『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
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[映画『レスラー』を観た]

2009-06-14 23:59:56 | 物語の感想
☆ミッキー・ロークは、私にとって、非常に思い入れのある役者であった。

 若い多感な頃に、『ランブル・フィッシュ』や『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』を見せられたら、誰でも憧れるはずだ。

 私は、ミッキー特有の、あの口を狭めて、その両端をクィッと上げる表情を格好良く思い、真似てみたりしたものだ^^;

 だから、その後、役者として、やや精彩を欠きはじめた頃、プロボクシングにチャレンジし、そのファイト振りを「猫パンチ」などと揶揄されても、「お前ら、モーターサイクルボーイや、スタンリー刑事をしらねぇんだろ!」と思っていたものだ。

 だが、その後、『レインメーカー』などで、何とも、私が求める本来の魅力のない役柄を見せられると、時の流れを感じさせられたものだ。

   ◇

 そのミッキー・ロークが、新作『レスラー』で人気復活したそうだ。

 『レスラー』は、近場のMOVIX昭島でも、ワーナーマイカル日の出でもやっておらず、シネマシティ立川に観に行った。

 この映画館は、駐車場料金などを含めると高くつくので、いつも「もう二度と行くものか」と思うのだが、『リリィ、ハチミツ色の秘密』『スラムドッグ$ミリオネア』(クリック!)など、西多摩ではここでしかやらなかった名作が多く、『レスラー』もその一つだった。

 『レスラー』は、『ロッキー』的なスポーツ・カムバック物だと思っていた。

 そう、陽性のアメリカン・ドリーム(もしくは、その亜種)を描いたものだ。

 しかし、違った。

 ミッキー演じるベテラン・レスラーは、ひたすらにB級の人生を送っていた。

 そして、20年前こそ、プロレスというジャンルがA級に輝いており、ランディも全盛期にはS級として活躍していたのかも知れないが、今となっては、そのジャンルさえもB級となっている。

 ミッキーの役者人生さながらの、廃れ振りが描かれる。

 頑丈さだけがとりえの体も、節々にガタが来ている。

 全盛期の忙しさに、構ってやれなかった娘には相手にされず、副業のスーパーではぞんざいに扱われ、好意を抱いているストリッパーとはうまくいかない。

 そんなランディの日常を、カメラはドキュメントタッチで綴っていく。

 私は、その見栄えに、松本人志の監督した『大日本人』(クリック!)に近しいものを感じた。

 松本作品は、中盤から、作品バランスが崩壊していくが、序盤は傑作だった。

 『レスラー』は、その、途中途中に、レスラーというもの特有の社会生活を営むにあたっての不器用さがユーモラスに描かれる。

 そこも松本作品と似ていた。

 両者とも、時代に取り残されたヒーローを描いている。

 しかし、『大日本人』と異なる点は、『レスラー』が、A級の作品としてのレベルを、最後まで継続していることだ。

   ◇

 邦画の学生プロレスを描いた名作『ガチ☆ボーイ』(クリック!)でも書いたことだが、プロレスというものは、格好悪い。

 格好悪いけど、その懸命さに、観る者が共感した時、とてつもないレイブ感を生む。

 『レスラー』では、『ロッキー』的な状況の好転はない。

 ひたすらに、ランディの格好悪い姿を描いていく。

 だが、その不器用さ、懸命さ、愚かさに、作り手の手法の見事さも相まって、我々は物語に引き込まれ続ける。

 物語の終盤においても、ステロタイプな結末はない。

 娘・ステファニーには去られ、複雑なる女性心理を経たストリッパー・キャシディの心は得る。

 だが、それを振り切り、ランディは、心臓発作の危険を省みずリングに上がる。

   ◇

 何とも悲しいのが、ランディがキャシディに「娘はレズかもしれない」と言うところだ。

 そして、ランディがステファニーに、その子供時代、怖がるのにお化け屋敷に行きたがった話をしたときのステファニーの一言「その頃からマゾだったのね…」。

 また、ランディがキャシディを口説くのに、キャシディがなびかず、ならばとランディがお金を払うからサービスをお願いするところだ。

 理屈では正しいランディの申し出に、女心で戸惑うキャシディがいい。

 この人、お尻や、<内またエクボ>がエロくてよろしい!

     PS.<内またエクボ>は、私の考えた言葉です^^v

 それから、リング上では血まみれで戦うレスラー同士が、控え室ではとてもいたわり合って過ごす様が泣ける。

                           (2009/06/14)

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10 コメント

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よかったです。 (KLY)
2009-06-15 02:26:25
私は『ナインハーフ』なんですよ。
80年代に思春期を過ごしたものとしては、ハリウッドスター・ミッキー・ロークは当然一度ははまる道です。それだけでなく、80年代初頭の初代タイガーマスクから始まるプロレスブームにはまり、同時にB・スプリングスティーンを含む洋楽ブームにはまる。静岡の田舎で中々入らぬラジオを必死で文化放送に合わせ、ポピュラーベストテンを聞いていたことが思い出されます。ランディとキャシディが80年代最高!と叫ぶシーンでは一緒に叫びたかった。(笑)
何でもこの作品、元はニコラス・ケイジでという話を監督が何が何でもミッキーでと押し切ったそうです。正解でした。^^
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いつもありがとうございます。 (rose_chocolat)
2009-06-15 04:44:13
確かに、レスラー同士がお互いいたわり合っているところなんて可愛かった。
サイン会かなんかで、お客さんをずーっと待っているところなんてもう、哀愁そのもの。
背に腹は代えられないって感じですね。
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TBありがとうございました (にゃむばなな)
2009-06-15 16:32:19
きれい事ばかりを描かずに、人間として情けない部分をきちんと描いているところがいいですよね。

私は何となくこのランディが大関を陥落しても相撲を取り続けた霧島関や小錦関とダブって見えましたよ。

こういう男はやはり素直に格好いいですね。
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御三方へ♪ (ミッドナイト・蘭)
2009-06-15 23:21:48
御三方のコメントが下に消えてしまうのを避けるために、マルチレスで失礼します^^

 >>KLYさん♪
私は『ナインハーフ』は観てないんですよ。
かなりエロチックな作品なんですよね。
氷を使ったテクニックがあったような・・・^^;
キム・ベイシンガーは、『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』でボンドガールでした^^;
しかし、主演がニコラス・ケイジにならなくて良かった。
彼だったら、彼のワンマン映画になってしまったでしょう。
ランディを取り巻く世界の魅力が消えてしまったことでしょう。
ランディが電話をかける公衆電話の場所の雰囲気は最高でした。

 >>rose_chocolatさん♪
サイン会のシーンは切なかったですね。
ファンがさっぱりの元レスラーもいれば、
車イスの元レスラーもいる。
ランディが、そんな奴らを見つめ、
「何で、俺はこんなになってしまったんだ」と目を伏せ、うな垂れる。
厳しいシーンでした。
それでも、輝きを求め続けるのが男ですね。

 >>にゃむばななさん♪
にゃむばななさんのレビュー、気持ちがこもっていますね。
仕事中に読んで、ちょいとしんみりきましたよ。
私の感想に付した、小学校の教室のような控え室でのランディの後姿。
このファーストシーンで、この作品の成功は約束されました。
ランディのたるんだ背中が、パイプイスの背もたれで歪んでいましたね・・・。

これからもよろしくお願いします!
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Unknown (かからないエンジン)
2009-06-18 22:47:53
本当に素晴らしい映画でした。

ミッキー・ローク、の熱演もさることながら、まさかあのダーレン・アロノフスキーがあんな穏やかなカメラを見せてくれるとは、夢にも思いませんでしたよ。
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かからないエンジンさん♪ (ミッドナイト・蘭)
2009-06-18 23:04:04
こんばんわ^^

私は、ダーレン・アロノフスキー監督を知らなかったのですが、非常に安定感のある作品でしたね。

ミッキー・ロークは、良くも悪くもプロレスラー以外の何ものにも見えませんでした^^

この作品に俳優として再浮上しましたが、他の役柄を出来るのでしょうか^^;
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TBありがとうございました。 (sakurai)
2009-07-30 09:55:03
私も「ナイン・ハーフ」の口です。
見ながら、「こんなん見ていいのかしら??」と自問自答しながら見た覚えが。20数年も前です。
でも、考えてみると、その時から彼がやってたのは不器用な男。「ランブルフィッシュ」も「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」も「エンゼル・ハート」も、にっこり笑ったハッピーエンドには届かない、なぜか不器用な生き方の男だったと思います。
その生き方が、彼の生きざまそのものに投影されてしまい、ここに至ったのかな・・と。
そんなこんなもひっくるめて、彼にしかできない役だったと思います。

娘に対して、「レズ・・・」云々とありましたが、それはいかにものアメリカの親父・・・ということをあらわしているのではないでしょうか。
ちょっと頭の固い、そこも不器用で、さまざまなことを柔軟に受け入れられない姿を表していたように思えました
返信する
sakuraiさんへ♪ (ミッドナイト・蘭)
2009-07-30 19:25:49
こんばんわ^^

>>でも、考えてみると、その時から彼がやってたのは不器用な男。「ランブルフィッシュ」も「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」も「エンゼル・ハート」も、にっこり笑ったハッピーエンドには届かない、なぜか不器用な生き方の男だったと思います。

なるほどですね。

確かに、「イメチェン」ではなく、「帰結」なんですね。

私は、あのレスラーの不思議な体力・・・、普通の生活ではもったりと疲労し、リングではここぞとばかりに全力を尽くす・・・、そのニュアンスの演技が実に上手く感じました。

悪い意味で、いい演技でした^^;

見てからかなり経ちますが、いまだに思い出します。
返信する
ミッキーローク 不器用な男を演じるのに とっても似合う俳優です。 (zebra)
2011-09-20 21:25:39
はじめまして ミッドナイト・蘭さん

レスラー人生もピークを過ぎ、娘とは絶縁状態、ステロイドの影響で心臓は弱っているありさまの中年レスラー ランディー。

せっかく 親子関係を修復するチャンスだったのに娘さんとの約束すっぽかすのは さすがにマズイよ~

>この人、お尻や、<内またエクボ>がエロくてよろしい!PS.<内またエクボ>は、私の考えた言葉です^^v

 たしかに、マリサ演じるストリッパーのキャシディのトップレスにTバック姿で踊る姿はとってもキレイでしたよ

自分には「この場所しかない」不器用な生き方しかできないランディーは やはり 悲しい男です。
>私は、ミッキー特有の、あの口を狭めて、その両端をクィッと上げる表情を格好良く思い、真似てみたりしたものだ^^;
>だから、その後、役者として、やや精彩を欠きはじめた頃、プロボクシングにチャレンジし、そのファイト振りを「猫パンチ」などと揶揄されても、「お前ら、モーターサイクルボーイや、スタンリー刑事をしらねぇんだろ!」と思っていたものだ。

蘭さんはよっぽどロークが好きなんですね・・もし、ミッキー・ローク最高と思うのでしたら、同じミッキー・ロークの主演の「ホーム・ボーイ」という'88年の映画 好きになる、もしくは見たことあれば好きになったはずです

 こちらは、ロークが アメリカ各地を渡り歩く流れ者ボクサーのジョニー役です。元妻のデボラ・フューアーと共演しています

 レスラーのランディーとはまた違った男の不器用さを「ホーム・ボーイ」のジョニーは持っています。

 「レスラー」と「ホーム・ボーイ」 ともにミッキー・ロークの主演で、ふたりの不器用な男が主人公 ランディーとジョニー

 ふたつの作品を比べながら見るのも 悪くないですよ


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zebraさんへ♪ (ミッドナイト・蘭)
2011-09-20 23:05:40
こんばんわ^^

>>「ホーム・ボーイ」のジョニー

見てみますね^^
ところで、役名がジョニーなんですね。
「ジョニー・ハンサム」ってのもありましたね。
ちゃんとアクション映画として面白かった記憶があります。
私、この作品を「暗い」イメージで書きましたが、
今覚えているのは、最後の、光の中へのダイブシーンです^^
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