まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

地域統括会社に関する6つの課税問題その1

2014-01-03 09:01:00 | 企業投資

 

 今まで、ばらばらに東南アジア各国に子会社や合弁会社を持っていた、即ち日本本社が株式を保有していたが、本社の一部権限・機能をシンガポール等の100%子会社に委譲し、併せて地域内子会社・合弁会社を地域統括会社の傘下において、効率的に事業の運営・支援のみならず、ファイナンス機能を行うために、日本本社保有の株式を、シンガポール等の100%子会社である地域統括会社に現物出資して、グループ企業の経営を強化していこうという企業が多く出ています。ということで、今回は、香港やタイはややこしくなるので除外して、シンガポールの地域統括会社を中心に税務の話を書いて見ましょう。地域統括会社に、(1) 日本本社保有の既存子会社・合弁会社の株式・持分を譲渡する場合に、 日本での譲渡益課税が発生するかどうか、②譲渡される株式の対象である被出資会社の所在国で課税の問題が生じないか、③地域統括会社所在国での課税問題が生じないか、及び(2) 統括会社の事業により稼得される所得に関し①日本のタックス・ヘイブン(Tax Haven)税制上の問題が無いかどうか、②地域統括会社所在国での優遇税制が適用されるかどうか、③孫となった会社から統括会社が受取るロイヤルティや利子収入等について統括会社所在国と孫会社所在国間に租税条約を締結して税率の軽減がはかられているかどうかという6つの視点から見て見ましょう。尚、その他に移転価格の問題もありますが、今回は除外します。<o:p></o:p>

 

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 上記6つの論点・結論は、(1)①は適格現物出資をすれば課税されない(正確には課税の繰り延べ)、②は対象会社の所在国の税制による、③キャピタルゲイン課税の無い国では、キャピタルゲイン・ロスは認識しないので、キャピタルゲインによる受贈益の問題は生じない、(2)①については特定外国子会社等に該当しないような実体を備えた企業ならタックス・ヘイブン税制は適用されない、②所在国での要件を満たせば優遇税率が適用される。③は、統括会社所在国と孫会社所在国間で租税条約が締結されているかによるということです。では、上記(1)③を除いて簡単に見て行きましょう。(長くなりますので、(1)②までで、(2)①からは次回にします。)<o:p></o:p>

 

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 (1)①:既存子会社・合弁会社の株式を、統括会社に移転するときに、時価譲渡をすると譲渡益が発生して課税されますが、株式そのものを出資財産として適格現物出資をすれば、簿価⇒簿価にて譲渡され、課税の繰り延べが可能となりますね。要件は、日本企業が25%以上保有している会社の株式を、100%子会社である地域統括会社に譲渡し、現物出資なのでその簿価相当の統括会社株式を統括会社から日本本社へ割当増資をすればよいわけですね。<o:p></o:p>

 

 

 (1)②:対象会社(孫会社)の所在地国で課税されるか要注意ですね。外⇒外で株式譲渡を行っているのに対象会社の所在地国の課税は一見関係なさそうに見えるのですが、あくまでも自国内の企業の株式譲渡によって株主が譲渡益を得たのだから課税権があるのだとするわけですね。株式譲渡の内容を規制当局に対象会社から申告させ、納税義務者たる株式の譲渡者が納税しないときは対象会社に納税義務が課されます。こういった国としては、中国・インド・タイ等があります。また税務申告の際には、中国のように国が認めた評価会社の評価書を要求する場合もあります。一方、譲渡益が発生しないときなら関係なし申告も必要なしと思いがちですが、そこはきちんとチェックの必要があります。上海では申告義務はあるようですが、大連では無いようです。中国は、地域によって運用が違いますからね。では、対象会社の株式の譲渡では譲渡益課税が発生するので、対象会社の株式を持っている(中間)持株会社の株式を譲渡する場合はどうでしょうか。インドでは、Vodafone事件で最高裁はその場合は譲渡益の対象とはならないと判断(高裁レベルでは対象と判断)されましたが、その後2012 Finance Billで、過去50年に遡って間接持分譲渡の場合でも課税されるという、不遡及の原則等どうでもよいという法律を制定している国もありますね。

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