哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

絶叫首相とその時代(週刊新潮今週号の「人間自身」)

2005-10-29 05:10:21 | 哲学
 池田晶子さんの週刊新潮連載今週号の「人間自身」は、「絶叫首相とその時代」という題でした。

 適宜要約すると、「郵政法案の関係で苦しい言い訳は情けない。政治家は言葉が命だから軽々に撤回するのは自殺行為と言っていい。一方で「命を賭けている」という絶叫は勘違いである。本来政治は利害関係の調整だから、分かりやすいスローガンで切り捨てられるものに思いをいたさねば必ずや破綻する。絶叫するのは自信がないか、パニックか。首相はヒトラー同様のワーグナー好きらしいが、国民は首相と一緒に命を賭ける気はない。」

 近年のテレビ型政治(主にテレビ媒体によるマスコミでのイメージを重視する政治手法)の究極の状況が、今回の郵政解散結果に現れてるように思います。郵政民営化法案がどんな内容か、国民がどれだけそれをわかって投票したのか。小泉首相から伝わったメッセージは「改革を!」というだけで、改革の中身は本当に改革といえるのか、また他の改革の内容は不明です。例えば選挙前に消費税率に触れないようにかん口令をしいたのがいい例です。郵政だけを確認する選挙なら、それ以外の政策全般について即再選挙すべきでしょう。ただ政策のあいまいさは、自民党のみならず民主党も同罪ではありますが。

 池田晶子さんの文とは少し趣旨が離れてしまいましたが、テレビ型=わかりやすさ=思考停止(一億総白痴化)の話は、これまでも繰り返し池田さんは書かれています。政策ではなく、絶叫の言明のかっこよさで選挙が左右されているとすれば、池田さんの書かれている「ヒトラー」のごとく民主制のもとで合法的に独裁政治が実現できるでしょう。

 しかしタレント議員を選ぶようなレベルではない、国民の政治的見識の向上がなければ、国民も知らず知らずのうちに「命を賭けさせられる」ことにしかなりません。ただ池田さんのおっしゃるように、政治は「所詮この世のこと」ではありますが。