「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

梅雨の音教科書にある飢饉絵図 芳賀翅子

2020-07-20 03:44:40 | 日記
近年の異常気象や頻発する自然災害、わが国の食糧自給率の低さなどが思われる二物衝撃の句。「梅雨の音」には雨の音ばかりでなく、車が水を跳ねる音とか、防災無線が何かを伝えていたりという、生活音なども含まれると思うが、おおむね静かなイメージである。しかし、雨の降りようが、強く、長く、気がかりの表現として「飢饉絵図」が配されたかと思う。「教科書にある」と記され、「江戸の三大飢饉」が思われたが、習った以外にも、災害は繰り返し起きており、多くの人びとが命を失い,生き伸びた人びとは復興に励み、人口回復や人口増の時代を迎えると次の災害に襲われる。この繰り返しが今の社会に繋がる歴史でもある。「梅雨の音」に澄ます聴覚を「飢饉絵図」の惨状という視覚に落とし込み、災害に身構える作者であり、防災ということを思わないわけにはいかない読者としての私であった。そして、6月4日からの九州地方を中心とした豪雨により、被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げ、被災地の一日も早い復旧を、お祈り申し上げます。(博子)