旅限無(りょげむ)

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オリンピックの裏側で 其の伍

2007-08-11 15:08:10 | 外交・情勢(アジア)
聖火リレーのルート発表に先駆け、チベット解放運動に携わる学生のうちの5人が、高速道路計画に抗議した。中国はすぐに5人を拘束し、国外追放に処した。……計画の有用性を信じる人々もいる。「この計画は地域の発展と住民にとって良いことだ。地域に魅了される観光客や登山家が増えるであろうから」とチベット登山組合事務総長の張民興(Zhang Mingxing)氏は語る。インディアタイムズ紙によると、中国は6月末までに道路工事の着工を計画している。
2007年7月2日 Ethical Travel News, CA

■その後の工事がどうなっているかは、続報が無いので未確認ですが、『人民日報』が発表している聖火リレーのスケジュールからしますと、何が何でもチョモランマ登頂のベース・キャンプまでは道路を通してしまいそうです。以下、聖火リレー計画。


2008年3月31日、中国国内に聖火が到着。歓迎式と聖火リレーの出発式を開催。その際、チョモランマ登頂専用の火種を分離。
4月下旬にチョモランマ大本営に聖火到着。気象条件が最適となる5月中に登頂を目指して待機。
某日、聖火は頂上を目指して出発。その間も主用ルートのリレーは続行。
某日、聖火が頂上に到達。同日、国内リレーは一旦停止し、登頂終了後に再開。
チョモランマを下りた聖火は拉薩(ラサ)に運んで保管。
2008年6月20日、主要ルートの聖火が拉薩(ラサ)に到着して登頂した火と合流。

■どう考えても「チベット併合」を正当化するイメージ作りが先行した演出ですなあ。問題の聖火が台湾を通過するかどうか、まだモメているようですが、それは「国内ルート」として想定されているのが理由だそうです。チョモランマ登頂は、勿論、「国内ルート」の支線扱いになっております。聖火リレーには欠かせない「聖火ランナー」に関しても、なかなか興味深い話が有ります。


レノボ・ジャパンは7月9日、2008年北京オリンピックのスポンサーであるレノボが、Googleを通じて世界中から聖火ランナーを選出するキャンペーン・プログラムを開始すると発表した。9月末までに20人を選出し、最終的に3人を聖火ランナーに指名する。本プログラムを通じて、世界中のもっとも革新的な"New Thinker"(新しい発想で行動する人)を発掘するという。……来週から設置されるGoogleのプロモーション・リンクを使ったプロモーション特別サイトを通じて、聖火ランナー検索への登録を行う。その後、9月末までに登録者の中から20人の候補者が選出され、さらに候補者はYouTubeを通じて「オリンピックの理念と新発想を表現」する紹介ビデオを提出。紹介ビデオをもとに投票が行われ、10月中には上位3名が聖火ランナーに指名される予定だ。

■Googleと買収したばかりのYouTubeを宣伝するためとは言え、随分と手の込んだ事をするものですなあ。面白いのはランナーの選出基準ですぞ。


レノボのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務める副社長のDeepak Advani氏は、Googleの技術などを利用した本プログラムを革新的なアプローチとし、「"New Thinker"は我々の創意工夫への情熱の代表者であり、起業家精神の体現者となる」とコメントしている。
"New Thinker"の基準は以下のとおり。

①Motivator 目標を達成し、障害を克服するためにコミュニティを奮起させる人物
②Provocative 困難な試みを遂行する際に、旧来の限界にとらわれない積極的な人物
③Imaginative 国や文化の枠を越えて、独創的な発想をする人物
④Individualistic 自分の考えや行動において、独立性を発揮する人物
⑤Explorer 行動や目的達成のために、新しい方法を探求する人物……

■③以外を並べてみますと、北京政府が神経を尖らせる人物像が浮かび上がるのが面白い!①「障害を克服」「コミュニティを奮起させる」、②「旧来の限界」、④「独立」、⑤「行動」……。ウイグルやチベット出身の元気な若者の中に、このような資質に恵まれている人物が居たらどうするのでしょう?レノボ社としては、「起業家」を念頭に置いた商売の話に限定しているつもりのようですが、現体制に反発する政治的な人物にも共通する素質になっているのが面白いですなあ。

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