▼若い頃は、それを観て、人生が揺り動かされるような映画作品がいっぱいあった。
最近では、どんなに完成度の高い作品を観ても、二、三日経つと生活に埋没してしまう。
『パフューム』も、しばらくしたら忘れてしまうかも知れないが、観ている間、「これは、かなりキてるぞ!」と思わされるような衝撃的作品だった。
素晴らしい作品とは言えない。感情移入は出来ない。所詮は、【天才変態】の物語である。
しかし、完成度は高い。
とてもスタイリッシュであるが、それが自己主張することはなく、作品の一構成因子となっている。
▼18世紀、悪臭の街・パリで産み落とされた主人公・グルヌイユの一代記である。
特に魚市場の悪臭が凄かった。
陸に上がった魚は、かごに入れられ、屋台に運ばれてくる。
主人公の母親は、何百匹の魚の腹を割き、そのはらわたを抉り、商品とする。
はらわたは、無造作に屋台の下に投げられ、そこで腐るままだ。
母親は妊娠していた。
売りながら産気づき、倒れ、赤子を産み落とし、へその緒を、魚の腹を切るナイフで叩き切り、売り子に舞い戻る。
赤子は、屋台の下のはらわたの上に放置される。母親が帰宅する頃には死ぬ。後は、それを捨てるだけだ。
母親は、そうして、何人もの赤ちゃんを始末していた。
しかし、今回の赤ちゃんは違った。
はらわたに塗れ、周囲の臭気に鼻をひくつかせながら、「おぎゃああああ」と泣いたのだ。
その声で、周囲の者は、赤ん坊が産み捨てられたことに気付く。
母親は、店をほったらかしにして逃げる。
・・・が、捕まり、【「子捨て」の罪で絞首刑】・・・。
赤子は、捨て子を引き取る強欲婆さんの家に引き取られる。
そこは、子供が犇いていた。
寝床を取られた子供は、その鼻をひくつかせながら辺りを窺う赤ん坊に異様さを感じ、殺そうとさえしてくる。
・・・監督のトム・ティクバは、主人公の生い立ちを、スピーディーに、色彩豊かに、美しくも残酷に描いていく。
ここまで観ただけで、この作品は普通じゃないな、と私は思わせられた。
▼どうにか生き延び、赤ん坊は、少年になっていた。
とにかく、香りであった。
少年は嗅覚でもって、世界を認識していた。
嗅覚が、頭の中で映像や音となって認識されていた。
少年は、その自分の「絶対嗅覚」が、他人に対し優越していることさえも理解しだした。
強欲婆さんは、年長に達したグルヌイユを、なめし革屋の親方に数フランで売った。
・・・直後、強欲婆さんは、その金を使うこともなく、強盗に殺される。
親方の下で、グルヌイユは、辛抱強く働く。
グルヌイユに、いい匂い・悪い匂いはない。
魚の匂いも、剥いだ獣の皮の匂いも、興味の対象だ。
そんな折、親方と、革の依頼の届け物で、パリの「山の手」に行く。
そこは、匂いの坩堝だ。
グルヌイユは、都会の生活の、それまでの自分の周囲とは異なるあらゆる匂いを、心に刻み込んだ。
・・・そして、都会では、「香水」と言うものがあることを知った。
香水は、匂いが保存されているものと言う認識を得た。
それ以上に、気になる匂いがあった。
果物売りの娘の香りだ。
グルヌイユは、親方の元を離れ、ふらふらと娘の後を追った。
嗅ぐ、嗅ぐ、嗅ぎ続ける。
グルヌイユは、忘我のうちに、娘に近づき、悲鳴をあげられ、その口をふさぎ、殺害する。
それを後悔するよりも、彼は、ひたすらに娘の匂いを嗅ぐ。
頭巾を取り去ると、鮮やかな赤毛が広がる。
服を剥ぎ取り、コルセットの紐をゆるめ、その胸部を露わにする。
娘の肢体を、嗅ぎまくる。
そして、その乳房を左右から撫ぜ擦り、その自分の手に残った匂いを嗅ぐ。
・・・ああ、世の中には、「あらゆる匂い」の他に、自分の「求める匂い」が存在したのだ!
「どこ、ほっつき歩いていたぁ!!!」
親方のもとに戻ると、親方の制裁が待っていた。
▼落ちぶれた香水屋があった。
その調香師(ダスティン・ホフマン)は、今パリで一番人気の香水を嗅ぎつつ、その香りの秘密が解けないでいた。
そこへ、グルヌイユが革の配達に来た。
彼は香りの秘密を言い当てた。
「自分なら、もっといい香りが作れる!」
そして、調香師の原料を用い、魅惑の香水を作った。
「どうか、私を弟子にしてください。私になら、もっともっと多くの素晴らしい香水が作れます。その代わり、師よ、私に香りの保存の方法をお教え下さい」
・・・後日、調香師は、なめし革の親方に大枚はたき、グルヌイユの身請けをした。
親方は、その金でしこたま飲み、海に落ちて死んだ。
▼落ちぶれていた香水屋は、瞬く間に活気を取り戻した。
しかし、この調香師が用いていた蒸留法では、生き物の香りのエッセンスの抽出はならなかった。
グルヌイユは絶望した。
病に倒れた。
しかし、グレースと言う香水作りの本場では、異なる方法での香りの保存法があると聞くのだった。
生きる希望を見出すグルヌイユ。
調香師にグレース行きを申し出る。
調香師は、100種類の香水のレシピを書くことと引き換えに、グルヌイユに「調香職人証明書」を書いてやることを約束する。
お安い御用のグルヌイユ、瞬く間にレシピを教え、南仏に旅立つ。
・・・調香師は、100種類のレシピをホクホク顔で抱き、床に就く。
しかし、その時、調香師の住むアパートメントが崩れ落ちて死ぬ。
▼グレースへの道行は、グルヌイユの鼻を清々しいものにしていた。
急峻な山々も、淡々と進んでいった。
ある洞窟に入った。
そこは、無臭だった。
そこで、グルヌイユは、ある種の開放感を味わう。
そこから離れたくなかった。
が、気付いた。
自分が全くの「無臭」の人間であることに・・・。
香りこそが「世界」を認識する術であるグルヌイユにとって、無臭である自分は、世界に存在しないことと同義である。
グルヌイユは、目標を得た。
自分の生きた証を、世界に残すことを!
そして、美しき赤毛の令嬢を見かける。
彼女の匂いを辿った時、グレースに到着していた。
彼女こそ、香りの独自性を発揮する十三番目の原料に相応しい娘だった!
▼グレースでは、調香工場で働く。
何万もの、色とりどりの花弁が毎日運ばれてくる。
近くには農場があり、娘たちが花を摘んでいる。
その娘の一人が、グルヌイユの犠牲になる。
冷浸法(だっけ?)の、水の入った大きなガラスのシリンダーがあり、そこに娘が浮かんでいた。
下部に付いた蛇口を捻ると、「グルヌイユの求める香り」が抽出されているはずだった。
が、失敗した。
▼続いて、グルヌイユは、殺害した売春婦の体に獣脂を塗った。
獣脂は、その香りを取り込む。
その獣脂をこそげとり、鍋に集める。
それを蒸留すると、「グルヌイユの求める香り」のエッセンスが抽出されていた。
成功、だった。
グルヌイユは、美しい女たちを手当たり次第に殺した。
髪の毛も刈り、それを獣脂に塗れさせ、搾る。
そして、エッセンスを抽出した。
十二人の女が殺害され、グレースの街は震撼する。
十三番目の女・ローラは美しく、佇んでいた・・・。
☆『続きは映画館でね!』(『ドラえもん』映画SP風^^;)
(2007/03/05)
最近では、どんなに完成度の高い作品を観ても、二、三日経つと生活に埋没してしまう。
『パフューム』も、しばらくしたら忘れてしまうかも知れないが、観ている間、「これは、かなりキてるぞ!」と思わされるような衝撃的作品だった。
素晴らしい作品とは言えない。感情移入は出来ない。所詮は、【天才変態】の物語である。
しかし、完成度は高い。
とてもスタイリッシュであるが、それが自己主張することはなく、作品の一構成因子となっている。
▼18世紀、悪臭の街・パリで産み落とされた主人公・グルヌイユの一代記である。
特に魚市場の悪臭が凄かった。
陸に上がった魚は、かごに入れられ、屋台に運ばれてくる。
主人公の母親は、何百匹の魚の腹を割き、そのはらわたを抉り、商品とする。
はらわたは、無造作に屋台の下に投げられ、そこで腐るままだ。
母親は妊娠していた。
売りながら産気づき、倒れ、赤子を産み落とし、へその緒を、魚の腹を切るナイフで叩き切り、売り子に舞い戻る。
赤子は、屋台の下のはらわたの上に放置される。母親が帰宅する頃には死ぬ。後は、それを捨てるだけだ。
母親は、そうして、何人もの赤ちゃんを始末していた。
しかし、今回の赤ちゃんは違った。
はらわたに塗れ、周囲の臭気に鼻をひくつかせながら、「おぎゃああああ」と泣いたのだ。
その声で、周囲の者は、赤ん坊が産み捨てられたことに気付く。
母親は、店をほったらかしにして逃げる。
・・・が、捕まり、【「子捨て」の罪で絞首刑】・・・。
赤子は、捨て子を引き取る強欲婆さんの家に引き取られる。
そこは、子供が犇いていた。
寝床を取られた子供は、その鼻をひくつかせながら辺りを窺う赤ん坊に異様さを感じ、殺そうとさえしてくる。
・・・監督のトム・ティクバは、主人公の生い立ちを、スピーディーに、色彩豊かに、美しくも残酷に描いていく。
ここまで観ただけで、この作品は普通じゃないな、と私は思わせられた。
▼どうにか生き延び、赤ん坊は、少年になっていた。
とにかく、香りであった。
少年は嗅覚でもって、世界を認識していた。
嗅覚が、頭の中で映像や音となって認識されていた。
少年は、その自分の「絶対嗅覚」が、他人に対し優越していることさえも理解しだした。
強欲婆さんは、年長に達したグルヌイユを、なめし革屋の親方に数フランで売った。
・・・直後、強欲婆さんは、その金を使うこともなく、強盗に殺される。
親方の下で、グルヌイユは、辛抱強く働く。
グルヌイユに、いい匂い・悪い匂いはない。
魚の匂いも、剥いだ獣の皮の匂いも、興味の対象だ。
そんな折、親方と、革の依頼の届け物で、パリの「山の手」に行く。
そこは、匂いの坩堝だ。
グルヌイユは、都会の生活の、それまでの自分の周囲とは異なるあらゆる匂いを、心に刻み込んだ。
・・・そして、都会では、「香水」と言うものがあることを知った。
香水は、匂いが保存されているものと言う認識を得た。
それ以上に、気になる匂いがあった。
果物売りの娘の香りだ。
グルヌイユは、親方の元を離れ、ふらふらと娘の後を追った。
嗅ぐ、嗅ぐ、嗅ぎ続ける。
グルヌイユは、忘我のうちに、娘に近づき、悲鳴をあげられ、その口をふさぎ、殺害する。
それを後悔するよりも、彼は、ひたすらに娘の匂いを嗅ぐ。
頭巾を取り去ると、鮮やかな赤毛が広がる。
服を剥ぎ取り、コルセットの紐をゆるめ、その胸部を露わにする。
娘の肢体を、嗅ぎまくる。
そして、その乳房を左右から撫ぜ擦り、その自分の手に残った匂いを嗅ぐ。
・・・ああ、世の中には、「あらゆる匂い」の他に、自分の「求める匂い」が存在したのだ!
「どこ、ほっつき歩いていたぁ!!!」
親方のもとに戻ると、親方の制裁が待っていた。
▼落ちぶれた香水屋があった。
その調香師(ダスティン・ホフマン)は、今パリで一番人気の香水を嗅ぎつつ、その香りの秘密が解けないでいた。
そこへ、グルヌイユが革の配達に来た。
彼は香りの秘密を言い当てた。
「自分なら、もっといい香りが作れる!」
そして、調香師の原料を用い、魅惑の香水を作った。
「どうか、私を弟子にしてください。私になら、もっともっと多くの素晴らしい香水が作れます。その代わり、師よ、私に香りの保存の方法をお教え下さい」
・・・後日、調香師は、なめし革の親方に大枚はたき、グルヌイユの身請けをした。
親方は、その金でしこたま飲み、海に落ちて死んだ。
▼落ちぶれていた香水屋は、瞬く間に活気を取り戻した。
しかし、この調香師が用いていた蒸留法では、生き物の香りのエッセンスの抽出はならなかった。
グルヌイユは絶望した。
病に倒れた。
しかし、グレースと言う香水作りの本場では、異なる方法での香りの保存法があると聞くのだった。
生きる希望を見出すグルヌイユ。
調香師にグレース行きを申し出る。
調香師は、100種類の香水のレシピを書くことと引き換えに、グルヌイユに「調香職人証明書」を書いてやることを約束する。
お安い御用のグルヌイユ、瞬く間にレシピを教え、南仏に旅立つ。
・・・調香師は、100種類のレシピをホクホク顔で抱き、床に就く。
しかし、その時、調香師の住むアパートメントが崩れ落ちて死ぬ。
▼グレースへの道行は、グルヌイユの鼻を清々しいものにしていた。
急峻な山々も、淡々と進んでいった。
ある洞窟に入った。
そこは、無臭だった。
そこで、グルヌイユは、ある種の開放感を味わう。
そこから離れたくなかった。
が、気付いた。
自分が全くの「無臭」の人間であることに・・・。
香りこそが「世界」を認識する術であるグルヌイユにとって、無臭である自分は、世界に存在しないことと同義である。
グルヌイユは、目標を得た。
自分の生きた証を、世界に残すことを!
そして、美しき赤毛の令嬢を見かける。
彼女の匂いを辿った時、グレースに到着していた。
彼女こそ、香りの独自性を発揮する十三番目の原料に相応しい娘だった!
▼グレースでは、調香工場で働く。
何万もの、色とりどりの花弁が毎日運ばれてくる。
近くには農場があり、娘たちが花を摘んでいる。
その娘の一人が、グルヌイユの犠牲になる。
冷浸法(だっけ?)の、水の入った大きなガラスのシリンダーがあり、そこに娘が浮かんでいた。
下部に付いた蛇口を捻ると、「グルヌイユの求める香り」が抽出されているはずだった。
が、失敗した。
▼続いて、グルヌイユは、殺害した売春婦の体に獣脂を塗った。
獣脂は、その香りを取り込む。
その獣脂をこそげとり、鍋に集める。
それを蒸留すると、「グルヌイユの求める香り」のエッセンスが抽出されていた。
成功、だった。
グルヌイユは、美しい女たちを手当たり次第に殺した。
髪の毛も刈り、それを獣脂に塗れさせ、搾る。
そして、エッセンスを抽出した。
十二人の女が殺害され、グレースの街は震撼する。
十三番目の女・ローラは美しく、佇んでいた・・・。
☆『続きは映画館でね!』(『ドラえもん』映画SP風^^;)
(2007/03/05)