哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

千 玄室さん

2005-10-30 23:53:59 | 知識人
 裏千家の前の家元である千玄室さんの記事が、今週の朝日新聞に連載されていました。「一椀からピースフルネス(平和)を」というわかりやすいメッセージで、茶道という日本の伝統文化を通じての世界中との平和交流を図っているとの内容でした。

 正統派的な表千家に対して、「裏」千家は名前の上でハンディを背負わされているように見えますが、それゆえにか積極的に外部と交流し、国内でも国外でも圧倒的な勢力というか地盤を築かれたようです。

 玄室さんはだいぶ以前の日経新聞の「私の履歴書」にも千宗室として登場され、小さい頃から芸術と伝統文化の英才教育を受けておられたことが印象的でした。しかし今回の連載にもあるとおり、若い頃のクライマックスは特攻隊として出陣を待ちながら終戦を迎えたところでしょう。

 特攻隊等の軍隊に居ながら生きて終戦を迎えた方の言動の多くは「先に死んでいった仲間に申し訳ない」という気持ちであったとよく聞きます。実際に後を追うように自死した方も少なくないそうですが、玄室さんは一度は死んだ身として、寺に入って修行したそうです。しかし一度は死を覚悟したということによる一種の驕りを師匠に叩き直されたそうです。

 死を覚悟することが決して偉いことではない、と若者を指導した師匠の考え方は、池田晶子さんのよく言う「死は無である。無いものはわからないのだから、恐れることもない」という言明を思い出します。
 池田晶子さんの言葉と禅の思考とは、なぜか親和性の高さがあります。