職業柄、とはいえ私は小児科医ではないから滅多にないが、心に傷を負った子どもたちに接する機会がある。子供のこの様な病的(?)状態こそが、子供を取り巻く社会や環境、その過程が抱える問題の表れであろう。いわば、自我が乏しい時期の子どもが社会や環境の犠牲になっている。
子供は、時代とか社会とか周囲の環境に影響されながら育つ。
私自身が、自分の育った家庭と過程、成人してからの子育ての経験、孫たちを観察することを通じて観察したその親達、について以下の如く感じ取っている。
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少年たちにとって一番大切なのは「自由な空間と時間の保障」、である。
年少の子供たちにとっては「遊び」の保障であり、年長の子供たちにとっては「自我の成長に合わせた個性の尊重」が大切なのではないか。
そして、それらを見守る親の心には「ゆとり」が必要である。
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世をあげての「教育」「教育」と叫ばれている今日、私の感覚など時代錯誤的、寝呆けたこと言っている、と自分でも思う。が、「遊び」 や母の「やさしさ」、家族たちの「やさしさ」を味わうことができなかった子どもが将来どんな大人になっていくか、考えただけでもゾッとする。大人になってから、その分だけの、いやそれに数倍する代償を払わされることが多いのではないだろうか。
私は世を震撼させた大事件に関するの詳細な記述本が出ると積極的に集めて読んでいる。メディアの報告だけでは何もわからない。それらを読むと、今更ながら、少年には真の「自由」を保障する時間と空間、それに少年らを受け入れる親のやさしさとゆとりが大切だと、つくづく思う。
参考となる文献は50冊以上手許にあるが、その一部を例として示した。
○一橋文哉 尼崎連続殺人事件の真実
○一橋文弥 オウム帝国
○永田洋子 16の墓標(連合赤軍/あさま山荘事件)
○森 達也 相模原に現れた世界の憂鬱な断面(障害者施設19人殺害事件)
○佐木隆三 深川通り魔殺人事件
○杉山 春 虐待 大阪二児置き去り事件
○中島岳志 秋葉原事件(通魔事件)
○共同通信取材班 大津中2いじめ自殺
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これらの文献中には「残念な少年期」を過ごした若者達の実例が示されている。だからと言って犯した罪が軽減されるべきものではないが、犯人の心理的背景の一部は理解することができる。
私はもう何ができるわけではないが、子育ては「子供達の自己肯定感形成に大事な時期である」ことを機会があれば示したい、とは思う。