☆昨日(10/29付け)の産経新聞・社会面に、小さくこんな記事が・・・。
《 「日本は常任理事国に」
今年のノーベル平和賞の受賞が決まったバングラデシュの経済学者、ムハマド・ユヌス氏(66)が28日、広島市を訪れ、原爆ドームや原爆資料館の見学後に記者会見し、「核兵器の潜在的脅威は世界中どこにでもあり、私も被爆者であるように感じた。軍隊を持たずに大国になった日本は国連の常任理事国になり安全保障について発言権を持ってほしい」と日本への期待を述べた。》
一昨日、イーストウッド渾身の硫黄島二部作の第一弾『父親たちの星条旗』を観た。
大作なのだが、イーストウッド監督は、先の大戦、その「アイドル」に祭り上げられてしまった三人の一兵卒の苦悩を、人間ドラマに重点を置き、丹念に抑えた演出で描いていた。
この三人は、過酷な硫黄島の戦いで、日本側の最重要地点<摺鉢山>の頂上に星条旗を立てた「英雄」とされた。
しかし、実際には、三人は最初にアメリカ国旗を掲げた者たちではなかった。
だが、三人を含む六人が星条旗を掲げた写真は、アメリカ国内の新聞の一面を飾り、アメリカでの第二次大戦勝利の代名詞的なイメージとなってしまった。
また、三人の他に映っている、他の三人の兵士は戦死しており、その三人の素性も、一番目に星条旗を立てた者と、二番目に立てて、その写真を撮られた者と、周囲の兵士の記憶が混沌としており、その活躍を、その最後の瞬間を、心に留めておきたい戦死者の親御さんたちの心を揺さぶるのだった・・・。
摺鉢山一番乗りの写真が誤認だったと分かった後も、アメリカ政府は、それを発表することなく、厭戦気分のアメリカ国民の気持ちを盛り上げるため、そして、戦費調達のための国債販売宣伝のため、三人を遊説させ続ける。
三人は、それぞれ三様に、その欺瞞的な行動の渦中にいる自分たちに悩むのだった。
◇
仮に、私がポルノ小説を書いたとする。
それはもう、読者に興奮してもらえたら最高だろう^^
マスタベーションでもしてもらえたら、チョー最高だ^^v
そういった目的で書き、読者に、自分が目標としていた感情を抱いてもらったら、作家として本望だろう。
・・・だが、とち狂った評論家が、「これは現在の日本社会の暗部を見事に抉り出している作品で、読者である我々にこれからの日本のあり方を問いかけているのだ」などと評したとしたら・・・。
誉めてくれているので悪い気はしないが、心から喜ぶべくもなく・・・。
面映い思いは避けられず、それが度を超したら、
私も、『父親たちの星条旗』の主人公たちのように苦悩するだろう。
私が何をいいいたいかと言うと、
ノーベル賞を学者・ユヌス氏の「日本は常任理事国に」の主張は、常任理事国を待望している日本国にとっては嬉しい言葉であるが、その理由を考えるに及び、何ともユヌス氏の評価の、我々の認識とのギャップに、解せない思いが募ってくるのだ。
「軍隊を持たずに大国になった日本」だからこそ常任理事国に相応しい、と言う理由は、
他ならぬ、原爆を落とした、硫黄島で戦った、現在の軍事大国・アメリカとの安全保障条約があったればこそ。
故に、ユヌス氏の「理由」は崩壊してしまう・・・。
何よりも、日本には自衛隊が厳然として存在してもいる。
アメリカに頼らない「平和」を築き、それを維持・継続・拡張する「ピース・メイカー」たる軍隊が軍隊として存在してこそ、日本は常任理事国として真っ当となれよう。
(2006/10/30)