デフレとは「お金の使い方が少ないと発生する現象」である。日本が15年以上デフレから脱却できないのはお金の使い方を増やさなければならないのに歳出削減と増税でお金の使い方を減らしてきたからである。つまりアクセルを踏むべきときにブレーキを踏み続けたことが原因である。この失敗の原因は一般に理解されているようには見えない。安倍総理はデフレ脱却を掲げたが増税も財政再建も必要と考えている。これは相変わらずブレーキも必要と言う事であり、デフレ脱却には障害になる。これまで15年以上デフレを続けさせた「歳出抑制と増税」路線が健在であり、インフレ目標の実現を妨害する。
バブル崩壊とリーマン衝撃は同じ現象である。米国は4年でリーマン衝撃から立ち直り、ニューヨークの株価は現在史上最高値を更新中である。米国がリーマン衝撃時に行った対処法の通りにバブル崩壊時に日本が対処しておればデフレに陥ることなく順調な成長が続き、現在のGDPは900兆円くらいにはなっていたはずである。
リーマン衝撃時の米国はインフレを維持するだけでよかったが現在の日本はデフレからインフレへの転換が必要なのである。そのためには米国よりもっと大胆な金融、財政政策が必要である。日銀は市場から債権を大量に購入することを考えているが麻生氏が言うように全く不十分である。
日本では過去20年以上地価はー3%で下がり続けている。またバブル最盛期の東証の株価は38000円であり、昨年末の株価は9000円である。年率に直すとー10%で下がり続けてきたことになる。このことは株や土地に投じられる資金が20年間コンスタントに減少してきたことを意味する。デフレ脱却で+2%の物価上昇率を実現するということは土地や株に投じられるお金も当然増えるようにしなければならない。
そのためには禁じ手と言われてきた政府の財政資金を日銀が供給することつまり国債の日銀引き受けを大規模に行わなければならない。92兆円の年度予算は民主党時代より減っている。これではデフレ脱却は無理である。75兆円の国債を発行し、25兆円を日銀直接引き受けにし、総額120兆円の予算を組むことを拙著平成国富論では推奨している。来年の消費税増税は無期限に凍結する。お金を刷って政府が強力な財政出動を続け、+2%の物価上昇率を実現したとする。そうすると民間のお金も動き出し、消費と投資が盛り上がり、税収も増えてくる。デフレ脱却が実現するまで財政再建のことは考えないことが肝要である。財政再建を考えることが景気にブレーキを踏ませ、20年間も景気を低迷させた原因である。毎年25兆円前後日銀が直接引き受けで発行した国債は返さないでいいので、返さなければならない国債と返さないでいい国債とに分けて考えることが必要である。
安倍総理が円高・デフレからの脱却と言うのも間違っている。日本の不況は輸出企業だけの問題ではなく全産業に及んでいる。円高が原因ではなく、内需の不振(それを引き起こした歳出削減と増税)が原因である。円高は国民の財産が大きく評価されることであり国民の利益である。つまり円高は脱却すべきものではなく推奨すべきものである。デフレ脱却は円安によってではなく、国内での消費を増やす内需拡大で実現しなければならない。そのための120兆円の年度予算である。米国では株高とドル高は連動する。バブル崩壊前の日本でも株高と円高は連動していた。現在の日本で逆に円安と株高が連動するのは内需が異常に押さえられていることの表れであり、日本経済が不健全(つまりデフレ)であることを示している。
デフレ脱却が実現して+2%の物価上昇率が実現すれば数年しない内に株が上がれば円も上がるという内需主導型の健全な経済が出現する。そうなると1ドル=70円、60円が当然のように見えてくる。一人当たりのGDPは世界5位以内になっているであろう。それがデフレ脱却に成功した暁の日本の姿である。