哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

絶対安全人生(週刊新潮今週号の「人間自身」)

2006-05-21 22:28:25 | 哲学
 池田晶子さんの週刊新潮連載「人間自身」今週号は、「絶対安全人生」という題でした。ポイントとなる文を要約しつつ抜粋します。

「生きている者は必ず死ぬ。先のことはわからない。これが人生における最大の当たり前、常識である。
 ところが、多くの現代人はこれらの常識を認めようとせず、思わぬことが起こると、他人や社会のせいにする。しかし、人生が危険なものであるのは本来であって、社会のせいではない。」

 話の発端は、公園で犬を放してはならないという規則についてで、池田さんは、「状況に応じて自由に善悪を判断すべきであって、規則に判断を委ねるべきではない」とも書いています。



 いつものことですが、なぜか池田さんは犬に関する話になると、「らしくない」文章になってしまいます。「・・べきである」とか「・・べきではない」という言い方は、本来池田さんは意識的に避けているはずです。「・・すべき」という当為の言い方については、「一体誰が誰に命令しているのか?」というように、その一方的な押し付けた言い方を嫌います。なぜなら「考える人間が行動する」ということは、誰からかの命令を受けて無思慮に従うことではなく、自ら考えて行動することでしかないからです。

 だから、上の文章では、「規則に判断を委ねるべきではない」ではなく、「規則に判断を委ねることで人生が安全になるのか、よく考えてみたらよい」というのが、池田さんらしい文章でしょう。