まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株主の資格と株式の譲渡制限

2007-12-10 00:11:50 | 商事法務

       株主の資格を特定の者(例えば会社の従業員)に制限することは許されないとされています。しかし株式に譲渡制限をしてしまえば、実質的に株主の資格を制限できますね。発行済株式の全てを譲渡制限にして、譲渡には会社(株主総会、取締役会、代表取締役等)の承認を要するとする場合ですね。あるいは、取締役会等の承認を要する場合を制限して、例えば現在の株主以外の者、会社の従業員以外の者、または外国人に株式を譲渡する場合には取締役会等の承認を要すると定款に定めることもできますね。

       勿論、法令で株主の資格を制限する場合は許されます。株主を制限する方法、あるいは株式の譲渡を制限する方法は、①株主の資格を直接制限する場合、②一般的な方法として譲渡自体に承認を要する場合、③譲渡は自由だが、株主名簿への記載を制限・拒否できる場合の3通りでしょうか。

       その他特殊の方法として、取得条項付株式として、一定の譲渡(例えば外国人に譲渡)する場合には会社が取得条項を発動できるとする方法もありますね。

・ 国際石油開発帝石HDでは、政府(経済産業大臣)が甲種類株式たる黄金株を保有していますが、「当会社は、甲種類株式が公的主体(=国又は国が全額出資する独立行政法人)以外の者に譲渡された場合、取締役会の決議により、当該譲受人の意思にかかわらず、金銭の交付と引き換えに甲種類株式を取得することができる。なお、甲種類株主は、甲種類株式を譲渡する場合には、当会社に対して、その旨および相手方の名称を、事前に通知しなければならない。(当社定款22)」としています。

○ 具体例をいくつか挙げてみましょう。

(1)    建築基準法では、指定確認検査機関の公正中立要件の確保の為に、制限業種(建設・不動産・建築材料・工事管理業の製造・供給・流通業者)に該当する株主の有する議決権の比率は1/3以下に制限しています。

(2)    金融商品取引法では、金融商品取引業の内閣総理大臣への登録の際に株主についても申請書に記載させ欠格事由があれば、登録拒否する旨の規定がありますね。即ち法29-4では、20%(一定の場合は15%)以上の議決権を有する主要株主に欠格事由があれば、登録が出来ない即ち当該事業が出来ないという規制をしていますね。

(3)  「日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律」では、1条で株式の譲渡制限等の規定があります。即ち、「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社にあつては、定款をもつて、株式の譲受人を、その株式会社の事業に関係のある者に限ることができる。この場合には、株主が株式会社の事業に関係のない者であることとなつたときは、その株式を株式会社の事業に関係のある者に譲渡しなければならない旨をあわせて定めることができる。」としています。

(4)  放送法52条の8にも規定があります。これを受け、例えば、(株)東京放送(TBS)の定款9条では、外国人等の株主名簿への記載又は記録の制限としています即ち、株式の取得を直接制限していません。株主となってもよいが、株主名簿への記載を制限できる。即ち、会社側から株主として扱わないことができるとしています。これは放送法の規定に従っているわけですね。ユニークな方法ですね。株主となっても意味を成しませんね。上場株ですから譲渡は制限できない。自由に売買して下さい。でも株主名簿への登録は認めません。これでは取得する意味がありませんね。配当も貰えません。実に変な規定の仕方です。

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