日銀は「そういうことをやると日銀の財務体質が悪化する」としばしばいう。水戸黄門の印籠のような感じである。リーマンショック後FRBや英国中央銀行がCPや社債、その他低い安全性の債権を大量に買い付けしているが日銀は殆ど変化なく前年どおりで、申し訳程度に購入増の姿勢だけ示す。消極的なのは損失がでると日銀の財務体質が悪化すると言うのである。
日銀が「財務体質が悪化する」といって仕事をさぼろうとするのは二つの意味で間違っている。
その一つは日銀は市中銀行と違って通貨を刷れるから損失をこうむっても財務体質の悪化など現実にはないのである。名目上「財務体質の悪化は避けなければならない」となっているだけで損失をこうむっても痛くも痒くもないのが日銀なのである。市中銀行は損失を蒙れば直ちに債務超過に陥る危険が生じる。そして多くの銀行が現実に倒産している。しかし破産に瀕した銀行をどの銀行を救いどの銀行を破産させるかを決めるのが日銀である。日銀は全ての銀行を救う事だってできる。「日銀が損失を蒙ると政府への日銀からの納付金が減り国民に迷惑をかける」と言うがその損失の十倍、百倍の日銀券を刷って政府に納付すればぜんぜん心配はない、お釣りが来るのである。
二つ目の理由は日本政府が1000兆円の公的債務に苦しみ、国民の給与が毎年減少し、国民が失業にあえぎ、自殺者が3万人を越えている現状を前にして、「財務体質が悪化する」と言う理由で何もしないことが許されるのかである。日銀は国家のためにある。国家を、国民を塗炭の苦しみに落とし入れたままで守らなければならない、日銀の財務体質とは何なのか。日銀は国家や国民より上にあるのではない。
日銀の財務体質を健全に維持出来たが国家が、国民が破産したというのでは話にもならない。それがありもしない「日銀の財務体質の悪化」を避けるためであるとすれば大笑いである。
繰り返しになるが日銀券の信用は日銀の信用ではなく、政府即ち国家の信用で持っている。政府が重度のデフレで苦しんでいるのであればそれがそのまま日銀券の信認に影響する。政府の財務体質と日銀の財務体質とが別に存在するのではない。偉そうにいつも「日銀の財務体質」を口にして政府と国民の苦境に背を向ける日銀は無責任である。
日銀をバカ呼ばわりしたがデフレの最中に歳出削減をする政府も日銀と同じ程度の大バカと考えている。誤解のないように付け加えると。