直接税と受信料と購読料

2008年02月26日 | 読書
 月曜日の信濃毎日新聞で興味深い記事が載った。京大大学院准教授の佐藤卓己氏の月曜評論で「直接税と受信料と購読料」という題だが、実に中身の濃い内容だ。まだ手元にある場合はじっくり読み直してほしい。

 日本の公共放送はNHKのみだと考える人は案外多いが、民放放送の経営基盤は、直接的にはCMを流す私企業から得られる広告料であるが、しかしスポンサーが支払う宣伝費は、その企業の売出す商品の価格に組み込まれている。
つまりNHKが直接税なら、民放は間接税である。民放は無料ではないのである。
だから民放の国民に対する社会的責任はNHK以上だという。

 そして、この直接税=受信料の問題は、新聞や雑誌にとっても今や無関係ではない、として最近刊行された稲垣太郎氏の「フリーペーパーの衝撃」(集英社新書)は、無料配布される広告収入だけの紙媒体の急成長を詳細にリポートしている。

 最近無料の情報誌の台頭により、全国の有料タウン誌が次々に廃刊になっている。情報誌だけでなく「早稲田文学」のように創刊100年以上の伝統を持つ文芸誌さえ2005年から広告収入だけの無料誌になっているという。
 これが外国では新聞にまで及んでいるというのだ。新聞経営は購読料収入と配達費はほぼ同額であり、配達費をゼロにすれば無料での発行が可能となる。だから駅などターミナルに専用のラックを設置することで解決したのだという。これで都市部では「新聞は無料で読むもの」という常識が定着しつつある。

 よく考えれば、これは民放のビジネスを紙上で展開しただけといえないことはないが、民放が広告費により「公共放送」であるように、フリーペーパーも実際には「無料」ではない。

 一方若い世代は新聞をインターネットで読んでいる。いまや日本の新聞社にとって、NHKはの受信料問題はひとごとではない。ニュースペーパーにおける公共性の真価が問われている。
と結んであった。

 なるほどねー、と胸に落ちる話であった。本当にいろんなものが変わっていく。

 日本のように毎朝しっかりと新聞が届くというのは、幸せなことであり、日本人の教養にバラツキがないのもそのせいなんて考えられた時代もあったが、今や情報源は山ほどだ。
 最近また新聞の文字が大きくなった。それはうれしいことだけど、昔のようにじっくり読み応えがあるような新聞でもあってほしいとも思っている。
                    依田 美恵子
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