旅限無(りょげむ)

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記念撮影の後先 其の七

2009-12-18 11:16:51 | 外交・情勢(アジア)

カザフスタンで胡主席はナザルバーエフ大統領と公式会談を行い、両国関係や関心を共有する国際・地域問題について踏み込んで意見交換する。……トルクメニスタンで胡主席はベルディムハメドフ大統領と公式会談を行い、近年来の両国関係の発展の成果を総括し、次の段階の両国関係の発展と各分野の協力について展望や計画を示し、関心を共有する国際・地域問題について意見交換する。また、ベルディムハメドフ大統領の招待で、トルクメニスタン、カザフスタン、ウズベキスタンの各大統領と共に、中国・中央アジア天然ガスパイプラインの開通式に出席する。
2009年12月11日 人民網日本語版

■小沢訪中団との形ばかりの接見とは違い、この中央アジア歴訪はぎっしり実利という実が詰まった本当に重要なものでした。わざわざ開通式に出席するのも無理はなく、年間輸送能力は45億立方メートルで、2012年までに300億立方メートルに増やす計画があり、全長1801kmは地上に設置されたパイプラインとしては世界最長!「長城計画」を進めるクラッシャー小沢幹事長には悪い話ですが、今は万里の長城の時代ではなく、パイプラインの時代なのであります。勿論、東の海底ガス田からのパイプラインも含めて……。

■チャイナは「4エネルギー輸送ライン構築」を持っていて、①北西部の中央アジアから、②東北部のロシアから、③インド洋に面するミャンマーから、④東部の戦略石油備蓄基地というものです。特に③は、マラッカ海峡を通らずに済むので1200kmも輸送距離が短縮される上にインド洋を守るという大義名分も得られるという真に結構な?お話になっておりまして、来年にはミャンマーに30万トン規模の原油専用埠頭を建設して60万立方メートル分の貯蔵庫も建設してしまおう!という大計画だそうです。さてさて、東シナ海のガス田からの天然ガスが④の東部・戦略石油備蓄基地に送られるようになる前に日本政府は手を打てるのでしょうか?既に①ロシアからのラインはチャイナに横取りされたも同然のようなのですが……。

■こうした大計画と比べますと、小沢訪中団が嬉々として北京を楽しんでいた光景がますます滑稽なものになってしまいます。

 
民主党国会議員143人を含む総勢600人超が参加する異例の規模となった今回の訪中団は、航空機5便に分かれての北京入りとなった。……「長城計画」の一環だが、野党からは「これだけ大勢の国会議員が国を留守にするのは異例だ。自民党だったらこういう発想はしない」(谷垣禎一総裁)との声が出た。

■安全上の問題もありますから、選良が143人も団体で移動するというのは異様な光景と言えるでしょう。テロに狙われるほどの大物は含まれて居ない烏合の衆だから安心?とも言っておられません。交通事故や自然災害や毒入りギョーザなどの危険がありましょうし、チャイナ全土で連続している暴動騒ぎが北京に飛び火しないとも限りません。明治政府が元勲たちを欧米視察団として送り出した故事に倣った心算かも知れませんが、学ぶべき事柄も無い土地に国会議員が団子になって出掛ける危険を犯すほどの意義も価値も無いと思うのですが……。やはり、「政治は数だ!」を実現したクラッシャー小沢の自己満足だけが目的だったのか?


小沢氏は北京空港に到着後、中国側が用意した巨大な黒塗りのリムジン車に乗り込み、一般車両を止めてノンストップで市中心部に向かう厚遇を受けた。同行議員らは添乗員が持つ旗に従ってチャーターバスに乗り長い車列をつくった。「140人以上の国会議員が参りました。お忙しい中、それぞれの議員とツーショットをしていただきまして本当にみんな大変、喜んでいると思います」約30分にわたる胡氏との会談の冒頭、小沢氏は笑顔で語りかけた。胡氏との会談は4回目だが、政権交代後は初めてだ。

■小沢幹事長は日本では乗れない巨大なリムジンに乗せて貰って大感激だったのかも知れませんが、北京市で時々出っくわす突然の「道路閉鎖」は本当に迷惑なものなのであります。日本のマスコミでは「国賓待遇」の象徴的な対応のように報じていたところもあったようですが、地方政府のちょっとしたお偉方でも平気で環状道路を独占して会議や行事に向うこともありますし、実際に目撃して驚いたことに天安門広場から南下する前門大街の大通りを通行止めにして、日本の某高校の修学旅行と思(おぼ)しきバスの列が通っていたこともありましたぞ。何の予告も表示も出さずに行なわれる道路封鎖に北京市民は慣れっこになっているようなのですが……。

■小沢団長が厚く御礼申し上げた「ツーショット」の撮影風景は報道画面を見ている方が赤面するような光景でしたなあ。何が嬉しいのか、さっぱり理由が分からない参加議員も多かったようで、次の選挙に悪影響が出なければ幸いでありましょう。投票した人の中には唖然としたり激怒した人もいたはずですからなあ。


会談で胡氏は「小沢氏は中国人民の古くからの友人だ。中日関係発展のため数多くの貢献をしてきた。民主党の新しき友人、古き友人の皆様とお会いできて大変うれしい」と応じた。……会談に先立ち、訪中団が胡氏ら中国要人と行った記念撮影だ。議員のほとんどが一列に並び「一人0・5秒ぐらいのスピード」で胡氏とツーショット撮影、ポーズを決めていた。

■人民大会堂を埋め尽くす恐るべき人の群れを見慣れている胡錦濤主席にとっては、決して大人数とも思えない訪中団の規模だったでしょうから、握ったかどうかも分からない「握手」の連続なども慣れたものだったに違いなく、逆に一票欲しさに手首や指が壊れるほど力を込めて握手し続けて来た新人議員は面食らったことでしょう。それを見守るクラッシャー小沢の表情は、関取に赤ん坊を抱いてもらう父か祖父のようでもありました。やくざの親分にも似ていたような……。


……東シナ海ガス田開発問題や中国製毒ギョーザ事件……中国軍の不透明な国防費……こうした懸案についての突っ込んだ議論はなかった。「今日は政治的な課題を議論しにきたわけではない」(小沢氏)がその理由だ。逆に、会談後、小沢氏は記者団に対し、来夏の参院選に関し、胡氏との会談で自らを「人民解放軍の野戦軍司令官」になぞらえたことを紹介。個人的な信頼関係構築に腐心していることをうかがわせた。……
2009年12月10日 産経新聞

■実際の解放戦争には参加していない世代に属してる胡錦濤主席に対して、「野戦軍司令官」の比喩は適切だったかどうか?選挙は戦いだ!とも言われますが、「戦争」とまで表現するのは如何なものでしょう?伝説と宣伝で塗り固められた解放戦争神話など持ち出すよりも、小平に褒められて異例の出世の切っ掛けとなったチベット・ラサ市戒厳令の話でもしたら、もっと話が通じたかも知れませんぞ。「チベット人暴徒」を徹底的に弾圧した若き日の胡錦濤主席を見習って、今の自民党や気に入らない勢力を根絶やしにしてやる心算です!と言えば、陳情一本化で自民党の支持基盤を根こそぎ奪い取りつつある小沢幹事長の「戦争」が実感を伴って伝わったかも?

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