Othello

2005年02月27日 19時20分06秒 | Weblog
Othello
あらすじ

 オセローは、ヴェニス政府に仕えるムーア人である。彼は数々の戦で手柄を立て、周囲から尊敬されていた。その彼が議官の娘デズデモーナに恋をし、彼女も彼を愛するようになった。彼女は父ブラバンショーの反対を恐れ、屋敷を抜け出して密かに二人は結婚式を挙げたのだった。

 オセローの旗手であるイアーゴーは愛想のよい外見の下に、卑しい本性を隠している人物である。彼は副官になれなかったことでオセローを憎み、常に彼を陥れることを考えていた。そこで彼はヴェニスの紳士であり、デズデモーナに恋をしているロダリーゴをそそのかし、彼と共にブラバンショーの屋敷へ行く。オセローとデズデモーナが結婚したと言う知らせに逆上したブラバンショーは、一隊を集めて、自分の娘を盗んだオセローを探しに通りに飛び出す。まもなく彼はオセローが元老院に向かって行くところに出会う。剣を抜くブラバンショーにオセローは、剣をしまわせて大公が来ている事を告げる。

 会議室では大公や議官などが集まり戦術が練られていた。トルコの艦隊がキプロス島へ進撃しつつあるという。そこでキプロス島の要塞に詳しいオセローが派遣されることになる。大公たちにオセローは犯罪者であると訴えるブラバンショーに対して、オセローは、自分の罪は父親から娘を連れ去り、結婚したことだけであり、いかなる魔術も魔薬も使っていないと言う。そしてどのようにして二人が恋に落ちたかを語る。最初はオセローの話を信じないブラバンショーだったが、その場にデズデモーナもやって来て、自分の娘がオセローを愛していることを知り、二人を許す。

 デズデモーナに遅れてキプロス島に到着したオセローは、トルコ艦隊を退治し、戦勝と結婚の祝いの宴会を開く。その席でオセローの副官であるキャシオーは泥酔し、オセローの前任者を傷つけてしまう。しかしこれは全て善人の顔をしたイアーゴーの陰謀だったのである。そうとは知らないオセローは、イアーゴーの話を鵜呑みにし、キャシオーを副官の座から解いてしまう。

悲嘆にくれているキャシオーの元にイアーゴーは現れ、デズデモーナに復職させてもらうよう頼むように言う。彼女の願いなら、オセローも断ることはできないだろうというイアーゴーの意見に賛成したキャシオーは、早速実行する。その現場をオセローに目撃させて、イアーゴーはオセローにデズデモーナがキャシオーと密会していると告げる。そんな話など信じないオセローに、イアーゴーは更に、デズデモーナのハンカチをキャシオーが使っているのを見たと話す。そのハンカチとは、オセローが初めてデズデモーナに贈った物だった。だんだんとその話が真実であると感じ始めたオセローは怒り、イアーゴーにキャシオー暗殺を命ずる。

 不義の噂が立てられていることなど知りもしないデズデモーナは、キャシオーの願いをかなえてやろうと、オセローを説得しようとする。彼女がしつこく頼めば頼むほど、オセローは妻を疑っていく。そして例のハンカチを見せろと迫るのである。

 オセローに更なる追い討ちをかけるため、イアーゴーは、オセローにキャシオーと彼の情婦ビアンカの話を立ち聞きさせる。イアーゴーがキャシオーの家にわざと落としたデズデモーナのハンカチを、今ではビアンカが持っていてその場面を見せるためであった。オセローはそのハンカチを目にした瞬間、妻の不貞を確信し、殺害を決心する。

 キプロスにヴェニスから大公の使者がやって来る。その手紙にはオセローの後任として、キャシオーの名が書かれている。同席していたデズデモーナはヴェニスに戻れることを喜ぶのだが、キャシオーが復職したことを喜んでいると解釈したオセローは、使者たちを前にして妻を殴り、周囲のものたちを驚かせる。寝室に戻ったオセローは、もはや妻のことを全く信じられず、彼女のことを淫売と呼ぶ。それでもデズデモーナはオセローのことを愛していると言い、侍女のエミリアに、結婚式の日のシーツをベッドに敷くように頼む。その夜、デズデモーナは床に入る準備をしながら「柳の歌」を歌う。

 イアーゴーは邪魔になったロダリーゴを再びそそのかし、今度はキャシオーを殺すよう嗾ける。デズデモーナにキプロスに留まって欲しいロダリーゴは、キャシオーを殺そうとして失敗し、反対にキャシオーに刺されてしまう。その隙を突いて、イアーゴーは後ろからキャシオーの脚を傷つける。結局、ロダリーゴは息を引き取り、キャシオーは一命を取り留める。

 デズデモーナが眠っている寝室にオセローが入ってくる。彼は目を覚ましたデズデモーナに、お祈りをして神様からのお赦しを請うように言い、罪を告白させようとする。オセローは、最後まで身の潔白を訴え続けるデズデモーナをベッドの上で圧し殺してしまう。そこへエミリアがやって来て、虫の息のデズデモーナを発見する。誰が殺したのかと問い詰めるエミリアに、死の淵のデズデモーナは、無実の罪で死ぬこと、自分が全て悪く、そして最後には優しいオセローによろしくと遺して死んでいく。彼女の死後、エミリアは、デズデモーナの不貞の噂を流したのは自分の夫イアーゴーであったことを知る。そしてエミリアがデズデモーナのハンカチを拾い、夫に渡したことなど真実を話し始める。身の危険を感じたイアーゴーは妻を刺して逃げ去る。

 オセローは自分の親友イアーゴーの裏切りを知り、絶望感を抱く。かつての栄光を懐かしみ、デズデモーナを殺してしまったことを今さらながらに嘆くのである。彼はヴェニスへ帰る使者たちに、この不幸な出来事を伝える際、ありのままの自分を伝えるよう依頼する。そして隠し持っていた刀で自らを刺し、デズデモーナの眠るベッドで息を引き取る。

作成:深津美帆
みどころ

 オセローとイアーゴーは対照的である。心の純粋なオセローに対して、悪事を働いて人が悲しむのを喜んで見ている悪人イアーゴー。しかし、一体何がイアーゴーを悪事に駆り立てているのだろうか。冒頭で、副官の座をキャシオーに奪われ、彼を憎んでいるのは理解できるが、なぜオセローに対してひどい憎しみを抱いているのだろうか。それは自分の卑劣さに比べて、オセローの人望の厚さと、彼の高潔さを妬む気持ちがあったのではないだろうか。一人の野心家が野望を抱き、人を蹴落とし、上を目指す。そのためにイアーゴーは言葉によって、オセローを罠に陥れようとする。しかし最終的にはオセローの高潔さも、デズデモーナの忠実さも滅ぼすことはできない。結局、陰謀は達成されることなく終わるのである。

 一方、オセローはというと、軍人として周囲から尊敬の眼差しで見られている反面、とても粗野なところが見られる。なぜ、彼は自分の妻ではなく、自分の部下の言うことを信じたのだろうか。妻の不貞は耳からによるものだけだったが、『空騒ぎ』のクローディオと同様に、オセローにとってハンカチという決定的な証拠を目で確かめることによって、オセローはその虚偽の報告を信じてしまう。男性は妻や恋人よりも、部下もしくは仲間の意見を聞き入れるようである。

 また、この劇で最も印象的なシーンは5幕3場である。それはデズデモーナが、無実の罪を着せられ、どんなに身の潔白を訴えても夫に聞き入れてもらえず、就寝前に「柳の歌」を歌う場面である。「柳」は西洋では、報われぬ恋、実らぬ恋を表す。『ハムレット』のオフィーリアが死ぬ場面でも、柳の木が茂っている。つまりなぜデズデモーナはこの歌を歌うかと言うと、ただ少女が歌っていたから思い出したと言う理由だけではなく、夫への忠実な愛、そして自分自身を信じてもらえず、悲嘆にくれる彼女の心情を表しているのである。そして歌が頭から離れないと言っているのは、自分も死期が近いことを悟っていたのだと思われる。

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