「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

蛍の夜同じ星座の人と会ふ 中井由美子 「滝」7月号<瀑声集>

2013-08-02 05:27:35 | 日記
  物語性があり意味深長な雰囲気が漂う句である。「ゆるや
かに着てひとと逢ふ蛍の夜 桂信子」の句と通じるものがあ
る。蛍は大昔には人間の霊魂であると伝承され疎まれたが、
平安の恋多き歌人和泉式部がその歌に「沢の蛍も・・・」と
著した頃から恋の歌に寄り添うものとなった。揚句は桂さん
の句より初々しく今様である。星座占いを女子高生みたいに
半ば信じる俗物の私は、蛍の夜にその人と何があったの?初
恋の人とでも出会ったの?と聞いてみたい。意外性があり乙
女チック。だが、蛍の成虫の生命はわずか10日ほど。命を尽
くして瞬き合い子孫を残すという現実も透けて見える。
(あいざわ静子)