カトリーナ直撃の病院で重症患者に安楽死? 当局捜査着手

2005年10月14日 06時20分59秒 | Weblog
2005.10.13
Web posted at: 15:51 JST
- CNN

米ルイジアナ州ニューオーリンズ(CNN) 大型ハリケーン「カトリーナ」の直撃で甚大な被害に遭った米南部ニューオーリンズの病院で、重症患者を安楽死させたのではとの疑惑が浮上し、州司法当局が捜査に乗り出した。また複数の病院関係者はCNNに対し、被災直後の病院ではスタッフが安楽死について真剣に話し合っていたと明らかにした。

安楽死の疑惑が取りざたされているのは、ニューオーリンズのメモリアル医療センター。ルイジアナ州司法当局は、同病院で安楽死が行われたとの情報をもとに、カトリーナ被災後に病院から運び出された45人の遺体について、改めて司法解剖を行うよう命令した。

ニューオーリンズのミンヤード検死官によると、捜査員は安楽死が行われたようだと見ているという。「何か致死効果のある薬物を注射して回る人がいたようだと見ている」と検死官は話した。

防波堤決壊で市内が最悪の状態となっていた当時に同病院に勤務していたブライアント・キング医師はCNNに対し、自分自身は安楽死を施す行為を目撃したわけではないが、「あってはならないことが起きてしまったと、ほとんどの人が知っていた」と話した。

CNNが取材した複数の病院関係者によると、堤防が決壊した8月29日から2日の間に、病院内は極限状態に達したという。

「病院としてはほとんど機能していなかった。病院というよりは、避難所に過ぎなかった」とキング医師は話す。「電気も水道も止まっていた。病院の中は暑くて、次々と人が死んでいった。これ以上ないというくらいひどい状態だった。どうして避難させてもらえないのか。みんなそればかり気にしていた。今すぐここを出るべきなのにって」

食糧は底をつき始め、汚物処理もできず、衛生状態は悪化し、病院内の温度は摂氏43度を超えた。入院患者312人のうち多くが重症患者だったこの病院は、洪水によって孤絶状態にあった。カトリーナ直撃前から、病院スタッフや家族の関係者が病院に避難してきており、中は満員状態だった。

看護師長のひとり、フラン・バトラーさんは「戦場のようだった。野戦病院にいると同じぐらいひどい状態だった」と話す。

「看護師たちは私に、どうすればいいのかと聞いてきた。患者たちを楽にさせてあげるべきだと。そのための方法を聞いてきた」とバトラーさんは話す。

バトラーさんによると、医師の1人が彼女のもとにやってきて、重症患者の安楽死について話しはじめた。「医師は、自分はそんなことは絶対に認めないし、協力しないと話していたが」とバトラーさんは言う。バトラーさん自身、実際に安楽死を施す行為は目撃しなかったし、自分自身も協力するつもりはなかったと話している。また「病院スタッフは、生き延びる患者も死んでいく患者も、ともかく全ての患者のために全身全霊を尽くしていた」と強調した。

しかしキング医師は、スタッフは安楽死についてただ仮定として話し合っていただけではないはずだと指摘する。9月1日の朝になると別の医師がやってきて、満足な手当が受けられずに苦しんでいる重症患者を楽にさせてあげるべきではないかと病院の運営陣や別の医師たちが話していたと、報告した。

キング医師にこの話をした医師は安楽死に反対していたが、別の医師が「自分ならやる」と応じていた様子を話したという。

このやりとりから約3時間後、患者手当の優先順位を決める「トリアージ」作業を行っていた2階部分では、患者と、病院運営スタッフと医師2人以外は人払いがされた。ここでトリアージを担当していたキング医師によると、運営スタッフは残った人たちに、一緒に祈りを捧げるよう呼びかけた。カトリーナ直撃後、病院内で集団で祈るなどということはこれが初めてだった。

すると、医師の1人がたくさんの注射器を取り出したという。

「注射器に何が入っていたかは知らない。取り出した医師はただ『気分が楽になるものをあげましょう』とだけ言っていた」とキング医師。「医師が何を投与するつもりだったのかは知らない。しかし私たちはそれまで、苦痛緩和剤のようなものは一切、使っていなかった。そういう指示はなく、そのための薬も配られていなかった」

これから何が行われるか察知したというキング医師は、かばんをつかんでその場を飛び出した。出る間際に、医師のひとりが自分を抱きしめたという。キング医師はそのままボートに乗り、病院を後にした。

ルイジアナ州司法当局は今月初め、キング医師から当時の様子について事情を聴取。司法解剖を命令し、捜査に着手している。

メモリアル医療センターの運営会社テネット・ヘルスケアはCNNに対し、死亡した45人は重体患者だったと説明している。また11人はハリケーン直撃前の週末に死亡し、遺体安置室に置かれていたという。

しかしキング医師はCNNに対し、いくら非常事態だったとはいえ、短期間に45人もの患者が死亡したのは不自然だと主張。「ある晩には患者1人が死亡した。その前日には2人が亡くなった。しかし9月1日と2日だけでその10倍もの患者が次々と死亡するなど、とてもではないが理に合わない」

安楽死現場に居合わせたとキング牧師に名指しされた病院運営スタッフはCNNに対し、「患者が大勢いる部屋にいたことも、祈りを捧げたことも記憶にない」と話し、キング医師はうそをついているに違いないと反論した。

キング医師に最初に安楽死の話題をもちかけたとされる医師は、CNNの取材を拒否した。たくさんの注射器を手にしていたとされる別の医師は、CNNの電話取材に数回応じ、「患者たちを救うために可能な限りのことを全力でやった。政府は私たちを完全に見捨てた。私たちの多くは間違いを犯したかもしれないが、あの状況で最善と思える判断をした」とコメント。安楽死のため患者に致死薬を施したかどうかについては、返答しなかった。

運営会社テネット・ヘルスケア広報はCNNに文書を電子メールで送付し、「ハリケーン・カトリーナ直撃後、メモリアル医療センターの医療チームと職員は、きわめて困難な状況下で患者の命を救うため果敢に働いた。8月31日朝に始まり、9月2日に完了した避難活動で、患者、家族、医師、スタッフなど計約2000人がボートやヘリコプターで無事に避難した。ハリケーン上陸後に市内の病院や老人ホームで起きた全ての死亡事案を、ルイジアナ州司法長官が捜査していることは承知しており、われわれは完全な支援と協力を約束している」とコメントした。

メモリアル医療センター内で重症患者に長期的医療サービスを提供している医療会社ライフケアもCNNに電子メールで「メモリアル医療センターで働いていたライフケア従業員は、きわめて困難な状況下で英雄的な活躍をした。ライフケアは、安楽死に関する話し合いが行われたという事態について承知していない」とコメントした。

http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200510130010.html

その場にいた医者、看護婦、病院スタッフ達は極限の選択を迫られたのでしょう。

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