■ノーベル平和賞を受ける際に行なったオバマ大統領のスピーチは欧州諸国では不評だったようですが、もしかしたら、何らかのテロ情報を聞いたばかりだった大統領が核兵器の削減と対テロ戦争とを区別しておかねばならなかったのかも知れません。
オバマ米大統領は7日、昨年末のデルタ航空機爆破未遂事件を受け、テロ監視体制の改善策を発表し、関係10機関に指示した。情報分析の強化や航空機への搭乗拒否リストの拡充などが柱。大統領はテロ防止体制の機能不全に関し「最終的な責任は私にある」と語った。改善策として大統領は
(1)特定の情報当局に優先度が高いテロ情報の追跡を主導させる
(2)情報分析リポートを迅速、広範囲に配布する
(3)テロリスト監視リストに登録する基準を緩和する-などを挙げた。
■9・11テロが発生した時に米国の諜報機関がまったく機能していなかったことが暴露され、ブッシュ息子大統領が大慌てで「屋上屋を架す」の見本みたいな組織統合をやってしまったばかりに、犬猿の仲だったFBIとCIAとの確執が更に陰湿で根深いものになったようです。
大統領の発表に先立ち、ホワイトハウスは事件の最終的な調査報告書を公表。情報当局がテロ計画や実行犯に関する断片的な情報を過小評価し、綿密な分析をしなかったことが、未然にテロを防げなかった要因だと結論づけた。報告書のうち、機密扱いの指定を受けた部分は公表されなかった。
■本当は「機密扱い」の中身の方が興味深いのですが、きっと国民が聞いたら絶望したり激怒したりするような恥ずかしい事実もたくさん含まれているのでしょうなあ。
……米中枢同時テロのあと、2004年の組織再編などによって強化されてきた情報共有体制がなお「再建途上」にあることを印象づけた。事件で情報機関は、イエメンを拠点とするテロ組織「アラビア半島のアルカーイダ」(AQAP)を過小評価し、実行犯の名前を誤って登録するという初歩的なミスを犯し、情報収集が阻害されたことも判明した。「構成員を実際に米本土に送り出せるほど、AQAPが成長していたとは思わなかった」7日、記者会見したブレナン大統領補佐官(国土安全保障担当)は、認識不足への悔しさをにじませ、AQAPは「もっとも危険で、憂慮に値するテロ組織の一つだ」と強調した。
■9・11同時多発テロの後にも似たような報告が出されていました。飛行学校で離陸方法だけ学ぶ生徒、欧州のアルカーイダの拠点と米国の間を頻繁に往復している若者、そんな不自然な人物達の動きを見過ごした結果が貿易センターの崩壊でした。当時、ジョン・オニールというFBIのテロ担当主任だった人物だけは、大規模テロの発生が近いことを察知していたというのは有名な話で、ドキュメンタリーがテレビ放送されたり映画化もされました。今回の旅客機爆破未遂事件では同様の人物は居なかったようですから、米国の面子は丸つぶれであります。
報告書によると、複数の米情報機関は昨年10月中旬から12月にかけ、AQAPが米本土でテロを計画している可能性を把握し、イスラム過激主義に傾倒していた実行犯のアブドルムタラブ被告(23)とみられる男がイエメンへの渡航を計画していたことをつかんでいた。だが、切迫したものではないとの認識から真剣に検討せず、テロを水際で防ぐことができなかった。
■別の報道によると、実行犯の父親が逸早く息子の変化に気が付いて関係機関に情報を提供していたとのことですから、米国の情報のプロたちは致命的なミスを犯してしまったことになります。あらゆる手段を使って集められる現場からの情報を、あまりにも現場を知らないデスクワークと組織内政治にばかり熱心な上層部が情報の価値を見誤り、事態を悪化させてしまう話は多くの映画作品でも描かれているところでありますが、それが現実の話となると米国本土は再び大規模テロに襲われて、またまた相手を間違えて新たな戦争を始めてしまうかも知れませんなあ。
政府が共有する情報では当初、アブドルムタラブ被告の名前のつづりが間違っていた。このため、国務省は同容疑者が米国のビザを所有していないと認識していた。だが、実際にはビザを取得しており、合法的にデルタ機に搭乗していた。……米中枢同時テロ後、主に中央情報局(CIA)と連邦捜査局(FBI)は、官僚的な「縦割り主義」がテロ情報の共有を妨げたとの厳しい批判にさらされた。このため04年には機構を改革し、CIAなど16機関を統括する国家情報長官を新設して情報共有の効率化を図ってきた。調査報告を受けたオバマ米大統領は、情報機関は「情報共有に失敗したわけではなく、すでに得ている情報を関連づけて理解することができなかった」と指摘した。だが、情報の共有が逆に、各情報機関に使命感の低下をもたらし、他人任せとなって核心情報を逃すという「新たな官僚主義が出現した」との指摘も、出始めている。……
1月9日 産経新聞
■「官僚主義」「縦割り」、そこに税金の無駄遣いやら天下りを加えたら、日本の問題に早変わりしてしまうような話であります。オバマ大統領も怒り心頭に発しているのでしょう。遠回しの表現を使っていますが、要するに図体ばかり大きくて膨大な予算を喰っているばかりで、肝腎の脳味噌が足りないんだ!と言いたいようです。「国家情報長官」を全組織のトップに据えてみたところで、膨大な情報が各組織のフィルターを通して上がって来る間に、官僚的な思い込みで誤った選択と解釈が加えられてしまえば、長官の机の上にはゴミしか載らないことになりましょうなあ。米国でも情報機関に対して「税金の無駄遣い!」論議が起こるかも知れませんから、その時は鳩山サセテイタダク首相が空(す)かさず参上して必殺!仕分け人の業績などを御披露しますかな?
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オバマ米大統領は7日、昨年末のデルタ航空機爆破未遂事件を受け、テロ監視体制の改善策を発表し、関係10機関に指示した。情報分析の強化や航空機への搭乗拒否リストの拡充などが柱。大統領はテロ防止体制の機能不全に関し「最終的な責任は私にある」と語った。改善策として大統領は
(1)特定の情報当局に優先度が高いテロ情報の追跡を主導させる
(2)情報分析リポートを迅速、広範囲に配布する
(3)テロリスト監視リストに登録する基準を緩和する-などを挙げた。
■9・11テロが発生した時に米国の諜報機関がまったく機能していなかったことが暴露され、ブッシュ息子大統領が大慌てで「屋上屋を架す」の見本みたいな組織統合をやってしまったばかりに、犬猿の仲だったFBIとCIAとの確執が更に陰湿で根深いものになったようです。
大統領の発表に先立ち、ホワイトハウスは事件の最終的な調査報告書を公表。情報当局がテロ計画や実行犯に関する断片的な情報を過小評価し、綿密な分析をしなかったことが、未然にテロを防げなかった要因だと結論づけた。報告書のうち、機密扱いの指定を受けた部分は公表されなかった。
■本当は「機密扱い」の中身の方が興味深いのですが、きっと国民が聞いたら絶望したり激怒したりするような恥ずかしい事実もたくさん含まれているのでしょうなあ。
……米中枢同時テロのあと、2004年の組織再編などによって強化されてきた情報共有体制がなお「再建途上」にあることを印象づけた。事件で情報機関は、イエメンを拠点とするテロ組織「アラビア半島のアルカーイダ」(AQAP)を過小評価し、実行犯の名前を誤って登録するという初歩的なミスを犯し、情報収集が阻害されたことも判明した。「構成員を実際に米本土に送り出せるほど、AQAPが成長していたとは思わなかった」7日、記者会見したブレナン大統領補佐官(国土安全保障担当)は、認識不足への悔しさをにじませ、AQAPは「もっとも危険で、憂慮に値するテロ組織の一つだ」と強調した。
■9・11同時多発テロの後にも似たような報告が出されていました。飛行学校で離陸方法だけ学ぶ生徒、欧州のアルカーイダの拠点と米国の間を頻繁に往復している若者、そんな不自然な人物達の動きを見過ごした結果が貿易センターの崩壊でした。当時、ジョン・オニールというFBIのテロ担当主任だった人物だけは、大規模テロの発生が近いことを察知していたというのは有名な話で、ドキュメンタリーがテレビ放送されたり映画化もされました。今回の旅客機爆破未遂事件では同様の人物は居なかったようですから、米国の面子は丸つぶれであります。
報告書によると、複数の米情報機関は昨年10月中旬から12月にかけ、AQAPが米本土でテロを計画している可能性を把握し、イスラム過激主義に傾倒していた実行犯のアブドルムタラブ被告(23)とみられる男がイエメンへの渡航を計画していたことをつかんでいた。だが、切迫したものではないとの認識から真剣に検討せず、テロを水際で防ぐことができなかった。
■別の報道によると、実行犯の父親が逸早く息子の変化に気が付いて関係機関に情報を提供していたとのことですから、米国の情報のプロたちは致命的なミスを犯してしまったことになります。あらゆる手段を使って集められる現場からの情報を、あまりにも現場を知らないデスクワークと組織内政治にばかり熱心な上層部が情報の価値を見誤り、事態を悪化させてしまう話は多くの映画作品でも描かれているところでありますが、それが現実の話となると米国本土は再び大規模テロに襲われて、またまた相手を間違えて新たな戦争を始めてしまうかも知れませんなあ。
政府が共有する情報では当初、アブドルムタラブ被告の名前のつづりが間違っていた。このため、国務省は同容疑者が米国のビザを所有していないと認識していた。だが、実際にはビザを取得しており、合法的にデルタ機に搭乗していた。……米中枢同時テロ後、主に中央情報局(CIA)と連邦捜査局(FBI)は、官僚的な「縦割り主義」がテロ情報の共有を妨げたとの厳しい批判にさらされた。このため04年には機構を改革し、CIAなど16機関を統括する国家情報長官を新設して情報共有の効率化を図ってきた。調査報告を受けたオバマ米大統領は、情報機関は「情報共有に失敗したわけではなく、すでに得ている情報を関連づけて理解することができなかった」と指摘した。だが、情報の共有が逆に、各情報機関に使命感の低下をもたらし、他人任せとなって核心情報を逃すという「新たな官僚主義が出現した」との指摘も、出始めている。……
1月9日 産経新聞
■「官僚主義」「縦割り」、そこに税金の無駄遣いやら天下りを加えたら、日本の問題に早変わりしてしまうような話であります。オバマ大統領も怒り心頭に発しているのでしょう。遠回しの表現を使っていますが、要するに図体ばかり大きくて膨大な予算を喰っているばかりで、肝腎の脳味噌が足りないんだ!と言いたいようです。「国家情報長官」を全組織のトップに据えてみたところで、膨大な情報が各組織のフィルターを通して上がって来る間に、官僚的な思い込みで誤った選択と解釈が加えられてしまえば、長官の机の上にはゴミしか載らないことになりましょうなあ。米国でも情報機関に対して「税金の無駄遣い!」論議が起こるかも知れませんから、その時は鳩山サセテイタダク首相が空(す)かさず参上して必殺!仕分け人の業績などを御披露しますかな?
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