まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

地域統括会社に関する6つの課税問題その2

2014-01-11 15:58:28 | 企業投資

 前回の続き(2)①からです。

 

 (2) ①:香港の法人税率は16.5%ですね。またシンガポールは17%ですね。即ち20%以下です。ですから特定外国子会社等(法人所得税が無い又はあっても税率が20%以下の国に所在する外国子会社)に該当し、タックス・ヘイブン税制が適用され、その子会社の留保所得を株主である日本の親会社等の所得と合算して課税される恐れがあります。しかし、一定の要件を満たす統括会社なら、タックス・ヘイブン税制は適用されません。それは、日本の会社が株式・持分の100%を直接・間接に保有する子会社(統括会社)であり、孫会社(被統括会社)が2社以上で、「統括業務」を行っていることが条件です。

 

 

では、統括業務の定義は何でしょうか?租税特別措置法66条の6③では、「統括業務とは」、「株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等のうち、当該特定外国子会社等が他の外国法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じてその収益性の向上に資する業務として政令で定めるもの」(税法の規定ですが、租税が安くなれば収益性が向上することもいえますね)であり「統括業務を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有し、かつ、その事業の管理、支配及び運営を自ら行つているものである場合で政令で定めるものとしています。これを受けて、施行例39条の17①では、「統括会社と被統括会社との間における契約に基づき行う業務のうち当該被統括会社の事業の方針の決定又は調整に係るものであつて、当該特定外国子会社等が2以上の被統括会社に係る当該業務を一括して行うことによりこれらの被統括会社の収益性の向上に資することとなると認められるもの」であり、「その本店所在地国に統括業務に係る事務所、店舗、工場その他の固定施設及び当該統括業務を行うに必要と認められる当該統括業務に従事する者専ら当該統括業務に従事する者に限り、当該特定外国子会社等の役員を除く。)を有していること」としています。<o:p></o:p>

 

⇒税法の規定は複雑?と言いますか、曖昧いい加減といいましょうか?法律と政令(施行令)が同種用語の言葉言換え・重複したり、循環参照的の言い方をしております。会社法など他の法律でもこういう言い方は良く見かけます。政令でより具体的に記載しようとしても、うまく書けないので、結局法律と同じような言葉を並べて、思い浮かんだ少し別の言葉を追加して誤魔化しているのではないでしょうか。これは、将来法律制定当時想定外のことが出てきたら政令で網をかけようとするずるい立案担当者の考えかもしれません。また、事業をやったことの無い人が政令を書いていますから、法律よりも具体的に何を書けばよいのか想定できないのでしょう。上の例で言えば、法律と政令の違いは、結局統括業務を行っている従事者がいる事ぐらいですかね。また、契約に基づきというのもおかしいですね。統括会社は持株会社ですので、株主権の行使が基本ですね。定款に株主の承認事項とすれば、これもここに言う「契約」に入るのでしょうか?また、適格現物出資は25%以上ですから、49%保有でもOKです。残り51%は合弁パートナーが保有して、結局事業の方針や決定は、相手方パードナーに握られている場合はどうなるのでしょうか。日本企業の合弁は、49%までお金は出さされて、相手にうまくやられている場合もありますからね。<o:p></o:p>

 

 

 (2)②:シンガポールでは地域統括会社を保有して事業展開すれば、税率を15%にするという優遇措置があります。勿論、それには要件があり、これを満たす必要があります。その実質的な要件は以下ですが、詳細はEDB(Singapore Economic Development Board)webに掲載されていますので、それを参照してください。但し、シンガポールでの税率優遇期間は3年(+2年延長可能)なので短いですね。やはり、シンガポールはけちですね。タイの法人税率は通常23%です(タックス・ヘイブン税制は考えなくてもよい税率)。しかし、タイに地域統括会社を設置すれば、タイ国外の関連会社からのサービス収入には、最大15年間免税であり、タイ国内の関連会社からの統括会社サービス収入には最大15年間税率10%が適用されますので、裾野の広い自動車関連産業の会社ではタイに地域統括会社をおいているところもあるようです。<o:p></o:p>

 The applicant should have a substantial level of headquarters activities in Singapore that may include: <o:p></o:p>

     ? Strategic Business Planning and Development <o:p></o:p>

     ? General Management and Administration <o:p></o:p>

     ? Marketing Control, Planning and Brand Management <o:p></o:p>

     ? Intellectual Property Management <o:p></o:p>

     ? Corporate Training and Personnel Management <o:p></o:p>

     ? Research, Development and Test Bedding of New Concepts <o:p></o:p>

     ? Shared Services <o:p></o:p>

     ? Economic or Investment Research and Analysis <o:p></o:p>

     ? Technical Support Services <o:p></o:p>

     ? Sourcing, Procurement and Distribution <o:p></o:p>

     ? Corporate Finance Advisory Services <o:p></o:p>

 

⇒日本の政令を作ったおっさんよりも、きちんと記載しています。具体的ですね。日本もこれぐらい記載して、例えば、これらの項目のうち3つ以上を満たせば、「統括業務」を行っているとしても良いかもしれません。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 (2)③:統括会社所在国と孫会社所在国間に租税条約が締結されているかも注意が必要ですね。特にシンガポールの統括会社に、その保有する複数の子会社(日本から見ると孫会社)の資金繰りを調整する機能を持たす場合等は検討に値します。例えば日本円⇔US$は、円高=ドル安、ドル高=円安となります、同じ方向には動きませんので、孫会社に、例えばUS$と日本円というdual currency の親子ローンを提供すれば、その為替リスクを相殺することも可能ですし、またシンガポールなら資金のやり取りも、ネッテイングで行えるはずです。即ち、銀行にへの計な手数料支払いが減ると思います。だいぶ話がそれましたが、シンガポールと租税条約を締結している国に被統括会社があれば、ローン金利の源泉徴収税を安く出来ます。シンガポールは、日本よりも多く租税条約を76カ国と締結しているそうです。ここでの注意点は、シンガポールはキャピタルゲインと一定の受取配当は非課税ですが、利子は課税されます。一方、香港は、キャピタルゲイン、受取配当、受取利子も非課税です。

 

 

自社の事業の特性、孫会社の分布状況等も考えて税務戦略を練らないといけません。インド等は、タックス・ヘブンのモーリシャス共和国に中間持株会社を作っている投資している欧米企業が結構あります。昔は、租税条約で利子・配当課税が無かったからですね。しかし、税法はころころ変わります。特に新興国の場合はひどいですね。それと税務の執行の段階でも大きく違います。お互いの知恵(悪知恵?)比べでしょうか?

Dsc_0017_2

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする