「迎撃」と銘打ち
核ミサイルを照準変えずに日本へ向けて撃ってきそうな気もいたします。
自分的には北が打ち上げた衛星とやらがうっかりチャイナ方面に吹き流されてあら大変、なんていうのを願ってはいるのですが…。
本当にアメリカが間に立つとろくな事がありません。

桜は咲いていますが、夜になると急に冷え込みます。
旅限無さまにおかれましても
お身体ご自愛くださいませ。
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fansonさんへ (旅限無)
2009-03-28 07:37:44
いらっしゃいませ。北朝鮮のミサイル問題は、6カ国協議に参加している国の頭上を飛び越えて、中東やアフリカにまでつながっている実にややこしい問題になっております。その6各国協議参加国にしても、米国発の金融危機でそれぞれの国の事情に若干の違いはあるにしても権力基盤が不安定になっております。何よりも大規模な侵攻作戦を実行できる経済的・精神的な余裕が無い!というのは北朝鮮の将軍様にとって、まことにオイシイ話でありましょうなあ。前回のテポドンは2段目の燃料を入れずに飛ばしたそうですが、今回は太平洋を横断できることを示そうと張り切っているのでしょうね。オバマの支持率がどれほど落下するやら……
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