リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

パプリカ

2020-02-16 05:39:01 | オヤジの日記

友人の極道コピーライターのススキダに、「パプリカって知ってるか」と聞かれた。

 

知っているさ。赤と黄色、オレンジの種類があって、ピーマンよりも肉厚で重宝する食材だ。

今の季節、パプリカの細切りと菜の花のゴマ和えが美味いな。

「それは、冗談で言っているのか」

どこに冗談が入っているんだ。常識的な答えではないか。

冗談が欲しいのなら、言ってやってもいいぞ。

パプリカのパ パッと見は極道か プ プロの殺し屋みたいだが リ 料理上手な奥さんがいる カ カツラ疑惑のある男、っていうのはどうだ。

「カツラじゃねえよ」

 

場所は、新宿3丁目の和風レストランだった。7つの産地の牡蠣を食べさせてくれる天晴れなレストランだ。

これは、以前肺炎寸前で病院に送り込まれたススキダを、神のような対応で救った私へのお礼なのだ。

人間として至らないところが多いススキダだが、人への感謝は猫並みに持っていた。

「お礼の牡蠣を食わせてやるから、国立駅前で待て」

ありがたや、ありがたや、ススキダ様ー。

 

「いくらでも食って飲んでよろしい。送り迎えはオレがしてやる」と分厚い財布を見せびらかしながら、ススキダが鼻を膨らませた。

本当は、もっと早く私への借りを返したかったという。しかし、退院後、なかなか体調が元に戻らず、年明けもパプリカな状態が続いていた。

ススキダは、私より2歳若いが、年をくっていることには変わりない。まして、私と違って定期的に体を動かすということをまったくしない下等生物だ。

回復に時間がかかるのは、仕方がない。

2月になって、やっと快方に向かったススキダは、ここで私への恩を思い出した。

ガッキー! いや、カッキー。

あいつには、牡蠣を食わせておけば、無駄にミサイルを打ち込むことはないだろうと思ったのだ。

 

「あのとき(入院中)は、まわりに人がいなくて、心細くてな、一番助けを求めたくないおまえに頼ったんだよ」

仏のマツは、人が困ったとき、必ず現れるのだ。

「ところで、仏のマツは、本当にパプリカを知らないのか」

またかよ。

だから野菜だろ。日本では、韓国産が多いようだ。オーケーストアでは、大抵98円から138円で売っているな。肉詰めも美味いぞ。焼いたパプリカをかつお節とポン酢で和えたら、酒の肴としてもよし。

「おまえ、冗談もいい加減にしろよ。歌だよ歌。流行っているだろうが」

ああ、そっちね。米津玄師作詞作曲のやつだろ。それなら、「パプリカって歌、知っているか」って聞くのが、頭のいいやつの聞き方だ。パプリカって言ったら、普通は野菜だ。頭が悪すぎる。

おー、この北海道産の牡蠣、身が締まっていて美味いな。

 

「だから、パプリカ知っているかって聞いているんだよ。話が進まねえじゃねえか」

パプリカという歌の存在は知っているが、聴いたことはない。それって、元々の起源がNHKの番組なんだろ。俺、NHKは観ないし、YouTubeなどの動画サイトも観ないから、眼と耳に入ってくる機会がない。だから、知らんのだよ。

「感覚が貧しいやつだな。絶えず新しいことにアンテナを張っておかないと時代に取り残されるぞ」

褒めてくれたようだ。しかし、流行にただ流されるよりも、自分の価値観を維持することを私は選ぶ。

では、おまえは、カミラ・カベロとショーン・メンデス、ビリー・アイリッシュ、頭脳警察を知っているのか。

「・・・・・」

どうでもいいから、話を進めよう。パプリカがどうした。広島産の牡蠣が美味すぎるぞ。

「俺の得意先が今年創立40周年を迎えるんだ。3月はじめにホテルでパーティーがある。そのとき、社員からパプリカを歌って踊りたいって話が出たんだ。ダンス好きの社員を10人くらい集めて披露したいっていう話だ」

しかし、ダンスが好きだと言っても、所詮は素人だ。リーダーもいない。バラバラなのだという。

そこで、ダンスのインストラクターを知らないか、という簡単な話をまわりくどい言い方で私に聞いたのである。

私は、インストラクターは知らないが、イラストレーターは知っている、と答えた。

「イラストレーター? またくだらない冗談か」

 

いや、違う。彼は、イラストが天才的なほど上手くて、同じようにダンスも天才的に上手いんだ。私は、彼ほどダンスの上手なイラストレーターを太陽系内で知らない。

そう言って、iPadに保存しておいたイラストレーターのダンス場面をススキダに見せた。

マイケル・ジャクソンのビリージーンだ。

頭の角度から肩、指先、つま先まで、流れるような動きのダンスは秀逸だ。MJにしか見えない。どこかに披露したいが、彼の奥さんから、「これは私一人の楽しみなので、ご遠慮ください。Mさんにだけは、特別お貸しします」と釘を刺されていた。

「すげえな、本当に素人か」とススキダ。

アホのイラストレーターだ。

「ああ、ああ、おまえの母上の葬儀で会ったあの人か」思い出したようだ。アホでわかるなんて、イナバくんも有名人だね。

「インストラクター、やってくれるかな」

 

ラインで聞いてみた。

イナバくん、パプリカって知ってる?

すぐ返事が来た。

「パプリカは知ってます。ピーマンよりは好きです」

ほらね、普通は、そうなるよね。

歌の方のパプリカ、知ってる。

「もちろん知ってますよ。毎日子どもたちと踊ってます」

イナバくんには、13歳の女の子と9歳の男の子がいた。当然のことながら、子どもたちの方が、イナバくんより賢い。

ダンスは完璧に踊れる?

「陽気そうな犬がOKマークを手で作っているスタンプ」

詳しく聞くと、大人にダンスを教えたことはないが、子どもや子どものお友だちには、よく教えるのだという。だから大丈夫だと言われた。

それをススキダに伝えたら、「頼む」と頭を下げられた。

そして、ススキダが言った。「また、借りができたな」。

仏のマツは、いくらでも貸してやるぜ。

三陸産の牡蠣、肉厚で美味いな。

 

日曜日午後、つまり今日、代官山本社の社員食堂で、パプリカダンス講習会が開かれる。

心配だから、ついていくことにしたたたた。

 

もし、イナバくんらしい世の常識を覆すハプニングがあったら、次回お知らせします。

 

 

ハプニングが、ないわけがないよねー。

 

 

ウィルス、お気をつけください。