旅限無(りょげむ)

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怒りの矛先が定まらない? 其の弐

2011-09-20 15:29:25 | 社会問題・事件
■行き場のない怒りと不安に襲われている国民は本当の敵を見つけられず、見当違いの共食い同然の迷走をあちこちで起こしているのは何より悲しいことであります。

愛知県日進市で18日夜行われた花火大会で、放射性物質の拡散を心配する市民から苦情を受けた実行委員会が、福島県で製造された花火の打ち上げを中止していたことが19日、分かった。「にっしん夢まつり・夢花火」で、東日本大震災の復興を支援しようと、被災3県の花火を含め計2千発の打ち上げを予定していた。このうち80発が福島県川俣町の菅野煙火店の花火だったが、愛知県内で製造された花火に差し替えられた。岩手、宮城両県の花火は予定通り打ち上げられた。…… 

■福島県の花火職人は小型原爆でも作っていると思い込んでいる人がいるとも思えませんが、京都の送り火事件やら成田山新勝寺さんの御焚き上げの事件に続き、またまた過敏な話が飛び出してしまったのは非常に残念なことであります。千葉県に避難した一家が子供の虐めを理由に福島県に戻って行ったという事件も忘れられませんが、「放射能をうつすぞ」と言ったの言わないのと新聞が書き立てて大臣を就任9日目に辞任させて喜んでいるマスコミと足並みを揃えるような過剰反応は自制して欲しいものであります。花火が製造された場所は原発から40キロ以上も離れた場所で、幸いにも大気中の放射性濃度も基準値を下回っているとも聞きますから、決して川俣町は「死の町」ではないのですから、心配ならば騒ぐ前に冷静に情報を集めてみて欲しいものでありますなあ。まあ、政府が情報をてきぱきと伝える努力を怠ったツケがこんな形で噴出したとも言えそうなのですが……。


16日の新聞紙上の案内で知った市民から「汚染された花火を持ち込むのか」などと、電子メールや電話が計約20件、市に寄せられた。市や商工会で構成する実行委員会が福島の花火を打ち上げないことを決め、17日に萩野幸三市長に伝えた。市は「苦渋の選択だったが、市民が不安を感じる状況で打ち上げは難しい」と判断。萩野市長は「抗議が相次ぎ打ち上げられなかったことは残念。福島の皆さんには深くおわび申し上げたい」と語った。…… 

■日進市の人口は2006年9月1日時点で77,595人だそうです。「抗議」の20件には同一人物からの重複も含まれている可能性があるものの、7万7千人のうち20人に文句を言われて腰砕けになる市政には違和感がありますが、測定を怠った実行委員会にも油断があったのは事実でしょう。放射能汚染が心配なら花火打ち上げ会場から離れて火の子を避ければよさそうなものですが、心配で堪らない人は会場に高濃度の放射性物質がばら撒かれてしまうイメージにとらわれてしまうのでしょうなあ。


菅野煙火店の菅野忠夫社長(77)は「悔しい思いでいっぱい。福島から愛知に避難されている人も多いと聞き、花火を見てもらって元気づけたかった」と話した。19日に今後の対応を協議した市の担当者は「基準などはないと思うが、放射性物質を測定した上で問題がないと判断できれば、来年の花火大会で打ち上げたい」としている。
2011年9月20日(火) 河北新報

■こうして「日本は一つ」でもないし、助け合いの精神が満ち溢れているのでもない事が判明してしまうのでありますが、原発事故が日本をどれほど変えてしまうのか?を東電も原子力ムラの住人もよくよく考えて身の処し方を決めるが宜しいでしょう。廃炉と除染という気が遠くなるような時間とカネと人力を要する大仕事が残っているのですから、国民も原発の賛否はどうあれ、事故の後に共に生きていく方法を考えて、ゆっくり心構えを作って行きたいものであります。その先頭に政治家が立ってくれるのが一番よいのですが、無い物ねだりをしている余裕はありませんから、次の総選挙までは臥薪嘗胆、怒りの矛先を何処に向けるべきかを弛(たゆ)まず考え続けましょうぞ。
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