☆・・・イーストウッドにアフレック、スタローンと、俳優でありつつ監督として傑出した作品を残している才人は多い。
敵を討たない衛生兵が主人公なので、メル・ギブソンなよったか!?
だが、メル・ギブソン、「バランス」よく描いていた!
序盤は、主人公ドスの幼少期、先の大戦の後遺症で精神を病みアル中に堕ちた父親の家族への暴力と、ドス自身の加害暴力体験と後悔の日々・・・。
ここだけで、後に戦争が待っていることもあり、しんみりしてしまう。
自分の信念(宗教的な意味合いは割と薄く描かれる)により、銃に触れない(人を殺すことはしない)ドスは、軍隊(群体)の中で矛盾し、周囲の者からのいじめを含む、軍社会の軋轢の中へ。
軍法会議にかけられ有罪、そして刑務所行きが決まりそうになったとき、思わぬ人物の助けで、銃を持たない衛生兵として存在を許される。
・・・隊が派遣されるのは沖縄はハクソー・リッジ、のこぎりのように切り立った断崖で、そこからの進行が余儀なくされていて、しかも、血みどろの戦局がそこにはあった・・・。
最新の技術は、限りなく「戦争」以上の臨場感で見ている者に戦争のリアルを見せつける。
日頃 勇ましいことを言っている私も、その渦中に身を置くことを想像すると恐怖する。
気になる日本兵の描き方だが、あえて、最後の司令官の自決シーン以外、日本側の事情をドスが存在している場面以外見せていないので、純粋に、アメリカ軍が戦っている「強い相手」以上の描写がなく、反日捏造の危惧はなかった。
それは、ドスの側にも言え、ドスの存在しないシーンの描写は、例えば、軍の規律を乱すドスの処遇を話す上官たち、収監されたドスを心配する彼女と家族、ハクソーリッジ撤退後も救助活動を「続け続ける」ドスがいる状況を憂える上官たち・・・、と、最低限の描写しかない。
ドスはひたすらに『るろうに剣心』の如く「不殺」の信念で傷ついた仲間を助けていく。
恐怖の状況の中で救助のみに邁進するドスは、恐怖を感じたら相手を撃てばいい兵士以上の過酷な状況である。
映画の情報としては聞いていたが、実際に見せられると、それは、世界の下せしミッションとしては最高難度に位置しているのが分かる。
誰も真似できないことをドスは、地獄で遂行していく。
それでも現実は更なる状況を現出せしめ、ドスは、信念以上の宗教的な決意で、神に語りかけてみる。
先に映画にもなった遠藤周作の『沈黙』のような、神への問いかけが成され、果たして、この状況の神は、ドスに答えを返すのだった・・・。
(2017/06/24)