参院選は、下馬評通りに自民党が惨敗した。その落ち穂を、どうやら参政党と国民民主が躍進し掬い取ったようだが、ここまでやるとは正直なところ思っていなかった。
自民党が選挙で勝ち続けていた安倍政権時代と単純比較するのは、石破さんには気の毒だろう。衆議院で過半数を割って、政策毎に野党と連携しなければ前に進めない苦しい政権運営を、ある意味で火中の栗を拾うように引き受けて、自民党が過半数を占め続けた盤石の政権運営しか知らない重鎮からとやかく言われたくはないだろう。それでも衆議院だけでなく参議院でも過半数を割るという、自民党の退潮を食い止められない責任は問われて然るべきだろう。前々回のブログで、「自民党は、声だけは大きい野党に惑わされて、どこか自らのアイデンティティのポジショニングを間違ってしまったのではないだろうか」と書いた。石破さんには、石破カラーが見えないと、参政党からも同情される始末である。石破カラーを打ち出して世間がどう反応するか、見てみたい気がする。
立民は比例代表の得票数で、自民、国民民主、参政党の後塵を拝して4位に沈んだと衝撃的に書き立てられた。4位だと蔑むよりも、2位の国民民主762万票、3位の参政党743万票、4位の立憲民主740万票と、ほぼ並ばれてしまったと見るのが正確だ。世上、言われるように、インフレあるいは実質賃金が上がらない現状への不満から、与党にせよ野党にせよ、既存政党が支持を集められず、「手取りを増やす」「日本人ファースト」などの単純な、およそ総合政策としての辻褄合わせが簡単ではなさそうなスローガンが世間の耳目を集めた。自・公、立民、維新や共産まで含めて既存政党が支持を失う中で、立民は改選議席を維持するにとどまったのは、健闘したと言うべきか、実質的な敗北と言うべきか、よく分からない。恐らく立場によっては、例えば立民の政治家の中にはプライドを傷つけられて、あるいは執行部批判のために、敗北と受け止める人もいるだろう。
国民民主はともかく参政党は一気に素人議員が増えて、これから大丈夫だろうか。大丈夫じゃないよねえ・・・
今回の選挙戦の特異なところは、石破総理の進退をめぐる騒動に、より顕著に象徴的に表れていたのが興味深かった。ご本人は現時点で辞任を否定されているようだが、故・野村克也さんが言われたように(元を辿れば江戸時代の大名だった松浦静山の言葉だそうだが)「負けに不思議の負けなし」である。率直に反省すべきであろう。先ほど、石破カラーが見えないことに触れたが、それは自民党内の政権基盤の弱さ、党内野党であり続けた哀しさの故であろうし、それ故に自民党内に責任論が根強いのも当然であろう。だからと言って、安倍さん亡きあとの自民党で、辛うじて将来の党を託すべき高市早苗や小泉進次郎といった重要なカード(切り札)を今、使うのはどうかとも思う。石破さんに汚れ役を押し付ける意味ではなく、この難局は、石破さんのような、自民党には珍しい実直な方でないと務まらないのではないかと思うのだ。面白いのは、リベラル派から石破氏続投を望む声が上がったことだ。かつて故・安倍氏を蛇蝎の如く嫌った顔ぶれなので、その底意は察せられる。
れいわ新選組の山本太郎代表は、「代わりになる人が誰なのか。高市さん、小泉さんという声も結構ある。高市さんだときな臭くなる。小泉さんだと新自由主義は加速する」などと、相変わらずツイッター式あるいはラップ調の紋切型で批判した。社民党の副党首はXに、「関東大震災の朝鮮人虐殺があった前提で話ができる人が首相で良かった。国会にはなかったことにする国会議員が山ほどいる」と石破首相を持ち上げたそうで、首相続投の判断基準が歴史認識問題に収斂するナイーブさには驚かされる。初当選のラサール石井氏は、「答弁はメモを読まず、沖縄には追悼し、戦争は起きてはならぬと主張する。ここ最近の自民党の首相では一番まとも」と、Xで太鼓判を押したそうだ。初当選しても、複雑な国際情勢の現実を議論し対処の検討をするつもりはなく、イデオロギーを押し付けたいだけのように見える。ついでに、韓国・聯合ニュースは石破氏を「歴史認識で穏健派」と紹介したそうだし、選挙対策とは言え関税交渉に際して「なめられてたまるか」と口にした石破氏を、日米間にクサビを打つのに好都合と判断して好感するのであろう中国大使館筋は「できれば石破政権が継続してほしい」と打ち明けたと聞く。日本でリベラル野党は頼りにならないが、与党には不安があり、与党の中の党内野党(的なリベラルな存在)に期待が集まる?という、なんとも皮肉な状況である(微笑)。
欧米諸外国からは、政治情勢が安定していた日本でもいよいよ反移民などの保守派ポピュリズムが台頭し、多党化が進みそうだと心配して頂いている。心配には及ばないと言いたいところだが、どうであろうか。今はSNSの時代で、短期決戦の選挙戦でこそワン・フレーズに注目が集まるのはやむを得ないとして、野党が乱立し、保守寄りが現れて纏まるのが益々難しくなる中で、過半数を取れなかった与党がどの分野でどこと組んでどこまで妥協を強いられるのか、そのときの立民の立ち位置はどうなるのか、国民民主と参政党に至ってはこれからが正念場で、注目している。
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