「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

遠くからよう来なさつた雪ばんば 阿部風々子

2020-02-21 04:07:45 | 日記
そろそろ雪が降るかという時期に現れる雪ばんば(綿虫)。遠くから、それも寒い中、よくおいで下さいましたと客人を労うやさしい語り口が雪ばんばのふわふわ飛ぶ様子とよく合っている。この季語の長閑さとかメルヘンの内包を思えば、幼馴染だろうか。古里や、そこでのたくさんの思い出を語れる人のような気がする。迎える温和な笑顔が見えるようだ。たぶん年賀正を欠かさず出して、何度か変わった住所を知らせていた大切な人なのだろう。作者は89歳と記憶している。筆まめで、私にもPCメールで近況や句評を送って下さる。そしていつも「あんまり頑張るんでないよ」と書いてある。忙しいけれど何とか頑張れるのはそんな優しい言葉のせいかもしれない。(博子)