旅限無(りょげむ)

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漢字という財産 其の六

2009-03-13 18:38:46 | 日本語
■高島俊男さんの御指摘によりますと、「準1級、1級」の問題という代物は、

漢和辞典や漢字漢文の本から、なるべくむずかしげな、自分でもわからない字やことばを拾って問題にするのだろうが、その問題がまったく無系統で断片的……

なのだそうですから、教則本・練習問題・予想問題などなど、いくらでも濫造できることになります。もう少し、高島俊男さんの言葉を引用しますと、漢検に合格することは「無知、あるいは浅薄な知識をすすめ、もしくは品性低劣をすすめることになる」のだそうで、実際に出題された内容には「言語のバランスを失した文章がぞろぞろ出てくる」のだそうです。そんな問題を銭を貰って作っている「問題の作者は、現代口語文について常識がない」と切り捨てられてしまいます。出題者は「無知の極み、救いようがない」とまで断言されますと、何処かに今も暮らしている「出題者」がちょっと可哀想になりますなあ。

■悪口雑言のようにも思えますが、高島俊男さんが選び抜いた?珍問・愚問・大間違いの実例は『文藝春秋』4月号で御確認ください。虎の威を借るように高島俊男さんの言葉を引用してしまいましたが、実は旅限無も漢検2級の認定を受けております。以前に勤務していた某学習塾の指導方針に従って受験したまでの事ですが、勿論、人を喰ったような教則本や問題集の類はまったく購入しなかったのは不幸中の幸い?塾生の保護者の皆さんも熱心に受験していた姿を思い出しますと、あの後、大久保商法に載せられてしまったのでは?と少し心配にもなりますが……。

■大久保昇氏の立身出世?の概要が新聞記事に掲載されていますので、手元にある『週刊朝日』2月13日号などを参考にして一部手を加えて引用します。


1971年 大手家電メーカーを退社した大久保昇氏が不動産会社「オーク」を設立。

1975年 オークの事業として任意団体「日本漢字能力検定協会」を設立。第1回試験の受験者は672人。

1992年 財団法人となって漢検は文部省認定の技能資格になる。

1995年 受験者は40万人。

1997年 年間受検者100万人を突破

2002年 年間受検者200万人を突破

2003年 文科省が実地検査。
2004年 文科省が実地検査。
2006年 文科省が実地検査。収支均衡対策を兼ね漢検9、10級新設。
2007年 1級と準1級の受検料を値下げ。受験者は272万人。
2008年 文科省が実地検査を実施し「もうけすぎ」を指摘
2009年 文科省が異例の5度目の実地検査

2009年3月10日 毎日新聞

■ざっと見渡しますと、何だかオウム真理教と同時期に旗揚げして急成長しているような印象を受けますなあ。オウムが地下鉄サリン事件のテロを仕掛けて暴発した年を挟んで、大久保商法は文部省の認定を受けて100万人も信者ならぬ受験者を掻き集めていたことになりますなあ。旅限無が受験したのはオウム真理教の恐怖が日本中に充満していた96年頃だったはずです。オウム真理教の教祖様は偽薬の販売で摘発された前科を持つ自称救世主でしたが、大久保昇氏の本業は不動産業だったそうですから、80年代から京都市内の不動産を買い漁ったというのも無理からぬ話かも?

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