↑ レンブラント(1606-1669)の「マギ(占星術の学者たち)の礼拝」1632年の製作 エルミタージュ美術館
後ろに立っている王らしい人物は、ヘロデ王です。学者たちが礼拝する幼子を殺そうとする人物です。幼子は十字架の殉難の死を受けるためにこの世に生れた「ユダヤ人の王」であり、世界の民を救うメシアであることが表現されています。
981-3302宮城県富谷市三ノ関坂ノ下120番地12 TEL:022-358-1380 FAX:022-358-1403
日本福音教団 富 谷 教 会 週 報
年間標語 『日々に、刻々と、肉の思いに生きようとする自分に死に、の思いに従って歩む者とされましょう。」
聖 句 「キリストの平和があなたがたの心を支配するようにしなさい。この平和にあずからせるために、あなたがたは招かれて一つの体とされたのです。いつも感謝していなさい。」(コロサイ3・15)
降誕節第1主日 2018年12月30日(日) 午後5時~5時50分 (年末礼拝)
礼 拝 順 序
司会 田中 恵子姉
前 奏 奏楽 辺見トモ子姉
讃美歌(21) 258(まきびとひつじを)
交読詩編 21(主よ、王はあなたの御力を喜び祝い)
主の祈り 93-5、A
使徒信条 93-4、A
司会者祈祷
聖 書(新共同訳)マタイによる福音書2章1~12節(新p.2)
説 教 「東方の占星術の学者たちの礼拝」辺見宗邦牧師
祈 祷
讃美歌(21) 358(小羊をばほめたたえよ)
献 金
感謝祈祷
頌 栄(21) 24(たたえよ、主の民)
祝 祷
後 奏
次週礼拝 年始礼拝1月6日(日)午後5時~5時50分
聖 書 ルカによる福音書3章15~22節
説教題 「イエスの洗礼」
讃美歌(21) 368 278 24 交読詩編 104
本日の聖書 マタイによる福音書2章1~12節
2:1イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、2言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」3これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった。4王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。5彼らは言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。6『ユダの地、ベツレヘムよ、お前はユダの指導者たちの中で決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』」7そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。8そして、「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう」と言ってベツレヘムへ送り出した。9彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。 10学者たちはその星を見て喜びにあふれた。11家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。12ところが、「ヘロデのところへ帰るな」と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分たちの国へ帰って行った。
本日の説教
イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムで生まれました(マタイ2・1)。この王は、紀元前40年に、ローマ帝国の元老院に承認されて「ユダヤの王」の称号を与えられ、イドマヤを含む、ユダヤ全土の支配者に任命されました。彼はエルサレム神殿を改築するなどの偉業を成し遂げたので、ヘロデ大王と呼ばれました。彼はユダヤの南に隣接するイドマヤ出身で、イドマヤ人とユダヤ人との間に生れた人です。生粋のユダヤ人ではありませんでした。彼の統治は紀元前4年の死をもって終わりました。イエスの誕生した年は、ヘロデ王が死ぬ前の紀元前6年~4年頃になります。
その時、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」人々に尋ねました。<占星術の学者たち>とは、本来ペルシアの祭司階級に属する人達です。彼らは、天文学、薬学、占星術、魔術、夢解釈をよくし、人の運命や世の動きについて神意を伝える人たちでした。ユダヤの<東の方>とは、おそらくペルシア(イラク)、当時はパルティア王国と思われます。彼らは千数百キロもある道をメシア(救世主)を求めてやってきたことになります。四か月もかかる旅でした。ペルシアの他にアラビア説もありますが、アラビアはユダヤの南になります。
この学者たちが、はるばるメシアを求めてやってきました。メシア待望が、アッシリアやバビロニア(イラク)によって国外に散らされたユダヤ人やユダヤ教への改宗者を通じて、東の国々に伝わり、ユダヤ人でない者にとっても、ユダヤの地から世界を救うメシアが登場することが期待されていたと思われます。
<占星術の学者たち>は、星を見て神に示され、世界の救い主となる「ユダヤ人の王」が生まれたことを知り、星による神の不思議な導きによって、<東の方から>ユダヤの都エルサレムを目指してやってきたのです。
これは民数記に記されている預言が実現したことになります。「ひとつの星がヤコブから進み出る。…ヤコブから支配する者が出る」(民数記24・17,19)とあります。神は星を用いて世界の救い主となる方の誕生を知らせたのです。メシア誕生の知らせが、エルサレムにいる王や祭司長たち、ユダヤ人に伝えられたのではなく、当時は地の果てにも等しいペルシアの、神の救いの計画から遠いと思われたていた異邦人に伝えられたのです。後にイエスは、神のことばを拒み、救い主を受け入れないユダヤ人に対して、「神の国はあなたたちから取り上げられ、それにふさわしい実を結ぶ民族に与えられる」と言っています(マタイ21・43)。
ところがこれを聞いたヘロデ王は動揺しました。ヘロデは自分こそユダヤ人の王であると自認していました。自分の知らないところで、新しく王となるべき子が誕生したという噂(うわさ)を聞いて、不安に思ったのは当然です。ヘロデはユダヤ人とされていますが、純粋なユダヤ人ではなくエドム人とユダヤ人の間の子でした。ヘロデ王は、民に認められた王というよりは、ローマに認められた王でした。いつか誰かに王位を奪われないかと常に猜疑心の強い王でした。ヘロデは王権維持のために、あらゆるヘロデに反対する動きには徹底的な弾圧を加え、弟を暗殺し、妻を処刑し、二人の息子まで処刑したのです。
またメシア誕生の知らせに、<エルサレムの人々>も同様に不安を抱いたとあります。神の民として選ばれながら、メシアを受け入れようとしない、心が頑なで、不信仰なユダヤ人を示しています。エルサレムの人々は、律法学者や祭司ら共に、キリストを十字架につけることを求めた民衆でした(マタイ27・22)。
王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただしました。<祭司長たち>とは、大祭司一門に属する者達で、神殿の職務をする人たちです。また<律法学者>は、律法の書である旧約聖書の学問的研究に専念し、その解釈と教育に当たった職業的な学者です。彼らの聖書解釈は民衆の生活を律していました。律法学者の上級の者は最高法院のメンバーでした。
ユダヤ教の首脳部であるこの二つのグループは、メシア誕生の地は、「ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。『ユダの地、ベツレヘムよ、お前はユダの指導者たちの中で決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』(ミカ書5・1、サムエル記下5・2)」と言いました。彼らは聖書を正しく解釈し、メシアの誕生の場所まで知りながら、メシアを迎えようとはしませんでした。
そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめました。その時期を知ることのよって、その子の年齢を割り出そうとしたのです。ヘロデは、メシア誕生の地は、ユダヤのベツレヘムであることを伝え、「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう」と言って、ベツレヘムへ送り出しました。ヘロデがメシア誕生の場所を尋ねたのは、そこへ行ってメシアを拝むためではなく、メシアを殺すためだったのです。後に、学者たちに確かめておいた時期に基づいて、メシアとなる男の子の年齢を割り出し、ベツレヘムとその周辺一帯にいた二歳以下の男の子を、一人残さず殺したのです(2章16~17節)。
イエスの生まれたベツレヘムは、エルサレムの南約9キロメートル、標高約750メートルの小高い丘の上に位置しており、古代イスラエル統一王国を築いたダビデ王の誕生の地です。東から来た学者たちが王の言葉を聞き、聖書の預言を知って出かけると、再び東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まりました。学者たちはその星を見て喜びにあふれました。家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられました。ヨセフの名が記されていないのは、聖霊によって妊娠した処女マリアの特別な位置を示唆しています。
彼らは床にひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げました。床にひれ伏して拝む行為は、幼子を救い主として礼拝したのです。彼らが見出した幼子は後光もなく、王冠も王座もありませんでした。ごく当たり前の一人の幼児でした。しかし彼らはメシアであると信じたのです。光り輝く星がそのしるしであり、神が与えたあかしでした。
学者たちはメシアを拝んだだけではなく、宝の箱を開けて、彼らの最も大切な宝、最も高価な、黄金、乳香を献げました。乳香はや北東アフリカや東南アラビアで産するの力ンラン科のニュウコウジュから採れる芳香のある白色の樹脂であり、神に供え物とともに香炉で焚いてにささげる香です。没薬も、北東アフリカや南東アラビアなどに産するカンラン科のミルラ低木から採った少し黄色い樹脂で、香料や薬用、防腐剤として用いました。古代エジプトではミイラ製造の際に用いました。
「シェバの人々は皆、黄金と乳香を携えて来る。こうして、主の栄光が宣べ伝えられる」(イザヤ書60・6)という預言のことばがここに響いています。黄金は高価な宝です。乳香は高価なアラビア産の芳香のある樹脂であり、没薬もアラビア産のミルラ樹の香料の樹脂です。どちらも、宗教儀式で用いられ、没薬は薬品としても用いられ、当時は非常に高価な輸入品でした。
学者たちは、「ヘロデのところへ帰るな」と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分たちの国へ帰って行きました。学者たちは夢で主の示しを受けたのです。
今日の聖書の箇所は、<ユダヤ人の王>としてのイエスをめぐって二つの人物群が全く反対の態度をとったことが語られています。外国の学者たちは、遠路はるばるイエスを訪ねて来て、彼を礼拝しました。他方ユダヤ王ヘロデは、新しい王の誕生を聞いて、その幼児を抹殺することを企てるのです。また、祭司長たちや律法学者たちは、メシア誕生の地を知りながら、世に誕生したメシアに無関心であり、迎えようとはしませんでした。エルサレムの住民も同様でした。救い主イエスの誕生をめぐってのこの二つの態度は、一人一人の人間の心に中にもあります。神の御子の主権の前にひれ伏して拝するか、それとも、自分の主権を守ることを完全にはやめようとはしないのか、の二つの相反する心があります。
イエスの誕生は、真理の光が世に現れ、それが世界の隅々にまで現れていく出発点になりました。主の栄光が特定の人々にではなく、公に現された日です。 「起きよ、光を放て。あなたを照らす光は昇り、主の栄光はあなたの上に輝く。」このイザヤ書60章1節の預言が現実のものとなりました。クリスマス・シーズンは、御子の降誕を感謝し、祝うと共に、再び来たりたもう御子の再臨を待ち望むときでもあります。今日は年末礼拝です。御子の十字架と復活によって、救いを与えられ、この一年を守られ、導かれて過ごすことが出来たことを感謝し、新たに恵みの年を迎えてたいと思います。多くの人々が神の大きな愛を知り、救いにあずかって、幸せな人生を送ることができるように祈りたいと思います。
レンブラント 1657年製作 「王たち、マギたちの礼拝」英国王室コレクション
この絵もレンブラントの作品です。右手に見えるのがヘロデ王です。幼子のそばに立っている人物は、王冠のようなものを持っています。幼子が王冠を受けるのにふさわしいことを表現しているのでしょうか。ヘロデ王はそれを見て驚いています。
ルーベンス 製作年 1609-1629 プラド美術館 立っている赤い衣の人物は、ヘロデ王。その後ろの集団は幼児を殺そうとする者たちでしょうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます