「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

東京の立体交差蚊喰鳥 渡辺登美子 「滝」8月号<渓流集>

2013-08-15 17:01:35 | 日記
 東京の立体交差と言うのですから、鉄道路線や道路を思い
浮かべますが、人間と野生動物の生活上の道筋が交差する不
都合を避ける目的で立体化する設備・施設なども含むそうで、
地名から受ける立体交差の混みようは相当な物で緻密な計算
を思います。片や蝙蝠。超音波を発し、その反響を察知する
ことで、飛行中の仲間や障害物を避け昆虫を見つけ捕食しま
す。両方の、似て非なる空間の在り方が詠まれた夕景と思い
ました。今、人間の暮しの中では殺虫剤が害虫を退治するの
ですが、嘗ては、蚊喰鳥の名を持つように、一匹が一日で三
百から五百の虫を食べるため、蝙蝠は農作業を邪魔し作物を
荒らす敵の頼りになる益獣だったそうで、たくさん飛んでい
る姿を少し怖くも思うのですが、武者小路実篤が「ぼくの子
供の頃には丸ノ内で飛んでましたよ」と言ったそうです。大
胆な二物衝撃の句に、私の知らない時代の東京を調べてみた
い衝動に駆られた句でした。(H)