旅限無(りょげむ)

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野田ドジョウ外交の始まり 其の弐

2011-09-21 15:14:15 | 外交・情勢(アメリカ)

米国を訪問中の玄葉光一郎外相は19日(日本時間20日)、クリントン米国務長官と会談し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設を推進する方針を確認した。クリントン氏は「(移設の)早急な進展」を求めた。発足間もない野田政権だが、問題を先送りしないよう強く牽制したものだ。玄葉氏は具体的な道筋を示せなかった。……民主党政権の外相は玄葉氏で4人目で、特にこの半年では3人目。日本の外相は会談のたびに就任あいさつを繰り返してきた。今回も玄葉氏は「日米合意を着実に進めたい」と語ったが、辺野古移設の日米合意の順守は、もはや「時候のあいさつ」と化している。米側の要求の背景には、いつまでも沖縄を説得できない日本側へのいらだちに加え、財政支出削減を訴える米議会の圧力もある。議会には「実現性が分からない普天間移設と海兵隊のグアム移転にカネを出す状況ではない」との雰囲気が広まりつつある。…… 

■少なくとも野田ドジョウ首相は「学べば学ぶほど」やっと抑止力の必要性を理解するような地球外頭脳を持っていないと思われるので、宇宙人の向こうを張って愚かな大見得を切って悦に入る心配はなさそうですが、菅アルイミ前首相のように無関心・丸投げ・先送りを単純にひっくり返して対米追従で突っ走る可能性は大いにありそうです。所信表明演説でも普天間飛行場の移設問題については「日米合意を踏まえつつ、普天間飛行場の固定化を回避し沖縄の負担軽減を図るべく、沖縄の皆様に誠実に説明し理解を求めながら、全力で取り組みます。また、沖縄の振興についても、積極的に取り組みます」と、たったこれだけしか言及していませんでしたから、要するに鳩山サセテイタダク政権が引っ掻き回した揚句に大混乱のオマケ付きで元の木阿弥に戻したところから、菅アルイミ前政権の空白を飛び越えて再び話を始めるという事のようです。本当にこの2年余の貴重な時間は何だったのでしょうなあ?


外務省幹部は「日本の決断を待つ余裕が米政府になくなりつつある」と指摘する。加えて頻繁な首相や外相の交代に、米側は「だれと話せばいいのか」と不信感を募らせている。辺野古移設で正式合意した6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、沖縄駐留米海兵隊の平成26年までのグアム移転完了を断念し、「できるだけ早い時期」とすることでも合意した。ゲーツ国防長官(当時)は直後の記者会見で「1年以内の進展」を日本側に要求。7月に就任したパネッタ国防長官は下院議員として長く予算や財政に携わり「コストカッター」と呼ばれた。決断を求める米側の圧力が今後一層強まることは必至だ。…… 

■「誰と話せばいいのか?」と米国側が当惑するのは当然で、安全保障政策を持たない政党が与党となった日本は実質的に無政府状態が続いているようなものですから、首相・外相・防衛相が三者三様バラバラで特に首相は何も考えず、何も知らない体たらくでしたから交渉ごとなど進むはずは無かったのでした。何とも恐ろしい話であります。


「圧力」は米側からだけではない。沖縄県の仲井真弘多知事は19日、ワシントンで講演し「移設先は日本の別の地域を探した方が断然早い」と強調した。
「移設ができなければ普天間を継続するしかない」「ゆすり発言」をしたとして3月に更迭されたケビン・メア元国務省日本部長は18日、更迭後初めて沖縄を訪れてこう語った。「日米合意順守」の掛け声だけで済む時期は過ぎており、残された時間は少ない。
2011年9月20日(火) 産経新聞 

■「できれば国外・最低でも県外」と何の準備も計画も無いままパンドラの箱を開けてしまった鳩山サセテイタダク前首相は今頃、一体、何処で何をしているのでしょう?三代目を決める代表選挙の時には気味が悪いほど生き生きと明るく?暗躍している姿が報道されていましたが、もう沖縄基地問題など頭の片隅にさえ残っていないように見受けましたぞ。多くの国民が求めたのは政権交代ではありましたが、決して鳩山サセテイタダク政権などではなかった!と臍を咬んでも後の祭なのですが……。民主党政権には外交は無理で、沖縄基地問題は荷が重過ぎると分かってしまっても震災からの復興と原発事故収束の大義名分があるかぎり日本国民は歯を食いしばって我慢しなければならないようです。それが間違った政権選択をしてしまった罰なのかも知れませんが、犠牲が多過ぎるような気もしますなあ。特に外交での失点は後になって大きな影響が出るものですから……。


訪米中の仲井真弘多沖縄県知事は20日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の空軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)への統合案を提示している上院軍事委員会のレビン委員長(民主)やウェッブ委員(同)ら3議員と面談し、普天間飛行場の県外移設を改めて求めるとともに、嘉手納基地をめぐる騒音問題などを説明した。仲井真知事は「嘉手納基地周辺の人々は戦後長期間にわたり基地と付き合い、非常に厳しい環境(騒音)問題を抱えている」と、被害訴訟を含めた実態を説明した。これに対し、レビン委員長らは騒音被害を認識しており、普天間基地の嘉手納基地統合案では、騒音が軽減されることを前提にしているとの考えを示したという。同委員会のマケイン議員(共和)は「議会でも普天間問題を放置してはならないとの意見がある。現実的な解決策を目指すべきだ」と話した。 
2011年9月21日(水) 時事通信 

■軍用機の騒音が消えることはなさそうですし、嘉手納基地の問題は決して騒音だけではないでしょう。それを手繰って行けば沖縄全体の基地問題という戦後日本の大きな負の遺産を掘り出すことになりましょうが、世界最大最強の軍事力を持つ米国と建前上だけでも軍隊を持たない日本との同盟関係という世にも珍しい構造が冷戦が終わった後でも説得力があるのか?という戦後日本が先送りし続けた宿題にもつながって行きます。冷戦が終わったという歴史的事実に鈍感だった日本は、チェルノブイリ原発大事故に対しても愚かしく鈍感で安全基準を見直すこともなく今回の大事故を起こしてしまったのでした。国民的議論も必要でしょうし正確な情報と知識の共有を促す教育も必要でしょうが、最後は政治的決断がなければ何も動かないのですから政治家と政党の質を向上させない限り、反米か対米追従かの悲しい二者択一をその場しのぎで「苦渋の選択」が続けられることになるのでしょうなあ。


仲井真知事はワシントン市内で記者会見し、日米両政府が合意しているキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)への普天間移設に関し、「地域住民が反対しているのに、政府が手続きを進めて、どうやって実行できるのか」と述べ、移設の前提となる環境影響評価書を政府が県に提出する動きをけん制。さらに、移設を強行した場合、「銃剣とブルドーザーで基地を造るかというところまで行ってしまう」と指摘した。
2011年9月21日(水) 毎日新聞

■玄葉外相の気味悪い笑顔と対照的だった中井真知事の鬼気迫る表情とを並べて見れば、米国人にもどちらが必死なのかは直ぐに分かりましょう。そこに乗り込んだ野田ドジョウ新首相がぬめぬめと掴みどころの無い発言ばかりして帰国するようだと、いよいよ日本外交の孤立化は深刻なものになりますぞ。
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