まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

委員会設置会社の規定について

2012-05-14 20:48:27 | 商事法務

 

○ また会社法の「けち」ですね。今回は、委員会設置会社の規定についてです。

委員会設置会社とは、指名委員会、監査委員会及び報酬委員会(以下「委員会」という。)を置く株式会社をいうと定義されています。(212号)。別に、これ以外の委員会を設置できないとは規定されていないので、定款に記載するなりして、あるいは定款で記載すると柔軟性が欠けるから取締役会で決議する社内規則で設置してもいいですね。例えば、4164項では、業務執行の決定を執行役に委任できない事項が規定されています。この規定には3624項(取締役会設置会社の取締役会の専決事項)が含まれていない(内部統制の整備は同条4項に規定されているが、41611号で委員会設置会社の取締役会の職務とされている)。従い、重要な財産の処分、多額の借財(=新株・社債発行等)等も、取締役会が執行役に委任すれば執行役限りで出来ますね。勿論、委任せず複数の取締役でもって組成する「投融資委員会」を設置して、そこに業務執行の決定を委任して、その執行を担当執行役に委任すればいいのですね。<o:p></o:p>

 

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 どうも、多くの会社法の教科書・学問書を見ると、経営の監督機能と業務執行機能とを分離した会社として、監督機能は委員会が行い、執行機能は執行役が行うような解説がされていますが、全く誤解を招く解説です。執行役に委任しなければ取締役会が業務執行の決定を行うのです。即ち、41611号には、「次に掲げる事項その他委員会設置会社の業務執行の決定 イ 経営の基本方針」と規定されていますので、監督機能もさることながら、重要なことはやはり取締役会がその委員会設置会社の経営を行っているということですね。<o:p></o:p>

 

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 委員会設置会社は、3委員会の設置が義務化されています。従い、社外取締役を2名選任して、これに取締役1名を加えて、3委員会の委員を兼任することも可能です。勿論監査委員の資格は強化されていますのでその要件を満たす必要はありますけれども、指名&報酬&監査委員会というものできますね。会社で重要な事は経営であり事業であり、その中心は取締役会です。これを適正に行うため、あるいは不明瞭なことが起こりかねない事項について監査監督するチェック機関がこの3委員会という位置づけであるということです。スピードという重要な競争力を持って基本的事項以外の経営は執行役に任せようとするのが委員会設置会社の趣旨ですが、あたかも執行役は、意思決定をしない単なる執行機関であるかのようなことを言っている本もありますが、全くの間違いです。権限規定内の基本線に沿ったマイナーな経営の意思決定は当然執行役、金額によってはその傘下の部長クラスが行います。418条(受任された業務の執行の決定と会社業務の執行)の規定のこともきちんと記載しないと誤解を招きます。<o:p></o:p>

 

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 この委員会設置会社は、米国のまねをしたものですが、米国の会社法には、3委員会等の規定はありません。取締役会は委員会を設置することができるとしか規定していないので、その会社の状況に応じたいろんな委員会を設置することができます。

模範事業会社法§ 8.25. COMMITTEESでは以下の様に規定しています。

(a) Unless this Act, the articles of incorporation or the bylaws provide otherwise, a board of directors may create one or more committees and appoint one or more members of the board of directors to serve on any such committee.

(d) To the extent specified by the board of directors or in the articles of incorporation or bylaws, each committee may exercise the powers of the board of directors under section 8.01.<o:p></o:p>

 

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 具体例として、GEGMはどんな委員会を設置しているのでしょうか。

GE=General Electric 10-K annual report Definitive Proxy Statementに記載

Audit Committee, Management Development and Compensation Committee. Nominating and Corporate Governance Committee.<o:p></o:p>

 

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GM=General Motors Company

Audit, Directors and Corporate Governance, Executive Compensation, Finance and Risk, and Public Policy.<o:p></o:p>

 

これは、New York 証券取引所の上場会社マニュアル(303A)等で、取締役会の過半数は独立取締役(同マニュアルに定める独立性の要件を満たす)とする。監査委員会は、3名以上の独立取締役だけで構成、独立取締役のみからなる指名(推薦)委員会・コーポレートガバナンス委員会を設置すること、報酬委員会も独立取締役のみで構成すること等が規定されているからなので、別に会社法で決まっているわけではありません。<o:p></o:p>

 

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 上記等を踏まえて、委員会設置会社に以下の3点について「けち」をつけましょう。

(1) 日本の会社法は3委員会という決めうちで硬直的な定め方をしています。また、一方では日本の委員会設置会社では、取締役が執行役と兼任(監査委員は勿論兼任不可)しているケースが多くあります。監督と執行を分離した制度にも拘わらず骨抜きになっているのですね。私は、会社法上は、監査委員会のみを必須にして、その他の委員会は、各社の取締役会が設置できるとすれば良いと思います。<o:p></o:p>

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(2)報酬委員会は、事業報告書で報酬内容の決定方針を記載すれば良いことになっています(有価証券報告書で一部開示が義務づけられましたが)。つまり、委員会設置会社以外では、役員報酬について定款の定めあるいは総会決議が必要とされています(361)がこの規定も骨抜きにして、委員会設置会社では「決定方針」を作文して事業報告書に記載すればいいのですね。これでは社外取締役も巻き込んで、お手盛り報酬もできる制度だと思います。公表・公開によって襟を正すということを隠す制度になっています。<o:p></o:p>

 

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(3) また、406条では、監査委員は、取締役・執行役の法令定款違反・著しく不当な事実を認めたときは、取締役会に報告することになっています。監査役の規定と同じ規定です。監査役は、妥当性監査はできない(善管注意義務で実質あまり変わらないとしても)見解もあります。しかし、監査委員は取締役なのですね。当然妥当性監査ができます。この辺の議論・見解が整理されていないですね。「著しく不当な事実」などという言葉を使わずに、妥当性監査もできる規定にして欲しいと思います。

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コメント
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