旅限無(りょげむ)

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正体不明の挟み撃ち? 其の弐

2011-10-26 16:09:35 | 外交・情勢(アジア)

一川保夫防衛相は25日、来日中のパネッタ米国防長官と防衛省で会談し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として日米両政府が合意した同県名護市辺野古沿岸部の環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に沖縄県に提出する方針を伝えた。パネッタ氏は「日本側の努力を評価する」と応じ、普天間移設を可能な限り早く進めることで一致した。両氏は世界的なサイバー攻撃への対処に連携していくことも確認した。一川氏は武器輸出三原則の緩和に向け検討を進める方針を伝えた。…… 

■「出来れば国外、最低でも県外」と言い出した前の前の総理大臣が「学べば学ぶほど」沖縄基地の抑止力の有り難味が分かったと、自分だけ納得して政権を投げ出してしまってから、次の菅アルイミ首相は無力の「全力」で沖縄現地にも行かずに機械的に先送り。鳩山サセテイタダク元首相が点火して一度燃え上がった沖縄県民の怒りと声は、野田ドジョウ首相の官僚作文の棒読みなどでは絶対に消せないでしょうから、米国の言いなりに事務的に移設作業を進めようとすると鳩山サセテイタダク元首相が言った「杭の一本も打ち込めない」騒動が起こることを危惧する声があちこちから聞こえているというのに、民主党政権の鈍感さを強引な姿勢に変えてうかうかと火中の栗を素手で拾おうとしているのが分からないのでしょうか?党内融和に全力を使い果たして「官僚主導」で政治を進めようとする野田ドジョウ政権の病的な内向き姿勢が足元から崩れていくかも知れませんなあ。前の総理大臣は「辞任はしない」と粘りに粘って国会を空転させましたが、今度のドジョウ首相は「解散総選挙はしない」と早々に断言して民主党全体で居座るつもりのようですから、政治不信はますます深刻になりそうです。

■民主党名物の唐突な言動から「武器輸出三原則の緩和」が飛び出したのは前原エエカッコシイ政調会長が米国を訪問した時だったと記憶しておりますが、日本に持ち帰って普天間基地移設問題に絡めてしまおうと最初から考えていたのなら、ちょっとした策士と申せましょうが、策士は得てして策に溺れてしまう危険がありまして、前原エエカッコシイ政調会長にはマスコミから「言うだけ番長」の異名が贈られてもおりますから、三原則の緩和がどこまで進むのかは予断を許しません。そこに「世界的なサイバー攻撃への対処」がさり気無く添えられているのが、今回の一川・パネッタ会談の特徴ではないでしょうか?特に防衛軍事情報に関しては、ずっと前から米国は日本の情報管理の杜撰さを知り尽くしていたので、重要情報は渡さないと決めていたはずですぞ。

■もしも、第三国からのサイバー攻撃に対処する事態になったとしても、日本には米国と共同で動ける技術も組織も無いでしょうし、米国が虎の子の最新技術を日本に提供することなど考えられませんから、この「世界的なサイバー攻撃への対処に連携」という話には中身がまったく詰まっていないことになりましょう。


普天間問題をめぐって米国では、普天間移設と関連する在沖縄米海兵隊のグアム移転計画が財政削減を求める議会の反発で頓挫しかねない状況にある。パネッタ氏は「グアム移転には普天間の具体的な進展を得ることが重要だ。両国で協力したい」と述べ、進展の必要性を強調した。……日本政府が欧米の3機種の中から選定を進めている航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)をめぐり、パネッタ氏は日米間の「相互運用性」に言及した。米国など9カ国が共同開発中のF35や米国製のFA18の選定に期待感を示した。
野田佳彦首相もパネッタ氏と首相官邸で会談し「日米同盟は、わが国の外交安全保障の基軸であるというのが私の信念だ。しっかり連携しながら安全保障、防衛面でさらなる強化をしていきたい」と述べ、日米同盟の深化に意欲を表明した。
2011年10月26日(水) 産経新聞 

■野田ドジョウ首相は、こうした発言が即座に世界を駆け巡り、目の前に座っている米国の国務長官を飛び越えて他国の政府に向かっての言葉に変わるという事実を認識しているのか?甚だ不安になるのでありますが、武器輸出三原則を見直して次期戦闘機を米国製に決め、普天間基地もさっさと約束どおりに移設してくれた上にTPPにも積極的に参加する。米国政府にとってこんなに「ウイ奴」は他に居ませんでしょうなあ。しかし、日本の国民にとっては放射能汚染の不安がどんどん膨らみ、震災津波の被災地では復興の目途がまったく立たず、歴史的な円高は変わらず、こんな迷惑千万な政権はかつて無かったかも知れませんなあ。

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2 コメント

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no way (noga)
2011-10-26 17:33:41
待ちの政治では、迅速な対応はできない。停滞気味である。

現実の内容は、「世の中は、、、、、」の内容であり、理想の内容は、「あるべき姿」の内容である。これは非現実である。
日本語には時制がなく、日本人は現実 (現在) と非現実 (過去・未来) の世界を独立させて並行して言い表すことが難しい。
非現実 (理想) に向かうための現実対応策が語れない。
現実から理想へと一足飛びに内容が飛ぶ。言霊の効果のようなものか。その過程が明確にされない。

時制を考慮することなく自分の思った内容を述べようとすると、現実肯定主義派と空理空論 (曲学阿世) 派のどちらかに分かれることになる。
これでは政治音痴は止まらない。
両者は話が合わない状態に陥り、議論ができない。そこで、悪い意味での数合わせで、民主的に、物事を決するしかないことを日本人は心得ている。
だから、多数がとにかく足並みをそろえる大連立の構想には意味があると考えられているのであろう。

守旧派の世界は理想的ではないが、過不足なく成り立っている。革新派の世界は穴だらけで成り立たないことが多い。
安心と不信の背比べである。だから、政治家は静観が多く、意思決定には手間を取る。
静観には現在時制を働かせるだけで十分であるが、意思決定に至るには意思(未来時制の内容)の制作が必要になる。
意思の制作に未来時制が必要であるということは、自分が意思を作って示すことも他人から意思を受け取ることも難しいということになる。
つまり、社会全体が意思疎通を欠いた状態のままでとどまっているということである。
それで、勝手な解釈に近い以心伝心が貴重なものと考えられている。

時代に取り残されるのではないかという憂いが常に社会に漂っている。
英米人の政治哲学に基づいて次々と繰り出されてくる条約締結の提案には、ただたじろぐばかりである。
自分たちには、哲学がない。理想もなければ、それに向かって踏み出す力もない。
筋道を明らかにされることのない指導者からの励みの要請に民は閉塞感を持っている。玉砕戦法のようなものか。
だから、我々は耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ必要に迫られることになる。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812

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nogaさんへ (旅限無)
2011-11-03 12:43:14
ご返事がすっかり遅くなり大変に失礼いたしました。ご指摘の「意思」には強力な欲望や野心なども含まれるでしょうか?日本は一度だけ西欧列強の強欲に伍して大きな野望を抱いたことがありましたが、陸軍と海軍がまったく別の意思を持って協力連携ができず、補給を軽視するなど戦術の間違いを重ねて自滅的に敗北してしまった苦い経験があり、そこから何も学ばずひたすら反省自戒の態度を取っている間に何も考えない奇妙な体質になってしまったのかも知れませんなあ。
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