旅限無(りょげむ)

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円高と日銀のお仕事 其の壱

2011-11-02 15:49:51 | 日記・雑学
■政権交代マニフェストを投げ捨てて増税路線をひた走る野田ドジョウ政権の尖兵となって小柄な安住蔵相が不慣れな財政を預かっている姿は、「政治主導」の四文字を民主党は苦い思い出と共に忘れ去ったことを証明しているようであります。あれこれ羅列してあったマニフェストですが、今となってはあれこれも空想と妄想を寄せ集めた大嘘だったのは明らかで、少なくとも自民党(途中から公明党も参加)政権が残した負の遺産を裏も表もしっかり「情報公開」して、きっちり「仕分け」して国民に告げ知らせてくれるかと少しばかり期待したものでしたが、国民が嫌気をさした自民党の悪弊のほとんどを受け継いで不思議なくらいに早々と政権末期の頃の自民党と民主党は瓜二つのように見える昨今であります。

■期待された情報公開が実現しないのは、政権を取ってから初めて官僚から知らされる話に度肝を抜かれて日夜繰り返される「ご説明」の洗脳教育によって閣僚になった議員が順に情報隠しの手先になってしまったからなのでしょうなあ。でも、素人臭い情報管理の甘さが変な場面で出ることもあるようです。今回の円売りドル買い介入に際して安住蔵相は実に饒舌でありました。介入の日時、指し値売買方式の採用、続行の予告まで、すべては極秘裏に行なわれるべき為替介入について、これほどぺらぺらと喋る蔵相は前代未聞かも?

■歴史的円高が続いて輸出企業は為替差損を嫌って日本を離脱しようとするのは経営方針として間違ってはいないのでしょうが、円高不況に続いて雇用が失われ続けたら日本に希望は無くなってしまうでしょう。円高の原因はギリシアから始まったユーロ危機や米国の財政悪化だと聞かされると何だか自然災害みたいなものなのかと思ってしまいますが、本当は財務省の増税政策が進むようにデフレ不況が長引き、円高不況も重なるように日銀が協力して増税路線を後押ししているとの指摘もあるのですが……。


日銀は(10月)27日の金融政策決定会合で、歴史的な水準の円高や欧州債務問題の混乱による景気の下振れ懸念に対応するため、追加金融緩和を決定した。市場への資金供給のための基金のうち、長期国債を対象に資産買い入れ枠を5兆円増額し、55兆円とする案を8対1の賛成多数で可決。政策金利は年0~0.1%とする事実上のゼロ金利を全員一致で据え置いた。
追加緩和は、基金の10兆円増額を決定した8月4日以来。反対した宮尾龍蔵審議委員は基金を10兆円増額するよう提案し、1対8で否決された。日銀は声明で「国際金融資本市場や海外経済の動向次第で、経済・物価見通しがさらに下振れするリスクにも注意が必要」と警戒感を示した。
2011年10月27日(木) 時事通信 

■今週は11月2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を皮切りに、3~4日には主要20カ国・地域(G20)首脳会合、さらには欧州中央銀行(ECB)理事会とイベントが目白押しなのだそうで、日本は自由貿易に抵触する意図的な為替操作は出来ないだろうと思われていた10月31日午前10時のサプライズ介入でありました。それに先立って日銀が毎度御馴染みの中途半端な金融緩和を形だけやっておいたという話であります。

■一時は78円台を突破して79円15銭あたりまで円が急落しましたが、前回の介入と同様に元の木阿弥・三日天下になってしまいそうです。安住財務相は「実体経済を反映しない一方的・投機的な動きが続いている」から「納得いくまで介入する」と啖呵を切っているようですが、どうせアメリカの国債を買いますことにしか使えないドルを買い込むより別の円の使い方が今の日本にはたくさんあるような気もしますが……。

■介入の前日、安住財務相を「オオカミ少年」呼ばわりする新聞記事がありましたが、それに腹を立てての決断だったのではありますまいな?!。


超円高を阻止しようと安住淳財務相が「口先介入」を連発するなか、外国為替証拠金取引(FX)の個人投資家や一部のヘッジファンドが、せっせとドルを買い込んでいる。実際に為替介入が行われて円安ドル高に戻った際に買っておいたドルを売って円を買えば、大もうけできるためだ。政府・日銀が円売りドル買い介入に踏み切れば、「待ってました」と大量の円買いが出され、円高是正の効果が帳消しとなってしまう恐れが高まっている。…… 

■4円もの急速な円安で、一体、誰が得したのか?誰のための介入だったのか?まさかとは思いますが、長い間政治資金の不足に苦しんでいた民主党議員や関係者の中にインサイダー情報を利用して濡れ手で粟の荒稼ぎをしたような悪い奴はいなかったのでしょうな?!外国人からの違法献金など民主党が抱え込んでいる「政治とカネ」の問題は自民党時代の疑獄事件よりは規模は小さくとも、胡散臭さは際立っておりますからなあ。


「必要があれば、断固たる措置をとる」。25日から3日連続で円相場が戦後最高値を更新し、1ドル=75円67銭まで上昇。安住財務相も連日のように介入示唆を続けた。証拠金の何倍もの取引ができるFXの投資家は、「円高局面では、『今がドルの底値』と考え、円安ドル高に戻った際の利益を狙い、逆張りでドルを買う傾向が強い」(マネックスFX)。それに安住財務相の口先介入が拍車をかけた。東京金融取引所のFX「くりっく365」では27日時点のドル買い越し残高が約40万2千枚(1枚は1万ドル)と、金額換算で約40億ドル(約3千億円)分に上る。円高に歩調を合わせて今月に入り急増し3日時点の1・5倍に膨らんだ。……元本である証拠金は6月末時点で9446億円に達し、現在は1兆円を突破しているとみられる。証拠金の25倍まで取引が可能で、平均10倍と仮定すると、10兆円もの取引量となる。…… 

■一時は広告臭いニュースが流れて一挙に有名になったFX取引きですが、本当に素人が一攫千金の夢を叶えられるのか?超高性能のコンピュータを駆使して稼ぎ回るプロが蠢(うごめ)く為替市場ですからご用心、ご用心。でも、デフレ不況が長引く中で銀行預金には利子らしい利子は付かず、株価も低迷しているとなれば、異様な円高が続いているぞ!と連日連夜のニュースが騒ぎ立てれば、外貨を買ってみようかなあと思うのは人情というものであります。やはり、円高を放置するのは悪いことです。


一方、欧米のヘッジファンドの一部も、「介入を待ち構え、先週ごろからドルを買い込んでいる」(市場筋)という。安住財務相が介入をあおればあおるほど、「ドル買いのマグマ」(同)がたまる構図だ。政府・日銀が円売りドル買い介入に踏み切っても、FXとヘッジファンドが束になってドル売り円買いを浴びせれば、ひとたまりもない。「円安への戻りは限定的で一時的にとどまり、もうけるチャンスを与えるだけ」(外為ディーラー)に終わる可能性が高い。だが口先介入ばかりでは、イソップ童話の「オオカミ少年」のように誰にも相手にされなくなり、市場は安心して円買いを仕掛け、円高が加速しかねない。日銀が27日に実施した追加金融緩和も効果はなかった。政府・日銀は戦略を欠いた対応によって円高阻止の手段を失いつつある。
2011年10月30日 産経ニュースfont color="#000000"> 

■戦争もビジネスも政治も、兵力を逐次小出しに投入するのは愚の骨頂とされていますが、協調介入の交渉も出来ないまま孤軍奮闘するのは万策尽きたバンザイ突撃を連想させる悲壮なものがありますが、安住蔵相のキャラクターには滑稽さも漂っているようです。「納得いくまで介入する!」などと9月上旬にスイスが発表した無期限の為替介入を真似てみても、スイス・フランと日本の円とでは発行残高の規模は比べ物にならないのですから、スイス政府が成功したような強引な安値誘導を単独で成功させるには想像もできない額のドル買いをしなければなりますまい。

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