風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

全ては政局へ(下)経営

2010-05-08 15:57:59 | 時事放談
 万年野党だった民主党が政権を獲ってまだ一年にも満たないのに、世間が見る目は厳し過ぎるところがなきにしもあらずですが、どうしても、もう少しマシだったら・・・という思いを強くするのは致し方ありません。それは期待が大きかったことへの反動であり、また、鳩山さんをはじめとする民主党の運営が余りにもお粗末過ぎることへの失望の表れでもあります。
 民主党に欠けているものは、いろいろ挙げられるでしょうが、端的に「マネジメント(経営)」だろうと私は思います。人はいろいろなレベルで「マネジメント」を実践します。子供の頃から小遣い帳をつけ始め、やがて数千万円レベルの生命保険を購入したり家のローンを組み、家庭の主婦は家計を遣り繰りします。企業はともかくとして、市町村や都道府県などの地方自治体、そして国家にも「マネジメント」がなければ、夕張市やギリシャのように財政破綻寸前まで行ってしまいます(決して他人事ではありません)。マイク・タイソンはあれだけのファイト・マネーを稼ぎながら、何故、今は金がないのか? 日本の偉大なスポーツマンや成金の芸能人にもよく見られることですが、金を稼ぐことと、金持ちであることとは、同義ではありません。マイク・タイソンは“算盤”が出来なかったから、という小話があります。億の桁の金が動けば、当然、蟻が甘いものに集まるように、有象無象が言い寄って来ることでしょう、そうした中で自分の金を如何に守るかは容易なことではないでしょう。小泉改革が一時的にせよ国民に広く受容されたのは、少なくとも経営的な発想があったからだろうと思います。ところが鳩山政権には、残念ながらどこをどう引っくり返しても、なかなか経営のケの字も出て来ません。
 財政に限りません。国家には国境があり、領域を守る経済・外交・安全保障面でのマネジメントも必要です。
 たとえば先月の話ですが、竹島に、韓国はヘリポートを設置するなど不法占拠を続けていますが、それを30年振りに改修する動きが報じられています。9月に完成した暁には、重量25トンの軍用輸送ヘリが離発着でき、警察一個部隊(約40人)の緊急派遣が可能になり、韓国政府はこれを突発的な軍事衝突に迅速に対応する目的だと明確に伝えているにも係わらず、岡田外相は、こうした韓国の既成事実の積み重ねを牽制する積もりはさらさらないらしく、「不必要な摩擦を招かないため」などと遠慮して、日本政府が基本的な立場としている「韓国の不法占拠」という表現を国会答弁で使おうとしません。しかも竹島の北西1キロ地点という日本の領海内に、水深40メートルの海底から洋上に達する海洋科学基地の建設工事を9月から開始するため、既に国家予算(約25億円)が承認され、周辺海域で海底地質調査を始めており、政府関係者によるとこの基地は「韓国の排他的経済水域の確保と、竹島の主権強化を深める基盤にするため」と報じられているにも係わらず、です。
 先月は中国も、日本の反応を探るような露骨な威嚇行動をとりました。ミサイル駆逐艦など10隻を南西諸島から沖ノ鳥島近海にまで進出させたり、中国艦載ヘリを海上自衛隊護衛艦へ異常接近させ、こうした軍事威嚇に「慣れるべきだ」などと中国紙は勇ましく論評したそうですが、鳩山首相は警告する意図は毛頭ないらしい。
 湾岸戦争の時の米国統合参謀本部議長であり、後にブッシュ政権の国務長官を務めたコリン・パウエル氏は、「マネジメントはサイエンス」だと言いました。鳩山さんの「思い」だけは折に触れ熱弁され(余り心がこもっているようには見えませんが)、政治「哲学」としての「友愛」はなんとなく伝わって来ないわけではありませんが、今頃になって「抑止力」を言い出す始末では、一国の総理大臣として些か心許ない。確信犯だとすればなおのこと、自民党政権時代の日米合意を引っくり返してまで沖縄の人の「思い」を強調するのは結構ですが(それは誰も反対しません)、日本の国防と安全保障に対する自論をもとに、その「思い」を叶えることは可能なのか今となっては不可能なのか、論理的な裏づけを説明すべきだと思います。日米関係が多少ぎくしゃくするくらいは仕方ないにしても、日本の政治が信用を失うという意味で国益を毀損したのだとすれば、政権交代の代償は余りにも大きい。
 そもそも民主主義はポピュリズムに堕する危険を孕んでいます。とりわけ民主党には、自民党との違いを強調する余り、国民の不安や甘えに応えようとする大衆迎合的な要素が強い。消費税を上げないで、財政破綻を招かないで、どうやってばら撒き政策を続けられるのか、農家への戸別補償で果たして農業が強くなるのか、あるいは別のことを目指しているのか、もう少し明示すべきだと思います。ワタミの介護事業は、「出来ないから助ける」から「出来るように助ける」という「自立支援」の発想へと転換して運営されていると言いますが、国家経営も大いに参考にすべきだろうと思います。
 因みにパウエル氏は先ほどの発言に続けて「リーダーシップはアート」だとも言っています。まさかアートまで鳩山さんに期待しませんが、民主党には官僚や地方自治体の首長・議員を務めたことがある優秀な頭脳が集まっているはずで、自分の金勘定はすっとぼけても、国家経営(マネジメント)だけはしっかりして欲しいと切に願います。
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